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みらいひめ  作者: 日野
三章/阿部篇 Who done it?
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十一.心確かなるを選びて(18)

「失礼します。生徒会文化祭担当の相園深雪です。この前の申請書が通ったのでお知らせに来ました」


 教室後方のドアが開いて女子生徒が入って来る。見慣れたショートボブの髪型。相園だった。生徒会の仕事で来たのか。生徒会副会長のくせして、今年も文化祭担当なんだな。去年の功績が認められたのなら、俺としては幸いだが。いきなり来るから焦った。


「ああ、相園さん。お疲れ様。僕も午後行くよ」

 同僚の石島は相園から書類を受け取る。相園は頷いた。


「生徒会って夏休みも仕事あるの? めんどくさ」と坂元。


 率直すぎるだろ。生徒会長と副会長だぞ。


「生徒会は、行事の実行委員会の手伝いをする係がいてさ、相園さんは去年も今年も文化祭担当なんだ。それとは別に、生徒会では各クラスや部活がルールを守ってるか、経費として捻出できるかの事務もやるんだ」と石島。


「うえー。よくできるね。私、絶対やりたくない」


 坂元が顔をしかめる。そんなこと言っちゃ、真面目に頑張っている実行委員や生徒会が可哀想だろ。相園に目線を向けると、座っていた俺の存在に気付いたみたいだった。


「あ、みよりんだ。元気?」

 こっちに来る。来るなって。相園とミヨってどういう関係なんだ?


「何作ってるの?」

 俺の手元の墓石を覗いた。まだ半分くらいしか塗っていない。


「こ、これはね。相園さん、アナタの墓よ」


 そう冗談を言ってみたのだが、あまり反応が良くなかった。石島も坂元も何も言わない。佐奈子や翁川は言わずもがな無反応で見ているだけ。


「ごめんなさい、相園さん。冗談よ」と誤魔化した。


「それはわかるよ。前みたいに『深雪ちゃん』って呼んでくれていいのに」


 「深雪ちゃん」って呼ぶのか。初めて知った。いや、四月の部活動紹介のときにミヨがそう呼んでいたっけ。失念していた。知り合いなんだな。相園は隣にしゃがむ。相園とこんなに近いのって久し振りだった。


「ちょっと見せて」

 相園が近くにあったカツラを手に取る。そして俺にしか聞こえないように小声で言ってきた。


「みよりん、怒ってる?」

 相園が心配そうに、しかして少し拗ねたように訊いた。突拍子も無い質問だった。


「え、どうして?」

「いつもみたいに明るくないし、相園さんって呼ぶし、距離を感じるから」


 そう見えただろうか。相園とミヨの距離を測りかねていたからな。


「そんなことないわ。深雪ちゃんは友達よ。それに、怒らせるようなことあった?」

「それは、だから、アイくん……相田くんとの話を聞いたのかなって。去年のこと」


 ん? 去年の俺と相園の話? なんでそこで俺が出て来るんだ?


「え、どういうことかしら? シュータと何かあったの?」

 俺が再度尋ねると、相園は勘違いに気付いたようだった。何をどう勘違いしていたのかは結局わからなかったが。


「あっ、ち、違うの。違うんだったら忘れて。ごめんなさい!」


 顔を真っ赤にしていた。口元を押さえて恥ずかしそうにしている。


「ま、まあ何でも構わないわよ。文化祭の仕事、ほどほどに頑張ってね」

 恥ずかしさを紛らわせてあげようと思って声を掛けた。すると、相園は目を合わせてきた。


「どこか、アイくんに似てきたみたいね」


 寂しそうに言われた。俺は、はっとした。


「深雪。ちょっとこっち来てみ」

 佐奈子が相園を呼んだ。俺は作業に戻る。佐奈子は相園に衣装を着せていた。真っ黒の全身を覆うマントらしい。相園はフードも被った。


「それ死神用だよ。私が着るの」と落ち着いたワントーンボイスの佐奈子。


 相園は「どうなの? これは」と苦笑しながら一回転する。


「めっちゃ似合う! 超可愛い!」と坂元。

「いいんじゃない? ハロウィンみたいだ」と石島。

「うん、それ着て生徒会やったらいいのに」と俺も便乗。


 翁川も何か言おうとしたが、声が届かないことを悟ってやめていた。相園は照れ臭そうに笑う。実際似合ってるぜ。


「皆でからかわないでよ。じゃ、私は仕事に戻ります」


 相園は衣装を脱ぐと、いつものように真面目に仕事に帰って行った。また今年も文化祭の季節か。

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