十一.心確かなるを選びて(19)
タスクは順調に終わって、下校である。石島は生徒会で何かの設営があるというので、生徒会室に向かった。今は坂元と佐奈子・翁川カップルと共に校舎を出た。そして学校近くにあるコンビニに入ることにした。
「慶。うどんかお蕎麦ある?」
「んー、たくさんあるよ。種類も」
クールなカップル(普通は「アツアツ」って表現すべきなんだが)は昼食を選んでいる。こう見ると、仲はいいように思えるが、ベタベタくっ付いたりはしないようだ。
俺は、家に帰れば美月がそうめんを用意して待っていてくれるので、昼食は買わない。見ているのはアイスケースだった。何か食べて帰ろう。
「みよりん、何にするの?」
坂元が肩を掴んで訊いてくる。ケースを眺めて、ホワイトチョコのアイスバーに決めた。
「これにする」
「え、みよりんってホワイトチョコ嫌いじゃなかった?」
坂元が不思議そうに訊いてくる。ミヨはホワイトチョコが嫌い? 知らなかった。
「美味しそうだからちょっと試してみようと思ったのだけど、じゃあやめるわ。かき氷にする」
イチゴ味のかき氷バーに替えた。坂元は飲むタイプのアイスを買っていた。
「佐奈子、俺が買うから。ほら、それもカゴに入れていいよ」
佐奈子は買った弁当やデザートを翁川の持つカゴに入れていた。
「慶くん、それ買ってあげるの?」
俺が問いかけると、翁川は頷いた。佐奈子がニコッと笑う。
「私が買えって言ってるわけじゃないよ。お互いに買ったり買ってあげたりするんだ」
「へえ。信頼関係ね」と適当に感想を言う。
「みよりんと坂元ちゃんのアイスも買ってあげなよ」
佐奈子は俺と坂元のアイスを指差す。
「いや、駄目でしょ。私たちは」
坂元が反対するも、翁川は受け取ってカゴに入れる。
「いいよ。実代さんや坂元さんには、いつもお菓子を分けてもらってるし。気にしないで」
翁川はそのままレジに向かって行った。俺と坂元はお礼を言う。何だか上手く言えないが、変にごねず、さりげないところがモテるんだろうなと思った。うるさい——もとい、元気な女子に囲まれている俺のことだから、ぜひ見習おう。
俺たち四人はコンビニを出て帰宅する。アイスが溶けてしまうので、俺と坂元はアイスを食べる。直射日光は鬼のように猛威をふるっていた。
「そう言えばさ、皆は修学旅行にどういう服を着て行くの?」
俺は主に隣を歩く女子に尋ねた。修学旅行まで二週間を切っているのだ。
「むしろ、みよりんが何を着るのか知りたいね」
佐奈子はまるで暑さなど無いかのように飄々と答えた。
「女子がどういう服を選べばいいかなんて、お……私だってわからないのよ」
そこはミヨや美月にも相談しているが、一々服を選ぶのが面倒なんだよな。男の俺には、ファッションの「ファ」の字もわからなかった。
「いーじゃん。みよりんは何でも似合うんだからさ」
坂元はアイスを吸いながらそう言う。俺もアイスをかじる。
「実代さんは服選びで間違ったりしないんだから、大丈夫だよ」
翁川が当たり障りないフォローを入れてきた。翁川は佐奈子と自分の弁当が入った袋を提げながら、後ろで付いて来ている。健気な男だ。
「どうして服のこと気にするの? もしかして気になる人がいるんじゃない?」
佐奈子がハテナマーク二個使うなんて珍しい。からかってやがるな。
「なんで気になる人がいると思うのよ。いたとしても関係ないじゃない」
そう言ってやると、坂元は面白そうに笑った。
「嘘だー。みよりんはバッチリキメキメコーデで、アピールしなくていいの?」
誰に何をどうアピールするんだ。
「だって修学旅行だよ。同級生の好きな男子と近付くチャンスじゃん」
坂元は信じられないって表情で訴えてくる。そう言われてもな。俺はミヨが誰を好きなのかとか全然知らない。興味もねーよ。そもそもコイツに好きな男なんかいるのか。好きな化学式とかはありそうだけど。
「そう言う坂元ちゃんはいないの? 好きな男子」
俺がお返ししてやるが、坂元は痛くもかゆくもないようだ。
「私には好きな韓流俳優がいるの。もうあの方たちを観るだけで私が生きていく理由になる」
どうも韓流ドラマオタクらしいな、坂元は。
「話逸らさないでさ。どうなの、みよりん」
佐奈子が楽しそうにニヤリとする。俺は既に食べ終えたアイスの木の棒を加えながら答えた。
「知らないわよー」
「いやいや。みよりんなんか、わかりやすいくらいわかりやすいじゃん」
坂元が割って入ってくる。
「まあまあ、みよりん。敵は多いかもしれないが、私は味方だぜ」
坂元は親指を立てた。いや、ホントわからん。ともかく懸案事項は、俺が元の体を取り戻すことだからな。修学旅行までに何かしら奇跡が起こるよう祈ろう。




