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みらいひめ  作者: 日野
三章/阿部篇 Who done it?
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十二.音には聞けども、いまだ見ぬ物なり(6)

 翌日は班行動だった。朝食を終えると、班で集まって自由に観光できる。どの班も午後六時半に札幌のホテルに終着という予定だ。俺たちの(と言うか元ミヨの)班は、まず市場に行って色々食べて、それから観光牧場に行く。


「よし、全員揃ったね。じゃあ出発しようか」

 石島がメンバーを確認する。俺たちのリーダーは石島。コイツに付いて行けば、この広大な大地で彷徨うことも無いだろう。気が楽だぜ。


「ようし、じゃあ出発オーライよ!」

 たぶん、ミヨとしてこういう声出しをやらないといけないが。



 電車を使って移動し、市場では貝を焼いて食べ、持ち帰れる干物などのお土産を買い、昼食として海鮮丼を食べた。そこからまた電車やバスを使って牧場に行った。着いたのは一時半頃でかなり暑かった。俺たちは汗をかきつつも、だだっ広い草原を眺めながら歩いて行った。ま、俺の地元よりは湿度が低くて、風が気持ち良かったのが唯一の救いだ。


「あちー。毎日クーラーの部屋でフライドポテト食べながらゲームしてる私には堪えるなあ」


 坂元は明らかに死にかけていた。道中で麦わら帽子を買って被っている。そして冷たいドリンクを首に当てていた。かく言う俺も手持ちの扇風機で顔を冷ましている。


「まずは休憩所で一休みしよう。場内を見て回るのはその後でもいいよね」


 石島は首に掛けたタオルで汗を拭いていた。佐奈子はというと、キャップは被っているが、涼しい顔をして付いて来ている。いや、頬が赤く上気しているから実は暑いのだろう。翁川はどうしているか見ると、カメラを覗いていた。


「慶くんは暑くないの?」

 山と入道雲を被写体にしていた翁川はこっちを振り向いた。


「暑いよ。カメラも手の温度で反応が悪い」


 翁川はカメラを手放して首にぶら下げた。俺たちは休憩所に行って、テーブルに着いた。中はマジで涼しかった。皆でソフトクリームや冷えたジュースを買って休んだ。涼しい場所でしばし談笑する。正直、外にこれっぽちも出たくない。翁川の撮った写真を見ているときだった。休憩所の自動ドアから数人の口うるさい若者たちが入って来た。


「クソ涼しいじゃん。もう休もう。牛とか羊なんか見なくていいだろ」

 大声でそんなこと言うなんて、ずいぶん度胸があるじゃねえかと思ったら冨田だった。


「なんでこんな所にいるのよ!」


 冨田がいるということは……? 俺の班、つまり美月もいる?


「あ」


 その次に目が合ったのは俺だった。違う、俺じゃない。ミヨ(男)だ。続いて片瀬、福岡、美月が入って来る。


「なんでアンタたちがいるのよ?」

 俺が思わず声を上げると、向こう側も驚いた。ミヨ(男)が最初にこちらへ来る。


「うわ、会えると思わなかった」

「あれ、シュータたちってここに来る予定だったっけ?」


 俺たちの班は、この牧場に寄る計画は無かった記憶があるのだが。


「色々時間食っちゃってさ。急遽予定変更したんだ」

 冨田がくたくたの状態で隣のテーブルに座った。他の班員もその席に座る。美月はお似合いのノースリーブを着て、冷たい緑茶を飲んでいた。


「美月も暑そうね」


「ええ。少々疲れました」

 美月は苦笑していた。


「元はと言えば、冨田が悪いんだろ。お前がトイレ行ったから電車一本逃したんだ」

 俺の向かいに座ったミヨ(男)は、冨田を責めていた。


「それはすまない。どうしても我慢できなかった」

 そういうわけで目的地を変更したのか。そこがたまたま俺たちと同じ牧場だったと。


「君って相田くん?」

 佐奈子がミヨ(男)を指して訊いた。ミヨ(男)は驚きながら「そうだよ」と答えていた。佐奈子は「ふーん」と言って終わり。それだけ?


「気になっただけ。そっちが噂の美月さん?」

 いきなり名指しされた美月は驚いて「竹本美月、十七歳です!」と答える。オーディションか。


「へえ。初めて間近で見たけど、絶世の美女だね」


 翁川が美月の顔を覗きながら呟いた。彼女持ちの余裕か。カップルで余裕ぶちかましやがって。よく見ると、冨田は悔しそうに頬杖をついていた。美月は言うべくもなく、照れている。


「いいのかい? 彼女さんの前で」

 石島が翁川を冷やかした。翁川は「前で言っても裏で言わないからね」と返していた。


「それはそうとさ、私たちはいつまでこうしてるの?」

 佐奈子が話に入って来た。ミヨ(男)が振り向く。


「お前ら、いつからここにいるんだ?」

 そう言えば、ここに到着してから二十分くらい経っている。スケジュール的には大丈夫だが、流石にお喋りしてソフトクリームを食うだけで過ごすのはもったいないか。


「じゃあ、そろそろ見に行きましょうよ。私たちだけでもさ」

 俺の提案は受け入れられると思ったのだが、そこにソフトクリームを手に携えた片瀬と福岡が戻って来た。


「え、待ってよ。行くなら私たちが食べ終えるの待って」

 片瀬に怒られた。


「お前らがそうやってのんびり食べたり買い物したりするおかげで遅れたのもあるんだぞ」

 冨田が精一杯苦言を呈していた。まあ、どうせなら皆でのんびりしていりゃいいか。外は暑いわけだしさ。


「わ、このソフトクリーム美味しいね。普通のと違って舌触りがザラザラしてない。ミルクの——」

 福岡の食レポが始まる。やれやれ、しばらく動けそうにない。

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