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みらいひめ  作者: 日野
三章/阿部篇 Who done it?
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十一.心確かなるを選びて(10)

 俺、ミヨ、美月、ノエルは列に並んでいた。


「もし敵が抵抗するようならノエルくんが捕まえて、とっちめてやりなさい!」

 ミヨはまだミヨのまま。俺も俺の体。よく馴染む。


「お、次だぜ。あと、とっちめちゃ駄目だ」

 俺たちは緊張の面持ちで店員の顔を覗いた。


「いらっしゃいませ! 何にしますか?」


 あれれ?


「ちょっと、どういうこと⁉」


 ミヨが耳打ちしてくる。そこで出て来たのは若い男の店員だった。どう思い返してもさっきは若い女の店員だった。高校、大学生のバイトかなという年齢だった。人物が代わってしまっている。


「あの、ご注文は?」

 男性店員は注文を促す。ノエルが反応する。


「えっと、ポテトのLサイズで」

 お前が頼みたいだけだろ。もう俺は何も食べる気が起きない。


「じゃあ先輩に払ってもらって」

 俺が払うのかよ、はいはい。言っておくけど、お前に奢るのとミヨに奢るのはモチベが違うからな。商品を待つ間、ノエルが質問した。


「あの、ここには女性の店員さんはいましたか? えっと、さっきも来たんですが」

 男性店員は首を縦に振った。やっぱいるのか?


「裏に二人いるよ」

 親指を厨房の方に向ける。俺たちが覗くと、おばちゃんの店員が二人調理中だった。


「あ、どうも」


 ノエルは黙った。俺たちが前に会ったのは、学生くらいの年齢の若い女性だ。どう見てもあの方たちではない。つーことは、「入れ替えます」って言った女は消えたんだな。


「すみませんが、ここで若い女性が働いていませんでしたか? 知り合いなんです」


 ミヨがちょっと強めに問いただした。が、店員は苦笑する。


「若い子ね。俺もそういう子とバイトしたかったよ。まさか、可愛くて若い子が全員プールの監視や迷子センターの方に行くなんて思わなかった」


 短期バイトのくせに出逢いなんか求めてんじゃねーよと思ったが、どうせならプールの方で目の保養をしたいよな。でもここはクーラーが効いてマシだと思うぜ。


「こちら、ポテトのLになります。ありがとうございました!」

「ありがとうございます」


 美月がにこっとしてポテトを受け取る。店員は女神たる美月に完全に見惚れていた。胸元は見るなよ!



 俺たちは、ひとまず日陰を探して集合。ポテトを皆でつまみつつ話す。


「もふ、はれはれふはいほへ。はめ」

 ミヨがポテトを頬張りながら言う。聞こえん。


「あの女はいなかったよな。これはつまりどういうことなんだ? 俺たちは確実に若い女性店員に応対されて、入れ替えるって言われたんだ」


 ちなみにまだ俺とミヨはぶつかっていない。そもそも「遡って」から、あの科白を言われていないんだ。これから入れ替わるのか?


「たぶんですが、あの人が時間を『遡って』も記憶を保持できたから可能なのでしょうね」

 美月が言う。どういうこった? ノエルがすかさず答える。


「先輩が見たという女性は、この前と異なる行動を取っています。ふつう、前回と全く同じ状況に置かれたとき、人は高確率で同じ行動を取ります。ですから、これはおかしい。異なる行動を取るには、時間が『遡った』ときに記憶が残っていないと駄目でしょう。前回はこうしたから、今回はこうしようという風に。ですから、その女性は時間を『遡って』も記憶をリセットされなかったということです」


 待てよ。だからそれは、あの女が未来人または超能力者ってことか。


「ええ、恐らくは。何かしらの意図を持って、お二人を入れ替えることにしたのでしょう。そして仕事を終えて帰って行ったと」


「え、美月。私たちは今回、『入れ替われ』も何も言われなかったのよ。これから入れ替わるの?」

 ミヨの反論もごもっとも。今回は「遡った」結果、何も言われなかったが。


「それは、恐らく問題無いのでしょう。一度言ってしまえばなんとかなると」

 もしアイツが犯人なら、そういう意味で帰ったんだろうな。ふーん。


「ふーんじゃないわよ! 犯人が逃げちゃったなら手の打ちようが無いじゃないの」

「た、確かに。もう一回『遡った』って意味ないのか?」


 ノエルは「さあ?」と肩をすくめる。美月は苦笑して、


「相手は逃げる算段を持っているのだと思いますよ。だからいくら繰り返しても……」


 俺もミヨも青ざめた。こんなに猛暑でもさ。だって、これで入れ替わって一生元に戻れなかったらどうすんだ。


「そんなの嫌よ。ねえ、何か手段は無いの?」

「無いことも無いんじゃないっすか?」とノエル。


 お前の発想力には期待してないぜ。


「例えば、俺がみよりん先輩を瞬間移動で海外に連れて行きます。そして二度と帰国しないと。そうしてシュータ先輩と再会することが無ければ入れ替わらずに済みます。会えなければぶつからないわけですからね」


 ほーら。ノエルはいいアイディアが出ない状況だと、ニヒルな冗談しか言わない。


「はあ? そんなの何が何でも拒否するわ! シュータと一生会えないなんて寂しいし、死んだも同然——」


 ——は?


「え、あ、いや、あれよ。シュータに会わないからって日本から離れたら、星陽高校にも行けないし、家族にも会えないから、寂しくて死んじゃうって言いたかったの!」


 そういうことね。まさかコイツが、シュータと離れ離れなんてロミジュリ以来の拷問よ、みたいに言うわけないもんな。


「でも、とにかく穏便な選択肢しか認めないんだからね」

 だがもう行き止まり。絶体絶命。背水の陣。さあどうする?


「諦めるしかないんじゃないっすかね」

「まあ、今はどうしようもないでしょうね」


 ノエルと美月。お前らさ、諦めたらそこで人生強制シャットダウンだぜ。


「ですが、やりようが無い。今は何もできないですよ。恐らくですが、俺たちは今まで正しい歴史、『正史』を歩んで来ました。坂元先輩、石島先輩、アリス先輩の事件はどれもギリギリで失敗しかけましたが、何とか正解の道を通って来ました。やれるだけはやっておけば何とかなったじゃないですか。この度もできることは全部試したんだから、次の動きがあるまで待つほかないでしょう」


 そうは言ってもだな。困り顔の美月は、


「ノエルくんの論が正しいかはわかりません。絶対に『正史』を踏み外さないとは、私は言えません。ですが、もしこの選択が『正史』とかけ離れているならば、世界の秩序が乱れて私や伊部くんに警告がされるはずです。まだ世界が順調に進行しているなら、このままでも間違いではないのではないかと思います。しばらくの間、どれくらいになるか不透明ですが、ご辛抱してくださいますか?」


 だってよ、ミヨ。俺は……


「はあ。俺はしょうがないなら受け入れるよ」


 ミヨは俯いて、難しい顔をしていた。


「ミヨがいいならって話だけどな。どうなんだよ」


「私は、基本は嫌よ。私たちが思春期の男女ってこと、ちゃんとわかってる⁉」


 ノエルは何度も頷き、美月は苦笑。


「でも、どうしようもないなら……しばらくはいいわよ」

 そう答えるしかないよな。方針が決まれば、冨田たちの元に——あ。

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