表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
みらいひめ  作者: 日野
序章/竹取・石作篇 らいと版
49/738

三.白山にあへば光の失する(5) らいと

「伊部くんだっけ? よろしく。私は蘭美代よ。あなた、大学サークルの副々会長くらい、後輩でも話しやすい気さくなキャラっぽいわね。出会えて光栄だわ」


 お前は大学のサークルの何たるかを知らないだろう。あと副々って何だ。


『ああ、みよりんか。ルナに負けるとも劣らない可愛らしいルックスじゃないか』

「あら、見る目があるのね」

 ミヨがなぜか俺に笑みを送って来る。お前はよくそんなお世辞で満足できるな。初対面のときはもっと相手をよく見た方がいい。伊部が付け加える。


「言動からして、もっとイタい子かと思ってた。黙っていたらきっとモテるぜ」

「ちょ、イベくん!」と美月のお叱り。ミヨは怒りのあまり声も出ないといった雰囲気だった。あんな安っぽいヨイショを真に受けるからそうなる。


『で、そっちの素直そうな少年がノエルくんか』

「そうっす。綾部です。種々の未来事情を知りたいです」

『後でたくさん教えてあげよう。いい少年だ』

 伊部は笑顔で応答する。ノエルと美月はどこに行っても好印象を勝ち取るな。


『じゃ、そこの特にこれといった特徴も無い男がシュータか?』

 なんてヤローだ! そんなに俺は無味乾燥な容姿をしているのか。ざけんな。ミヨ、一緒にぶっ殺そう。初対面でそう思わせるなんて、絶対コイツ友達いねーぞ。


『アハハ、冗談だろ? ゴメンゴメン』と伊部がなだめてくる。

「いいえ、絶対に許さないわ。この時代ならね、そんな発言したら一発ハラキリよ!」

 そうだそうだ。もっと言ってやれ。俺たちを怒らせたのを美月も悟っているので、


「すみません、皆さん。こういう人なんです。仲良くなってくださいとは言えないので、どうか一触即発の事態は賢明にも避けていただくしかなく……」

 まあ、美月に免じて許す。正直気は進まないのだが、用事があるなら聞こう。


『用事ってのは特に無いんだけどな。ただ、俺たちのせいで超常的な事件に巻き込んじまってるのは詫びよう。君たちの能力も仕方ないものと諦めて欲しい。こっちの責任だ』


 謝られたとて、だな。美月も深刻そうな顔で頷く。


『ルナが元の時代に『戻る』まで待って欲しい』

 元の時代に戻る。そりゃいつかは帰るのだろう。


「先輩が帰っちゃうのって、いつなんすか?」とノエルが核心を突く。聞きたくないな。

『二年後、そこのみよりんやシュータが卒業するのと同じ年だ』

 二年、か。高校生を疑似体験しに来たにしては半端な期間だな。


『それまで、ルナと一緒に何とかその時間軸の維持に努めてもらいたい。俺もできる限りのバックアップはするからさ』

 ミヨは口をへの字に曲げながらも首を縦に振って承諾していた。ノエルは言わずもがな。


『おい、シュータ。聞いてるか? ルナのこと任せたぞ』

 伊部はそう言って笑った。何が任せただよ。元よりお前に任せるか否かの権利はねえ。って、美月を任せられたのはどうして俺だけなんだよ。家を貸してるミヨにも言え。


 そのあと、未来のことをノエルやミヨが矢継ぎ早に尋ねて時間を過ごした。俺は理解できない理論がたまに出る話に頭痛を催していた。そんなときは美月を見て癒しを得た。美月は目が合うと微笑んだり照れたりする。可愛い。


 学友との歓談。未来人との交信。何とも形容できないが、日常であって非日常であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ