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みらいひめ  作者: 日野
三章/阿部篇 Who done it?
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十四.かぎりなき思ひに焼けぬ皮衣(5)

「な——」


 俺は時間を『遡った』先で、数秒後には首を絞められたような感覚に陥った。その場にうずくまる。


「シュータさん!」


 今度は美月やノエルも集まった後だったから、すぐに助けてくれる。俺からネクタイを取って襟を開けると、にわかに苦しさは無くなった。


「く……」


 苦しかった時間は先ほどより短いはずなのに頭の重だるさ、気分の悪さは増加していた。


「シュータ、辛いの?」


「さっきより。もしかしたら苦痛が蓄積してるのかもしれない」

 俺は波のように押し寄せる頭痛を堪えながら言った。


「蓄積するなんてあり得ないです。だって体の不調はリセットされるようになっていますから」


 美月はそう言う。実際そうなんだろう。石島の事件を解決した後、時間を「遡った」が俺たちの傷は全て元通りになって消えていた。


「じゃあ何かしら精神性のものなのかなー?」

 ルリも不思議そうに顎に手を当てて考えている。


「あの、皆さん。これ」

 ノエルの声がして、皆で振り向く。そこにはネクタイを持ったノエルが立っている。


「シュータ先輩は、このネクタイを外すと楽になったようでした。このネクタイ、きな臭くないですか?」


 新品だから匂いは付いてないけどな。でも、そのネクタイは最近失踪したわけだし怪しいかもしれない。


「えー? ネクタイに付いた美月の執着深い恋愛感情にシュータくんが辟易したってオチじゃないの?」

 ルリが茶化す。


「違います! 断じて!」

 美月も元気が戻ったようで何より。で、どうするよ。


「今度はずっと前に『遡って』、シュータが登校した頃の時間にしましょう」


 そうだな。正門を通過したのが8時20分頃だろう。


「何の変哲も無いただのネクタイですけどね」

 ノエルはいつの間にか俺のネクタイを首に一周巻いていた。大丈夫なのか?


「俺は何ともならないっす。シュータ先輩だと……」


 ノエルはネクタイを差し出す。俺が手に取ると——


「何も起きないけどな」

 今は特に何かが発生することも無かった。


「では、『遡り』ましょう。またすぐ再会ということで」


 ——瞬き。



 移動先は正門前だった。早速苦しさを覚えたが、ネクタイを外すとそれも収まった。やはりこれが原因らしい。早く皆に報告をしないと。が、俺は貧血のときのような気持ち悪さを感じて、正門を越えると、すぐ傍の石の上に座り込んだ。これ以上歩けないくらい気分が悪い。


「先輩、大丈夫ですか?」

 ノエルがいつの間にか近くに来ていた。よう、ちょっと休ませてくれ。


「もしかして先ほどの疲労が溜まっていっていますか?」

「たぶん。本当に動けないかもしれない」


「俺が支えますよ。どうですか? これから保健室で休むのは?」


 そうしようかな。このまま教室に行っても迷惑を掛けるだけだ。


「あ、シュータくん。元気?」


 ルリが声を掛けてくる。お前はしれっと校門をくぐって来るな。部外者だろう。とにかくこれ以上ツッコミを入れる体力も無いから、保健室の厄介になろう。高校入って初めて世話になることになる。

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