十四.かぎりなき思ひに焼けぬ皮衣(5)
「な——」
俺は時間を『遡った』先で、数秒後には首を絞められたような感覚に陥った。その場にうずくまる。
「シュータさん!」
今度は美月やノエルも集まった後だったから、すぐに助けてくれる。俺からネクタイを取って襟を開けると、にわかに苦しさは無くなった。
「く……」
苦しかった時間は先ほどより短いはずなのに頭の重だるさ、気分の悪さは増加していた。
「シュータ、辛いの?」
「さっきより。もしかしたら苦痛が蓄積してるのかもしれない」
俺は波のように押し寄せる頭痛を堪えながら言った。
「蓄積するなんてあり得ないです。だって体の不調はリセットされるようになっていますから」
美月はそう言う。実際そうなんだろう。石島の事件を解決した後、時間を「遡った」が俺たちの傷は全て元通りになって消えていた。
「じゃあ何かしら精神性のものなのかなー?」
ルリも不思議そうに顎に手を当てて考えている。
「あの、皆さん。これ」
ノエルの声がして、皆で振り向く。そこにはネクタイを持ったノエルが立っている。
「シュータ先輩は、このネクタイを外すと楽になったようでした。このネクタイ、きな臭くないですか?」
新品だから匂いは付いてないけどな。でも、そのネクタイは最近失踪したわけだし怪しいかもしれない。
「えー? ネクタイに付いた美月の執着深い恋愛感情にシュータくんが辟易したってオチじゃないの?」
ルリが茶化す。
「違います! 断じて!」
美月も元気が戻ったようで何より。で、どうするよ。
「今度はずっと前に『遡って』、シュータが登校した頃の時間にしましょう」
そうだな。正門を通過したのが8時20分頃だろう。
「何の変哲も無いただのネクタイですけどね」
ノエルはいつの間にか俺のネクタイを首に一周巻いていた。大丈夫なのか?
「俺は何ともならないっす。シュータ先輩だと……」
ノエルはネクタイを差し出す。俺が手に取ると——
「何も起きないけどな」
今は特に何かが発生することも無かった。
「では、『遡り』ましょう。またすぐ再会ということで」
——瞬き。
移動先は正門前だった。早速苦しさを覚えたが、ネクタイを外すとそれも収まった。やはりこれが原因らしい。早く皆に報告をしないと。が、俺は貧血のときのような気持ち悪さを感じて、正門を越えると、すぐ傍の石の上に座り込んだ。これ以上歩けないくらい気分が悪い。
「先輩、大丈夫ですか?」
ノエルがいつの間にか近くに来ていた。よう、ちょっと休ませてくれ。
「もしかして先ほどの疲労が溜まっていっていますか?」
「たぶん。本当に動けないかもしれない」
「俺が支えますよ。どうですか? これから保健室で休むのは?」
そうしようかな。このまま教室に行っても迷惑を掛けるだけだ。
「あ、シュータくん。元気?」
ルリが声を掛けてくる。お前はしれっと校門をくぐって来るな。部外者だろう。とにかくこれ以上ツッコミを入れる体力も無いから、保健室の厄介になろう。高校入って初めて世話になることになる。




