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みらいひめ  作者: 日野
三章/阿部篇 Who done it?
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十一.心確かなるを選びて

3章の副題は「Who done it?」(犯人はどいつだ?)です。

 昼、教室にて。四人、思い思いに散って座る。古いクーラーの音、大きめ。


冨田「あー、面倒くせえ。帰ってアイス食いたいよな」(ふらふら歩く)

福岡「もう真面目にやってよ、チャラ田くん」(座りつつ怒る)

片瀬「そうよ。こういうのは協力するから楽しいんじゃない。いい加減にしないと殺害するわよ」(カッターを突き付ける)


相田「おいおい。もっと大人しくできねえのか。さっさと済ませてさっさと帰ろうぜ」

福岡「あ、あのさ。相田くんは相田くんで良くないと思うよ……」

片瀬「そうね。楽しむ気ゼロ。呆れちゃうわ。何が楽しくて生きてるのかしら。親に命返せば?」(カッターを向ける)

相田「ひどい言われようだな。俺はこういう騒がしい行事は嫌いなんだよ」(そっぽ向く)


冨田「俺は理解できんな。文化祭なんて学園生活の華じゃないか。ここで楽しまずにいつ楽しむんだ。アイって、本当に頭がおかしいんだな」(教壇の席に座る)

福岡「そそそ、そうだよ! 相田くんみたいに陰気で物くさで引き籠りだと、死人も同然だよ」(手元の針を止める)


相田「お前ら、絶対言い過ぎだろ」(ちょっとウンザリして言う)


 一同、笑う。


片瀬「あっはは、ごめんって。相田もちょっとは文化祭楽しみだよね」

相田「いや、全然全くそう思わない」(真顔)


冨田「嘘吐け、アイ。文化祭と言えば、仲間、絆、友情、恋。たくさん楽しみがあろうよ」

福岡「そうだよね。同じクラスの人と仲良くなるチャンスだし、他クラスとか校外の人とも関わる機会ができるもん」

相田「そういうのが嫌なんだが……」


片瀬「あ、わかっちゃった。そういうことか」(したたかな笑み)

福岡「どういうこと?」(服飾を再開する)

冨田「あっ、そっかー。学内ゴシップを趣味とする俺としたことが失念していたぜ」(笑み)


相田「何だ、お前ら。何で面白がってやがる」(訝る。スポドリを飲む)


冨田「お前が傷心のあまり忘れたくなっている。いや、その話題を避けているのは俺もわかる。ここは親友として、あえて今日は腫れ物に触れないでやろう」


片瀬「え、相園深雪にフラれた話じゃないの?」

相田「ごほ、ごっほ、ごほ」(むせる)


福岡「ああ、そういうこと」(得心して頷く)

冨田「言っちゃ駄目だろ」(教卓に体を預ける)

片瀬「え、そうなの? ごめん」(真剣に謝る)


相田「駄目ってか、相園は関係ないだろ」(キレる)

冨田「去年の文化祭じゃねえか。関係ないワケあるかよ」


福岡「チャラ田くん、仕事して」(紙とペンを指差す)

冨田「岡ちゃん、俺計算とかできないんだけどなあ……」(頭を掻く)


片瀬「え、アイちゃんとはもう仲良くないの?」

相田「お前ズケズケくるな。別に去年も今も大して仲良くないぞ」


冨田「やっぱりな。フラれた男の気持ちは、俺もよく——」

相田「違うって言ってんだ、アホ田!」(大声出す)


福岡「そうだよ。他人の失恋を責めたら可哀想だよ」

相田「違うんだよなあ……」(溜息)


 教室の扉、ドカンと開く。女子生徒が飛び込んでくる。


ミヨ「ちゃんチャラアイ片!」(元気いっぱいに)

相田「うるせえ。何だその略称は」(ウンザリする)

福岡「私の名前が入ってないよ! あ、ごめん。何でもない」


ミヨ「もう終わった? さっさと帰りましょうよ」

相田「いや、終わってない。そんなに急かすくらいならお前も手伝ってくれ」


ミヨ「嫌よ。他クラスの催し物なんて興味の欠片も無いわ。早くしてよね」

相田「そう言われてもなあ。あと一時間」


ミヨ「はあ? ふざけんじゃないわよ。私帰る」

相田「勝手にしろ」


 ミヨ、相田の前に進む。手の平を差し出す。


相田「何だこの手は?」

ミヨ「アイス買うの! お金ちょうだい」


相田「……」(見つめる)

ミヨ「……」(見つめ合う)


相田「やるよ。やるから帰れ!」(投げやりに)

ミヨ「ふん。ところで美月は?」

相田「今、生徒会室に行って許可証を提出してるよ。もうそろそろ帰って来る」

ミヨ「わかったわよ。もういいわ。じゃねー」


 ミヨ、教室を出て行く。福岡、冷房を気にして扉を閉める。


冨田「まあ、みよりんがいるんじゃあな。そりゃ目移りもする」(呆れ顔)

片瀬「あんた、本当に面食いね」(ニヤニヤする)

福岡「そ、そっか。みよりんがいるから……」(ニコニコする)


冨田「でも、竹本ちゃんもいるんだよ。これが」

相田「おい、黙れ。その話はもういいだろ」


片瀬「相田って、美月ちゃんと付き合ってるの?」

福岡「え、みよりんでしょ? 美月ちゃんは恋愛に疎そう」

冨田「俺は、何だかんだ言ってもアイちゃんだと思うな」


相田「お前ら、やめろ。俺も帰るぞ!」


 相田、席を立つ。皆、苦笑して作業に戻る。扉、再び開く。


美月「ただいま戻りました。無事届けられましたよ」

相田「おう美月。お帰り」

美月「はい、シュータさん。ところで皆さん。何やら楽しげですけどどうかされましたか?」


 美月、にこやかに相田の隣に座る。


冨田「実はな、シュータが去年——」

片瀬「いいの! アンタは黙って。何でもないのよ」(冨田にハサミを向けて制する)

福岡「そそそ、そうそう。文化祭どうしよっかなーって。ほら、ね?」


美月「シュータさんの話じゃないんですか? 皆さん、私に隠し事してますね」(相田の目をじっと覗く)


相田「いやいやまさかな。あれだよ、去年俺は文化祭実行委員でさ」(目を合わせられない)

美月「えっ、そうだったのですか」(びっくり)


福岡「ちょっと、それは……」(焦る)


相田「忙しかったから、今年はゆっくり楽しめそうだなって。美月、一緒に見て回ろうぜ」

美月「あ……ええ。楽しみましょうね」(人類史上最高得点の笑顔!)


片瀬「わあ」(呆れて)

冨田「アイ。お前、アイス奢れよ」(冷静に。心の奥に恨みを込めて)


相田「はいはい。もういいよ。自業自得だからな……」


 教室に弛緩した空気が流れる。全員、黙々と作業に取り組む。

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