十一.心確かなるを選びて(14)
その後、蕎麦を食べ終わった俺たちは解散した。星陽高校前の駅で別れる。だが残念なことに、ミヨ(男)と福岡とノエルはもう少し電車に乗らないといけない(俺と福岡は同じ中学で、同じ駅を使っている。ノエルはまた別の駅)。
ミヨ(男)には福岡と共に一旦帰るフリをしてもらうことにした。俺は美月、冨田、片瀬と下りて、夕焼けを浴びつつ歩く。そして手を振って別れ、ミヨ宅に着く。家には既に瞬間移動で先回りしたノエルがいた。
「今シュータ先輩の家付近に行って、みよりん先輩を呼んで来ます」
頼もしく便利な後輩だ。俺と美月で玄関前に二人きり。ところで、
「俺って、美月と一緒に住むの?」
ミヨの体で俺の家に帰るなんてできないもんな。美月と二人きりで同じ家に泊まる⁉
「あっ、えっ、そうですよね。そうなりますよね」
美月は顔を真っ赤にした。そのとき、ミヨ(男)とノエルがヒュンと移動してきた。
「ふう。本当にシュータって楽ね。時々面白くもない正論を言うだけでいいんだもん」
ミヨは着くなり俺を皮肉った。俺からすれば、ミヨって好き勝手ボケるだけだから楽しいな、だけど。
「これからの方針を立てましょう。その、シュータさんは私と一緒に住むのですか?」
美月が心配そうに言った。あのさ、
「そのシュータってどっちよ?」とミヨ。俺もそう思った。
「もちろん、中身がシュータさんの方です」
つまり俺の方ね。
「げえ、シュータが美月と?」
「なんだ、不満か」
ミヨは顔をしかめていた。だが、よく考えると俺が悪い気もする。
「いや、美月や嫌なら俺も何か対策を練らないと駄目だよな。流石に同級生の男子と寝泊まりするのは——」
「私は別にいいですよ。シュータさんが嫌なんじゃなくて、私自身の問題なので……」
美月は下を向いていた。なぜ俺が嫌じゃないのに美月が悩む必要があるのだろう。
「嫌じゃないからこそよ」
ミヨ(男)が目線を逸らしながら言った。なんだそれ。
「ともかくお互いがお互いの体の家に帰るってことでいいっすかね」
ノエルは余裕の微笑。お前はよっぽどのことが無いとへらへらしてるもんな。羨ましい。
「シュータのボロ家かあ」
一応、築十五年で絶賛ローン返済中だ。文句あるなら野宿でもしてろ。補導されない程度にな。ちなみにミヨたちは今までに何度かうちに遊びに来ている。ゲームしてお菓子食べて散らかしただけだが。
「注意事項とかある? シュータの家の掟とか?」
おいおい。そんな規律高い家じゃないぜ。
「二歳年上の兄貴がいるってことを覚えとけ。今は一人暮らしで、たぶん当分帰って来ない。それと、俺は家で基本ぐうたらしていりゃ平気だ」
ミヨはふーんと頷いた。そんな難しくないだろ?
「でさ、その。こっち来て」
ミヨ(男)に引っ張られて、美月とノエルから離れた場所で内緒話をされる。
「何だよ、いきなり」
「トイレってどうするの? 座るのはわかるのよ。その、立ってする——」
「小便器?」
「ぬっ。そうよ。あれって隣の人が近いし、それにズボンは——」
お互いにそういう話をした。こっちも聞きたいことがあったし。そうじゃないとほら、全然知らないだろ?
「何の話をしていたのですか?」
戻って来た俺たちに美月が訊いた。まあ色々。
「じゃ、私は帰るわよ。くれぐれも美月に手を出さないこと、いいわね!」
はい。信用第一ですんで。そっちも奇行はするなよ。




