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みらいひめ  作者: 日野
三章/阿部篇 Who done it?
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十三.宝と見え、麗しきこと並ぶべきものなし(4)

「なっ」


 美月は俺の想像した通りの衣装を身に纏っている。もちろん似合うと思っていた。が、いざ着てみると、想像の上を行く。流石の美月さん。照れてモジモジしているのも愛らしい。なんて可愛いんだ。


「美月、きゃわいいじゃないの!」


 ミヨは美月に飛び付いた。お、俺も飛び付きたい!


「そうでしょうか。似合いますか?」

 美月は照れくさそうに笑って抱き留めていた。


「そうよ。ほら、シュータを見て。あまりの可愛さに忘我しているわ」


「うん。可愛い」

 俺が正直な感想を言うと、美月は顔を伏せてミヨの肩にうずめた。ゴメン。セクハラだったかな。


「すげえポテンシャルだな。完璧すぎる。文句の付けようが無いコスプレだ」


 冨田も目を疑っていた。文句なんか当たり前に付けられない、百点満点花丸スタイルだろ。あえて文句を言えと言われたら、スカートの丈かな。膝上十センチだ。白のハイソックスを履いているとは言っても、もう少し丈が長くていいんじゃない? 親心になると、心配だよ。


「すごく似合ってるね。六組はいい衣装を作ったな」


 石島は衣装を褒めることにして、矛先をすり替えたようだ。美月に対して「可愛い」と言うと、他の女子のやっかみがありそうだもんな。


「僕だって、美月さんだから可愛いと思っているんだよ。内心ね」

 石島は俺に耳打ちしてきた。お前にも優等生イケメン以外のキャラがあるんだな。


「美月さん、本当に美人だな。学年一の可愛さだ」


 うわっ、ビックリした。翁川フランケンシュタインか。被り物は取っているが、服に傷があったり、ボルトが生えている。それなのに存在感が薄すぎだ。いきなり喋るな。


「そうだ、写真撮らない? 何かの宣伝に使えるかも」

 福岡がスマホを持って提案した。


「いいじゃない。どうせならシュータも写真に入りなさいよ。カフェの制服着てるんだし」


 ミヨに言われた。皆はクラスTシャツを着ていて、あいにくカフェの衣装を着ているのは俺と美月だけだった。


「じゃあ、俺も入ろうかな」

 俺が「6組 パンケーキ喫茶」という文字やイラストが書いてある黒板の前に行こうとすると、


「まず、美月ちゃんオンリーで撮ろうよ。相田ジャマ」


 片瀬が俺を下げさせた。邪魔して悪かったな。オンリー写真はぜひくれよ。


「はい、次は相田くんも入って」

 福岡に指示されて美月と隣に立つ。近くで見る美月はとても魅力的だった。


「あ、シュータさん。ネクタイ着けてくれると嬉しいです」


 忘れてた。美月のプレゼントだからと大切に保管していたんだった。


「すぐ取って来る」

 俺は教室の窓側後方に向かった。ここに俺のリュックが放置されている。


「彼女待たせんなよ」

 冨田にからかわれた。うっせ、ブタクソゲロゴミアホ人間。


「頑張って、相田くん」

 俺がリュックに手を伸ばそうとすると、死神マントの佐奈子にそう言われた。


「佐奈子まで馬鹿にするなよ」

 俺はリュックからネクタイの箱を取り出す。そして箱をリュックに戻して、俺はネクタイを巻いた。


「巻いてあげよっか?」

「して欲しいけど、結構だよ。自分でやった方が早い」


 俺はネクタイを巻き終え、ネクタイピンを手に取る。よく目を凝らすと、ピンの表面には三日月柄が削り刻まれているんだな。可愛いじゃん。


「へえ、似合うね」

 佐奈子はフードを被ったまま、口角を上げて感想を言った。最近佐奈子とは話していないけど、この控えめな笑顔が好きだったなー(初恋の人と再会した気分で)。


「ありがと。美月からの誕生日プレゼントなんだ」

「ふうん。そう言えば、私のこと『佐奈子』って呼ぶんだ。ドキッとした」


 あ、しまった。ミヨと入れ替わったときの名残で。心の中では佐奈子って呼んでいたからな。


「間違えた。ミヨが下の名前で呼んでたから……」(ちなみに嘘ではない)


「いいよ。佐奈子って呼んで」


 佐奈子の微笑を見て、そうしていただくことにした。


「待たせた。悪い」

 俺が戻ると、賑やかになっていた。他クラスから見学に来たり、ミヨや冨田や片瀬といったやかましいメンバーが色々話していたのだった。


「シュータ、来たわね。良かったじゃない。そのネクタイ」


「うん。美月から貰えてさ」


「私も選ぶときに相談に乗ったのよ。ありがたく思いなさい。私は私で、別にプレゼントは用意してあるから……」


「そんなに気を遣わなくてもいいのに。そうそう、ミヨの誕生日って——」

「わ、私の誕生日なんかどうでもいいわよ」


「そんなことない。お祝いくらいさせろ。いつなんだ?」

「三月」


「まだまだか」

「だから今はいいの! そうだ。私も写真に入ろうかしら」

 そう意気込んだミヨは、「黒子は要らないだろ」と言った冨田を叩いた


「じゃ、じゃあ、相田くんはそこに立って。ポポポポーズして」と福岡。

 ポポポポーズ? 何だそりゃ。


「ようこそ、六組へって感じよ。いらっしゃいませーって」

 ミヨからポーズを指導され、


「もっと笑顔がいいんじゃないかな。表情が硬いよ」

 石島から表情を直され、


「アハハ、ハハハ、相田の笑顔、ハハ、ウケる」

 片瀬から罵倒された。そんなこんなで写真は撮り終わって、福岡からは写真を送ってもらった。大事に保存しよう。美月の部分だけでもいいんだがな。


 俺は汚すのが怖いのでネクタイとピンは外して、再び箱に入れ、置いてあるリュックにしまった。それからしばらく居座った一組のお化けどもを交えてパンケーキの試食をしているうちに、放課後となってしまった。作業はほぼ終わっていて、ゴミと道具を片付けてその日は終了だった。


 そうは言っても、遊びながら作業をしていたら、結局七時まで校内に留まることになってしまい、去年の文化祭準備もゴタゴタしたなあ、そんな感慨に浸りつつ、俺は帰宅した。疲れていたので、明日に備えてぐっすり眠った。


 こんな俺でも前日の夜はワクワクした。ちょっとはミヨと入れ替わった効用が表れているのかもしれない。

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