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みらいひめ  作者: 日野
三章/阿部篇 Who done it?
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十三.宝と見え、麗しきこと並ぶべきものなし(5)

 朝はちょっと寝過ごしたので、急いで登校準備をした。そのときに気付いた。気付いた瞬間の俺は、まず青ざめてリュックの中身を全部外に出して、戻して、部屋中を探し回った。そして、悟った。


「美月のネクタイ、紛失した」


 そんなわけは無い。だって、俺の記憶では確実にネクタイとピンは箱に入れてリュックにしまったんだ。でも、無いということは、リュックから出てしまったらしい。いつだ? そんな記憶は無いぞ。じゃあ落としたのか?


 それとも誰かが取り出した? 誰だ? 美月? それなら断りを入れるだろう。じゃあ、盗まれた? 執着ある美月ファンの仕業なのか? 冨田はやりかねないが親友のプレゼントを盗むヤツじゃない。本当にどこでどうやって失くしたんだろう。


 俺は楽しい気持ちを丸きり失って登校した。家で取り出した記憶が無いことから、学校にあるんじゃないかと思っている。だが、学校に落としたなんて失態があり得るのだろうか。


 俺は美月たちに悟られないように教室内をさりげなく捜し回った。自分のロッカーや更衣室、生物室なども隈なく捜してみた。名前入りだから、誰かが気付いて届けてくれることも無いかどうか気を付けた。校内の遺失物管理所にも寄った。しかし、見つからなかった。


 諦めて素直に打ち明けるべきか。しょうがないもんな。


「おはようございます、シュータさん」

 無垢な笑顔をした美月が駆け寄って来る。クソダサクラスTシャツも美月が着ると華やかだった。


「今日は楽しみましょうね」

 美月は子供のような笑顔をしていた。俺も楽しめる心境ならいいのだが。


 実はな、美月。俺のうっかりのせいで、美月のプレゼントのネクタイとピンを失くしちゃったんだ。だから、今日の接客は残念ながら自前のネクタイな。いや、ホントに失くしてしまってすまない。せっかくのプレゼントだったのにな。いやあ、残念無念。


 ——なんて、言えるわけねえよな。



 今日は校内公開日。高校の生徒だけが来ることになっている。まあ、予行演習みたいなもんだ。準備は済ませて、開会式直前。同じシフトのメンバー、福岡、冨田、片瀬、美月と打ち合わせする。リーダーは福岡らしい。


「シフトは12時半始まりだから十二時十五分集合ね。担当の割り振りは、調理が私と片瀬ちゃん。お客さんを案内してオーダー取るのは美月ちゃん。給仕とお会計が男子ね。


 注意事項は多くないけど、お客さんの案内は奥のテーブルからね。窓際の後ろの席、窓際手前の席、真ん中後ろの席って順に埋まっているように案内して欲しいです。途中からは、空いた席に入れる感じになるだろうけど。あと、オーダーと給仕の順番はなるべく前後しないように。待たせちゃうと悪いから。あとは現場で実践あるのみ。じゃ、頑張ろう」


 えいえいおー。やべえ、全然テンション上がらねえ。ネクタイどこかな。



 ステージが設置された体育館に集まった星陽高校生徒は、整列させられていた。俺は出席番号的に一番前。教師の話が終わると、次は生徒代表のやつらが話した。まず文化祭実行委員長が話し、生徒会長の石島が開会宣言をした。


 石島が生徒会長になったのは一学期の末。投票によって順当に石島が生徒会長、相園が副会長になったのだった。良かったな。で、石島の挨拶。


「おはようございます。生徒会長の石島康作です。皆さん、今日までの準備お疲れさまでした。まずは、一緒に文化祭を作り上げてくれた皆に感謝の気持ちを述べたいと思います。今日、明日は文化祭となっています。文化祭は『The festival of the students, by the students, for the students』です。この二日間は皆さんが主役です。生徒の皆さん、この日だけは羽目を外して、思い切り楽しみ尽くしてやってください。では、本年度の文化祭、スタートです」


 このうさんくさい宣言で生徒は解散となる。石島は楽しみ尽くせと言っているが。トホホ。


「おい、アイ。このあと空いてる? 一緒に巡ろうぜ」

 冨田が声を掛けてきた。午前中は暇だからどう行動しても構わないや。


「いいよ。どこ行くんだ?」

「色々さ。とりあえず、カフェの制服に着替えよう」


 なんでわざわざ⁉ お前はめんどくさいな。教室に戻る途中で美月を見つけた。


「あ、美月。これから冨田と二人で出掛けてくるからさ。しばらく空ける」

「わかりました。私は福岡さんたちと一緒にいますから、会えたら会いましょう」


 美月と会う時間はなるべく少ない方がいい。ネクタイのことを隠したいからな。俺はそのまま更衣室に向かって着替えた。


「あれ、なんでネクタイ着けないの? 愛のプレゼントなんだろ」

 意外なことに、俺よりもウェイトレス服が似合う冨田は早速違和感に気が付いた。


「うるせえ。汚したくないから着けないんだ。暑苦しいし」

 そんな感じで乗り切った。冨田が向かっているのは、下の階だった。


「どこに行くんだよ」

 現在時刻は9時半すぎ。まだ開業したばかりの店々が騒がしい。


「三年の教室だ。三年二組のメイド喫茶」

 ……コイツの考えることはいつも同じようだな。

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