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みらいひめ  作者: 日野
三章/阿部篇 Who done it?
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十一.心確かなるを選びて(15)

 俺と美月は家に入って部屋着に着替えた。それから蘭家を一通り案内される。どこに何をしまうとか、これは触っちゃいけないとか、様々なルールがあるからだ。リビング(何回か遊びに来たことがある)に戻って来る。


「——普段はここで過ごすんですよ。エアコンやテレビのリモコンはそのテーブルの右端に置いてください。そこのホワイトボードは明日の予定を書くのです。では、私はこれから夕食を作りますね」


 そう言うと、美月は俺を残してキッチンに行ってしまう。黄色いエプロンを着けていて、よく似合っていた。俺はすることが無い。


「美月。俺、風呂洗いしようか?」

「あ、手伝ってくださいます? ありがとうございます。浴室の中にブラシと洗剤はありますよ」


 俺は風呂を洗った。なんか、俺ん家より一回りデカいな。10分で洗い終えて戻る。


「美月。他にすることある?」


「え? あー、えっと。私の制服にアイロンかけられます?」

「いや、あんまり綺麗にできる自信ない」


 美月の制服なんか触るだけで犯罪だよな。


「じゃあ、二階に掃除のワイパーがけしてください。最近片付けをして、埃っぽいので」


 俺は二階を掃除した。綺麗で広くていいなーと思いながら。10分で戻る。


「終わったよ。次は?」

 美月は盛り付けを開始していた。が、まだフライパンが稼働中だ。


「シュータさん! 働き者なのは大変嬉しいのですが、仕事が無いので座っていてもらって大丈夫ですよ」


 ちょっと困らせてしまった。不器用のくせに、なまじっか手伝いをするって張り切っちまったからな。罪悪感を抱きながらスマホをしばらく見ていると、美月が皿をテーブルに運んでいた。


「あ、手伝うよ」

「ありがとうございます」


 二人でダイニングテーブルにご飯を運ぶ。アリスの事件のとき、ここのテーブルに突っ伏して過去に「戻った」のだった。帰りにアリスはいなかったが。


 二人で向かい合って座る。テーブルには立派にも白米、味噌汁、豚の生姜焼き、千切りキャベツ、ごぼうサラダ、冷凍ミニパスタ。これ全部美月が? 完璧という字は美月のためにあるんだな。いただきますをして二人でお話ししながら食べる。楽しすぎる。ミヨには悪いことしたなあ。案外、入れ替わってみるもんだ。


 そして、あっという間にごちそうさまでしたと言った。


「ふう。お腹いっぱいですね。どうでしたか?」

「そりゃ美味しいし、大満足だ。美月と一緒だと楽しいね」


 二人しかいないしこれくらい大胆なこと言ってもいいか、と思って言ってみると美月も素直に喜んだ。


「私もシュータさんと二人でお食事なんて久し振りで楽しかったです。なんか、夫婦にでもなったような、あったかい気分ですね」


 突然の夫婦たとえ。俺は面食らってしまった。


「あっはは。そうだね。そうだといいね」


 上手く返せなかった。美月と夫婦か。そうなれば、全私財を投げ打っても、命を賭けても惜しくはないように思える。誰だってそうじゃないか。でもここはプロポーズする場面じゃないしな。


「ふふ。外見がみよりんさんなので、顔を合わせるといつも通りなのですが」

 美月はにこっと笑った。そうだったな。すっかりミヨの体でいることを忘れてしまっていた。ミヨの体だから、美月は夫婦なんて冗談を言えたかもしれない。


「じゃあお皿を——」

「あ、皿洗いは俺がやるよ。美月はお風呂沸かして先に入っちゃいな」


 美月は「ではお言葉に甘えさせてもらいます」と言って浴室に行った。俺が「さあ皿洗うか」と腰を持ち上げたとき、スマホが鳴った。見てみると、画面には眼鏡にパーカー姿の伊部がいる。伊部はテーブルに本を積み上げていた。

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