十三.宝と見え、麗しきこと並ぶべきものなし(10)
「なーに困っちゃってるんですかぁ? 本当にシュータくんって一人じゃ何にもできないんですねー。ざあーこ、ざーこ」
何だと、誰だこの野郎⁉ 俺が顔を上げると——
「どーも、こんにゃくちわ。最強美少女ルリちゃんです☆」
星陽高校の制服を着たツインテールの女子、ルリがいた。制服は胸元を開け、スカートを折って短くしている(真っ白な素肌が丸見えだ)。手には、玉コンニャクが入ったカップを持っている。
「またルリかよ!」
「へ? ルリって最近もシュータくんの所に来たっけ? 五月以来だから待ち焦がれていたのかな?」
嘘吐け。アリスの事件のときは確かに五月だったが、ミヨと入れ替わった先週も来ただろ。どうしてしらばっくれてんだ。
「と言うか、どうして侵入できたんです?」
ノエルが顔を引きつらせて尋ねる。
「キャー、久し振りノエルくん。超好みのフェイスですう。絶対結婚しようね。あ、この学校のセキュリティ甘々のあまちゃんなので、ルリは簡単に侵入できちゃいました。制服着てたからね」
星陽高校の警備員に給料を返せと言いたい。
「お前は星陽に何しに来たんだ」
どうせロクなことではあるまい。ルリは爪楊枝で玉こんにゃくを二個刺した。
「シュータくんたちがお祭りやるって言うから、ルリも遊びに来たんだー。満喫中」
ルリは二つの玉コンニャクを艶めかしいピンクのリップが塗られた唇の間に入れ、ペロペロ舐めた。
「お、お前、馬鹿やめろ! こんな公共の場で変なことするな!」
ルリと一緒だとツッコミが大変なんだぞ。ノエルもドン引きしないで手伝え。
「ごめーん。現代では、玉々を咥え込んで出し入れしちゃ駄目だった?」
本当にくだらないサイテー女だ。
「お前の目的は何だ。また美月を妨害しようって魂胆か」
「違います。ルリはたまの休日を楽しみに来ただけだもん。今回は安心してネ」
安心できるか。だけど、ルリが嘘を吐いたことはあまり無いんだよな。敵のわりにはバカ正直だった印象だ。
「ルリさん、本当に?」
「ノエルくんに言われちゃうと弱いなー。実は、向こうで『訓練』をサボって来ちゃったんだよね。どうしても嫌でさ。てへペロ」
ルリは舌を出して苦笑している。そういうことか。仕事を放棄して来たんだな。
「しっかりと仕事はした方がいいぜ」
「しょうがないの! ルリは落ちこぼれで、ド下手だから」
ド変態の間違いじゃないのか? ってか、やっぱり落ちこぼれだったんだ。こんなのが俺たちの子孫の先鋭スパイなわけないもんな。ナメられたもんだぜ。
「でも、たまたま……あっ、また『たまたま』って言っちゃった」
話が停滞するんだよ、アホ。
「偶然シュータくんたちが困ってる場面に出会ったってことで、有能なルリも手伝いましょうか。これも何かのご縁でしょうし」
美月のネクタイの話をするのか? ノエルと目を合わせる。ま、これくらいしても大丈夫か。と言うことで、俺は失くしたネクタイの話をした。
「へえ、ネクタイ盗むとか気持ち悪い犯人もいたもんですねー」
ルリの感想第一声だ。俺もそう思う。盗んだらそれを自分で着けたりするんだろうか。気持ち悪い。
「身に付ける物って他人のだと嫌ですよね、普通は。ネクタイは首に巻くものだし」
そうだよな。
「例えば、ルリのパンティーを穿けって言われたら、ノエルくんはどう?」
「絶対イヤっすよね」
ノエルは苦笑していた。
「髪の毛とか人形とかと同じで、他人の物は気持ち悪いです。こういう気持ちってなんて言うのかなー」
わかるぜ。同じ感覚が未来人にもあるんだな。
「で、ルリは何ができるってんだ?」
ルリは俺に玉コンニャクをあーんしてきた。ノエルをちらと窺うと「見てません」のジェスチャー。俺は素直にルリからコンニャクを貰う。
「不貞を働くってプレジャーだよね。じゃなくて、ルリには未来の技術がありますのです」
なんだって? 未来の技術で何をしようって?




