一.黄金ある竹を見つくる(19)らいと
「聞いてなかったけど、なんで俺が竹本さんに選ばれたんだろう?」
俺は炙りサーモンを食べている途中に、突如竹本に質問した。疑問だったのだ。俺にとって竹本は特別だけど、向こうにとってはそうじゃなかったはずだ。
「えっと、特別というのは……」
「未来人だって打ち明けたこと。あ、ちなみに俺は竹本さんが未来人だってことをもう信じているよ。これが夢じゃなければだけど」
今日起こった出来事も、目の前に絶世の美女がいることも非現実的だから、未だに夢かと思ってしまう。竹本はイクラ軍艦を頬張って頷いた。飲み込んでから、
「なぜ相田さんが特別か。それは、時間を『遡って』も相田さんの記憶だけはリセットされないからです。あなたは特別な身体をお持ちなのです」
それって……。やはり昼休みのときから、同じ異常が起こっていたけど。
「ええ、出身地を言い間違えたときにも『遡り』ました。相田さんは記憶に保護をかけたわけでもないのに、記憶がリセットされなかった。これはもう超能力です」
――ん? なぜ科学的な話をしていた未来人が、いきなり超能力と言い出すんだ。
「そ、そのですね、相田さんの能力は科学の域を超えてしまっています。一種の特殊能力です。恐らく、こちらの時間軸を構成するときに、秩序を保つために何らかの作用が働いて、『遡って』も記憶が影響を受けない超能力が、相田さんについてしまったのかと」
俺は未来人のせいで超能力者になっていたのか。
「なんでそんな大事なことを黙っていたの?」
「黙っていたわけではなく、話す順序を間違えてしまって。言われてみればそうです! 相田さんじゃなければならない理由をまず話さなくてはいけなかったですよね! でなければ、協力してくださる理由が無かったはずです……。わたし、本当に駄目だめですね」
別にいいよ。てっきり竹本から人間的な信頼を寄せてもらえていると勘違いして、喜んでいたくらいだからさ。結果的にも友達を救えてラッキーだった。で、俺は特にその他の異常があるわけではないんだよな?
「ええ、自覚症状がなければ。心配でしたら、後で検査いたします」
それよりも俺以外にも同じ目にあっている人間がいないか心配だな。その実験は大丈夫なのだろうか。竹本を見ていると、隠し事をされている気がしないでもない。すると、視界の端のレーンにウニが出現した。せっかくだし食べておくか。
「竹本さん、これも食べる? イクラも食べられたし」
「はあ……。相田さんも美味しいと思いますか?」
「ああ、ウニも俺は好きだよ」
竹本はフリーズした。どうしたのかと問おうとする前に、みるみる顔が紅潮して瞳を背けられた。ウニって未来だと放送禁止用語なのかな。
「相田さん、その……」
その続きは待っても出て来なかった。
「ウニ食べない?」
「え? ウ・ニですか」
知らないのだろうか。確かに未来にはいないかもしれない。日本人じゃないらしいし仕方ないか。




