表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
みらいひめ  作者: 日野
三章/阿部篇 Who done it?
212/738

十三.宝と見え、麗しきこと並ぶべきものなし(15)

「いらっしゃいませ」


 美月が客をご案内する。俺と冨田は料理や皿を運ぶ係。片瀬、福岡は調理。忙しいので、ボランティアで他のクラスメイトも手伝ってくれるが、結構大変だった。


 俺が布巾を持って空いたテーブルを清掃していると、接客している美月の様子が見える。美月は席を案内した客からオーダーを取っている。すると、オーダー用のメモ用紙を切らしてしまったことを見つけた。俺は予備のメモ用紙を持っているので、美月の傍に駆け寄る。


「あの、美月。これ」


「…………」


 シカトされた。


「なあ、美月——」


「お次のお客様どうぞー」


「美月?」


「私がご案内いたします。四番テーブル入りまーす」


 美月は俺を見事に無視して客を案内した。え、マジで無視されてる?


「お前、竹本ちゃんに何したんだよ。あんなに怒ってる竹本ちゃんは初めて見た」


 冨田は唖然としている。俺もだよ。美月は喧嘩すると、冷戦になるタイプか。これは辛い。案内して、自ら予備のメモを取り出した美月は注文を取った。なんだ、自分で用紙を持っていたから無視したのか。そうだよな。美月は手が空いたらしく、飲み物の準備を手伝い始めたので、俺は近付く。


「美月。さっきはゴメン」

「あ、コーヒーのオーダー入りましたね」


 美月は隣で飲み物を紙コップに注いでいる女子に話し掛けた。


「美月、忙しいところ悪いんだけど——」

「紅茶よりコーヒーが人気みたいですね」


「俺、悪いと思ってる。これから直すから——」


「……あの、うるさいです」


 美月にキッパリと言われた。ショックだった。ついに嫌われた。


「ゴメン、でも」

「でも?」


 あ、癖でつい言ってしまう。俺は下の方を向いた。ネクタイの無いシャツが見えた。


「そんなに許して欲しいなら許しますよ」

 そう言って笑顔を作った。美月、やっぱり女神だ。


「はい、私もすみませんでした。じゃあ仕事してください」


 かつてないほど冷たくされた。もはや「好き」から「嫌い」を通り越して「無関心」に落ちてしまったらしい。


「このコーヒーとコーラを二番テーブルに持って行ってください」


「あの、この後一緒に昼食を食べない?」

「食べません。仕事してください?」


「まだ怒ってるよね」


「まったく怒ってません。仕事しないなら邪魔ですよ?」


 これは当分ダメだ。何言っても無駄だ。隣の女子は唖然としている。


「しばらくシュータさんのことを目に入れたくないのですけど」

 小声だけどハッキリそう告げられた。


「はあ、わかったよ。じゃあな」


 俺は店を出た。あとは皆で何とかやってくれ。邪魔者の俺がいなくても平気だろ。俺は非常に落ち込んだまま、校内を歩いた。行きたい所なんか無い。


「うわっ!」


 俺は急に何かとぶつかって尻もちをついた。何だ、何が起きた?


「すみませーん! 急いでて。お怪我無いですか?」


 階段付近でぶつかったのは、見知らぬ女子生徒だった。ふわふわしたロングヘアでオドオドしている。だが、俺は彼女の姿が全く見えていなかった。彼女が階段を下って来て、下に行こうとターンしていたようだが、ちっとも気付かなかった。美月のことがあまりにショックで、周囲のことが目に入らなかったのだろう。


「いや、俺も見てなかったから。すみません」

「いえ、いえ。私が悪いんです! よく人とぶつかるから」


 女子生徒は、俺とぶつかった際に散らばった物を回収していた。段ボールに入っていたのはドレス? 俺も手伝う。


「ありがとうございます。おっちょこちょいの私が悪いのに」


「構わないよ。ドレスなんか何に使うんだ?」

 その臆病そうな女子は笑顔で答えた。


「劇です。今日は特別棟の五階で演劇部が劇をやるので、ぜひ観に来てくださいね」

 そう言えば、佐奈子の演劇部は午後からやるって言ってたな。行ってみよう。


「ありがとうございましたっ!」


 いいから落ち着いて行けよ。駆け下りて行ったその女子生徒を見送って、俺も下に行こうかなと考えた。校庭の店で昼食を買おう。と、ポケットに手を入れた俺が踊り場に来たとき、


「あっ。アイくん」

 こんなときに相園と会うなんて。俺は踊り場の壁に背中を預ける。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ