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みらいひめ  作者: 日野
三章/阿部篇 Who done it?
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十二.音には聞けども、いまだ見ぬ物なり(14)

 美月の私物の移動を終わらせて、もう少しでミヨの両親が帰って来る時刻。美月とノエルも出て行く時間だ。


「じゃあ、お二人ともお達者で」

 美月は古くさい日本語使うわね。


「俺も、心配は無いっすけど、上手くやってくださいね。駄目なら時間を『遡る』ことができますんで」


 ノエルは笑顔でそう言った。任せなさいって。二人は玄関で靴を履くと、瞬間移動で行ってしまった。その場には私とミヨ(男)が残る。


「大丈夫、俺に任せろ」とミヨ(男)。


 私は妙に焦ってきた。そこから立ち退く気力も無く、玄関でフラフラ歩いて待つ。チャイムが鳴ったのは、十時四十五分だった。


「はーい!」


 私は玄関のドアを開ける。すると、パパとママが笑顔でこちらへ歩いて来た。写真で見たときも思ったけど、うちの両親よりずっと若々しい。最初は三十代かと思ったくらい。私は演技だけど走って行って、ママの懐に飛び込む。温かい体温だった。後ろではミヨ(男)が見ているだろう。


「実代、危ないわよ。きちんとお土産にシュークリーム買って来たから、ほら」


「ホント⁉ おかえり。ママ、パパ」

 私は二人に頭を撫でてもらった。家の中に案内する。玄関にはミヨ(男)が直立不動で立っている。


「そう言えば、二人に紹介したい人がいるの。この人なんだけど」

 私がミヨ(男)をパパとママに見せると、二人は驚いた。


「こんにちは。実代さんと同じ高校に通っている相田周太郎と申します。実代さんとは、その、フィアンセです」

 何よ、フィアンセって。恥ずかしいって。


「今日呼んじゃったんだけど、平気だったかしら」

 私が恐る恐る訊くと、パパとママは頷いた。


「とっても素敵な方じゃない? ねえ」

「え、僕かい? うん。複雑だけど嬉しいね」


 一応認めてくれたらしい。何とかなった。私とミヨ(男)は胸を撫で下ろした。二人は家に上がって荷物を整理したり、着替えたりしていた。でも、パパは、


「そうだ。どうせなら四人で昼食を食べに行かないかい? 近所のレストランで」


 そう提案した。この時間帯ならランチに行く、それは想定済みだった。


「いいわよ。四人で積もる話をしましょうよ」


 私は快諾して着替えを始めた。何とか、上手くいって欲しいわね。



 どんな景気のいいレストランに連れて行かれるのだろうと思っていたけど、パパの運転で(私は助手席だった)実際に着いてみれば、普通のファミレスだった。


 私の隣にミヨ(男)。向かいに両親という席で座った。ハンバーグが売りのお店だったので、私はグリル焼きハンバーグにした。ミヨのことだからとサラダ付きで。料理が届くまで、近況報告みたいな話でやり過ごしていた。


 皆が食べ始める頃に、修学旅行の話になった。


「実代は先週修学旅行に行ったんだよね?」

 パパが訊いてくる。私は「うん」と答える。


「そうよ。北海道まで飛行機で行ってね、お土産も買って来たの。たくさん」

「たくさんか……」


 パパはたぶん、ミヨの「たくさん」は本当に「たくさん」であることを想像したのだろうと思った。事実、私とミヨ(男)で各々買ってしまったので、たくさんある。


「楽しみね。どこに寄ったの?」

 ママが尋ねる。キャビンアテンダントというだけあって、所作が美しかった。


「それはね、まず——」

 私は思い出せる限りの面白いと思ったエピソードを話した。二人は本当に楽しげに笑って聞いてくれた。たまにミヨ(男)も話を盛り上げてくれた。


「そっか。そんなに楽しかったの。良かったね。()()私も実代と旅行に行きたいな」


 ママが感想を言った。また行きたい? 私と?


「え、ええ。そうね。また行きたいわよね」


 何の話だろう。私が知らない話。


「そうだね。実代が小学生の頃だったか。ハワイに行ったのは」とパパ。

「もうずいぶん昔になっちゃうのね。懐かしい」


 ハワイに行った家族旅行。そんな記憶ない。


「あの頃は大変だったよ。だって実代がサーフィン体験したら横転して溺れちゃってさ。それ以来、拗ねて海は見たくないって言い出す始末なんだから。ハワイなんてどこ行っても海が見えるんだ。実代はその度に怒るし。頑張って火山に行ったんだけど、海が見えちゃってそこでも泣き出したもんな。最終的には楽しく砂浜で遊んでたけどね。大変だったよ」


 パパが思い出して笑う。ママも思い出したみたいで笑っていた。


「その頃から意地っ張りだったんですね」

 ミヨ(男)も感想を入れてなんとか取り持ってくれる。


「実代は覚えてる? 小さいから覚えていないかな?」

 ママが私に訊いてくる。しょうがないから、覚えてるって返そう。


「実代さんは、ワイキキで大きなパンケーキを食べきったこと、僕に話してくれましたよ」

 ミヨ(男)が援護してくれた。助かった。


「そっか。近頃はお父さんもお母さんも休暇が自由に取れるようになってきたからさ。今度、旅行に行くのはどうかな?」


 パパが言う。私は「いいわね。行きたい」と返す。


「じゃあ冬休みとか春休みかしらね。どこ行こうかしら」

 ママも楽しみにしている。ミヨ(男)も笑顔だった。——あ。

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