十四.かぎりなき思ひに焼けぬ皮衣(10)
「アイ、お前何してる⁉」
うるさい声が聞こえたと思ったら冨田がいた。やっぱりウェイトレス服だ。
「どうしたんだ? 元気になったのか?」
「うん」
「そりゃそうだよな! こんな可愛い女の子連れてさ!」
冨田はルリを指差した。ルリはニコニコ澄ましている。
「この学校の生徒じゃないよな。俺のデータベースにこんな子の情報は無い」
冨田は星陽高校どころか、近隣高校の可愛い女子は全てチェック済みでもおかしくない。俺はルリに目配せした。上手くやれ。
「そうですよー。ルリはシュータくんのいとこです」
いとこの設定できたか。ちょうどいい関係性だ。
「マジか。こんなに可愛い親戚がいたとは。ぜひ俺に紹介してくれ」
冨田は俺に頭を下げた。
「やめといた方がいいぜ。ルリは」
アダルトな意味で。
「ルリさん、ぜひ俺と付き合ってください」
冨田はルリに手を差し伸べる。告白までが早いんだよ。せめて三日おけ。
「ゴメンナサイ。ルリはシュータくん一筋なので」
ルリはウインクして謝った。アホ同士、付き合っちまえばいいのに。
「くそ。憧れのお兄さん一筋ってやつか。尊い」
冨田はフラれていた。何連敗?
「人生でいうと、三十七連敗だ」
フラれ慣れてるだろ。そこまでくるとさ。
「おう。今日も赤松先輩にフラれた。これから受験だから付き合えないって」
お前、赤松先輩にも告ったのか。あのお店に行って? ズルいぞ。
「と言うことは、受験が終わったら先輩の気も変わるかもしれない! 卒業式の日にもう一度リベンジしてやる」
やめとけ。傷口を広げて塩を塗るだけだ。
「あ、冨田。美月はどうしてる?」
さっきまで美月と一緒に仕事していたんだろ。
「竹本ちゃんは、坂元ちゃんに連れられてパソコン室に行ったぞ」
坂元なら安心だ。超能力が判明している坂元や石島は、今回の事件の容疑者ではない。
「ちょっと寄ってみようかな」
「竹本ちゃんの所に? いいんじゃないか」
「お前はどこに行くんだよ」
「俺はアイちゃんの所だ。アイちゃんの心の謎を解き明かしてやるぜ」
冨田は愉快そうに言った。俺は不愉快だ。
「いーだろ。相園深雪は、俺が最初に目を付けた女なんだ。アイにはもう既に竹本ちゃんやみよりんがいるじゃんよ」
「相園はクラスの仕事入ってないってよ」
「わかってるって。今はアイちゃんや私服の可愛い女子を探して歩いてんだ。じゃねバーイ」
冨田は食堂を飛び出して行った。まさか友人が可愛い女子を探し回ってる変態と化しているだなんて複雑な心境だ。ところでルリは静かだったが、あの男子は気に入らなかったか?
「ルリは積極的にくる男は苦手です。気乗りしてない男の子を屈服させるのが趣味ですから」
嘘吐け。ルリはすっかり食べ終わってしまったので、移動しようと提案した。もう11時50分。美月の所に顔を出すのもいいし、昼食を食べるのもいい。場所を変えよう。ルリと共に食堂を出たときだった。
「ちょっと、ルリさん」
いきなり横から声が聞こえたと思ったら、制服のノエルがいた。
「勝手にシュータ先輩を連れ出さないでください。捜したんですよ」
「あー、ごめーん。ノエルくん嫉妬しちゃった? 私がシュータくん独り占めしてるから」
ノエルは溜息を吐いた。今の時間はノエルが見張り担当の時間だったな。忘れていた。
「先輩も、俺のこと放っておかないで現在地について報告ください」
ごめん。ホウレンソウは大事。
「で、何して遊んでたんすか?」
「遊んでねえよ。一応、犯人を当てるために頑張ってた」
ノエルはなるほどそうですかとニコッと笑った。信じてないな。
「どこか落ち着いて話せる所で話しましょうか」
じゃあ昼メシがてら、どこか食事ができるクラスに行こうか。
「ノエルくん、だいしゅき」
今日初めてノエルときちんと話せたルリは嬉しそうだった。ノエルに抱き付く。なんだかんだ、この変態はノエルが好きなようだ。
「おい、ルリさん? 離れてください」
「ああ~ん。ノエルくんにわからせられちゃう♪」
さてと、いい店あるかな。
「先輩助けてくださいって。俺モテ期かもしれませんよ」
GA文庫大賞の方に第1章を応募しようと思います!
受賞はともかくとして、選評シートを読みたい!
選評シートが来たら、共有します
※第一次選考発表は2月15日




