表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
みらいひめ  作者: 日野
四章/大伴篇 琴詩酒伴皆拋我、雪月花時最憶君
493/713

二十三.神の助けあらば(24)

「深雪の件とは別で、金ヶ崎を捜している。見なかったか?」

「見てない。坂元ちゃんは?」


 坂元は「誰それ?」と訊く。そう言えば、お前は転んで怪我したらしいけど大丈夫なのか? ミヨが言ってたぞ。坂元は眼鏡を押さえてニヤリとする。


「もちろん。転ぶことくらい想定済みですから」

 そんな馬鹿な。膝には白い正方形の絆創膏が貼ってあった。想定済みなら転ぶなよ。


「んで、金ヶ崎さんとは? 相田くんと関わりがあるくらいだから美人なんでしょう?」

 どういう意味だろうね。阿部はクスクス笑うが、相園は素知らぬ顔だ。


「金ヶ崎は肩まで伸ばした金髪がトレードマークの一年生女子だ。特別体は大きくないが、脚が長くて、坂元と違って骨が太くて体幹がしっかりしている。今日はメイクはしてないな」


 坂元は「オゥ」と言って熟考した。心当たりがあるのか?


「救護テントにいるとき、その子を見たよ。本部の方面から来て、救護テントの裏を通って、退場門の方に通り過ぎて行った。金髪だから美月ちゃんかと思ったら、違う女の子だったの。金髪の女子って少ないから、たぶんそうなんじゃないかな」


「それって昼前だろ? 今さっきじゃないよな」

「そう。それからは見てない」

 じゃあ意味ないな。もしかしてこっちに来てないのだろうか。じゃあどこに逃げたのだ。


「ねえアイくん。私が見る限り、金ヶ崎さんは来てないよ。私は後方警戒してたからなおのこと見逃したとは思えない」


「へえ。俺の思い過ごしじゃなければ、あっちなのかな……」

 本部の裏を通ってないとしたら、逃げ道は多くない。ありがとう、二人とも。


「ところで相田くん。皆が何のうどんを食べたいか、わかった?」


 うどん……何だっけそれ。


「まあ皆の好みは訊けばわかるからね。もうわかったでしょう。でもさ、一番大事なのは自分が何を食べたいか、だよね。それが結局最後までわからないのかもしれないな」


 坂元、俺は暑くて頭を回すのに苦労するんだ。哲学の話は今やめてくれないか。俺はきちんと色んなことを考えているから。今は、この件に集中させて欲しいな。


「アイくん、うどん好きなの?」

 相園はぽかんとしていた。



「なあ、阿部。改めて訊くけど、どこだと思う?」

「うーん。茂みですか?」

 だから茂みって何だ。


「観客席の下はどうだろう」


 俺たちは二階建てになっている観客席の建物に入った。人の往来がなく、空気がひんやりしている。ロッカーやアナウンス室などを横目に、トイレなどがある通路を抜けて競技場の裏に出ると、生垣や木々で陰ができている。建物の壁には黄ばんだ自動販売機が。喉乾いたな。汗を拭う。


「じゃあ私、強炭酸ソーダで」

「なんで俺がおごるんだよ。じゃあ俺はスポドリ」

 ……お金持って来てないんだけど。


 喉が渇くから見なきゃ良かったと思っていると、すっと立ち上がった人影が自販機に小銭を入れた。機械の向こう側のベンチに座っていたらしい。金ヶ崎だった。ビンゴだ。本部の方面に逃げたから、この辺りにいると思ったのだ。


「えっと、先輩とそこの女の子は、これでいい?」

 俺たちが所望した飲み物を買ってくれるらしい。俺と阿部はお礼を言って受け取る。で、早速いただく。喉を貫く爽やかな冷たさ。何物にも代えがたいね。


「すまんな、おごってもらって」

「いいの。あとで拓海にツケておくから」

 ノエルのお金か。じゃあ何の罪悪感も抱かずに飲めるな。


「少し話したいんだが、いいか? 本当に少しだ。時間も無い」

「いいよ。ここなら拓海も来ないからね」

 意外にもあっさりと金ヶ崎は受け入れてくれた。こっちは静かでいいな。グラウンドの騒がしさと熱気がものすごく遠くに感じる。俺たちはベンチに並んで腰かけた。阿部はどことなく不安そうに、俺越しに金ヶ崎を眺めている。


「拓海呼びっていいね。金ヶ崎さんだっけ? あなただけだよ」

「は、はあ? ウチは昔からそう呼んでんの。ほっといて」


「あ、私は阿部夕子。ノエルくんの元クラスメイトで、友達」

「どうせ好きなんでしょ。あいつ、見た目だけですぐモテる」


 金ヶ崎は溜息を吐く。阿部は「違うよ」と否定する。


「私は、腹黒いノエルくんも好きだよ。金ヶ崎さんだって色んなノエルくんが好きでしょ?」

 金ヶ崎は目を丸くして、黙った。かける言葉も無いといった具合に。


「あー、いいか? なんていうか、いきなりノエルの話題だとシビアだから、深雪の件から話したい。深雪が泥を投げられたことは知っているか?」


「何それ」と金ヶ崎は訊き返す。知らないみたいだな。簡単に事件の概要を話した。阿部にも詳しく説明してなかったな。

先日、北海道に初めて行ってきました。札幌と小樽です。


北海道に行ったことないのに、シュータたちの修学旅行で北海道を書いていた。


ウニは苦手だったんですが、朝市で食べた海鮮丼でウニの美味しさを教えられました。

美月の気持ちがやっと理解できました……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ