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みらいひめ  作者: 日野
二章/庫持篇 アリス・イン・ワンダーランド
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九.言の葉を飾れる珠の枝

 明くる日の朝、事情を知ったミヨと対面しながら朝飯を食べる。ミヨはルリに対してカンカンに怒っていた。そりゃ怒る。そして朝食はまたコンビニ弁当。


 まさか過去に長居することになるとは思いもしなかった。元の時間の俺たちはどうなっているんだろうか。たぶん時間が止まっているのだろう。そうじゃないと、行方不明事件になってしまう。


「今日一日あるけど、それはもっちーの捜索に当てるしかないわね。そしてもっちーがどこにいるかを知るには、ルリを見つけないと」


 フレンチトーストを食べるミヨが言う。ルリは餌を撒けば寄って来そうではあるが、行動パターンが読めない。そもそもルリはどこにいるんだろう。滞在先があるだろうに。


「ええ。ですが、一日で突き止められるかどうか」

 美月の時間を「遡る」力が封印されているのが痛い。それでも今は手掛かりが無い状態だから、ルリを捜すしかない。ちなみに美月の朝ご飯は、おかか海苔弁当とわかめ味噌汁だ。


「ルリは、場所を移動する力を持っていないんだよな。それで昨晩はこのホテルにいた。まだ遠くに行ってないんじゃないか。昨日もテーマパークに潜んでいたんだ。ここら辺に拠点を置いているんだろ」


「そうっすね。付近をうろうろしている可能性はあるんじゃないですか。アリス先輩もいるなら匿う場所も用意しているでしょうし。そして明日には星陽高校に到着する必要があるから、遅くとも明日の午前中にはここを発つはずです。駅なんかで張っていれば、案外会えるかもしれないですね」


 ノエルはコロッケパンを食んでいる。こいつの言う通り、キーパーソンはルリだ。アリスは連絡が全く取れない状況で、軟禁されていると考えられる。だとしたら、今会えるのはルリしかいない。


 それに、ルリが昨日の夜、危険を冒してまで何をしに来たかわからないように、抜けたところがあるのは付け入る隙だと言える。正直、美月の敵がマヌケな使者を寄越してくれて助かったよ。


「ではどうしましょう。思い切って捜索するしかないようですが」

 おっしゃる通り(一回は使ってみたかった敬語)。で、SF研のキャップはどう思う?


「決めたわ。午前中はホテルの徒歩圏内で捜す。お昼は一度集まって、午後の対策を練りましょう。責任は私が持つわ」


 ルリは既に移動している可能性があるけどな。まだこっちにいるなら、ヒントが見つかるかもしれぬ。


「腹ごしらえが終わったら繰り出すわよ。あ、シュータ。その卵、半分ちょうだい」

 俺はおでんを食べていた。元気出してくれるなら、丸々やるよ。


「うう。寒いですね」


 美月は手をさすりながら愚痴をこぼした。今はルリの捜索中でホテルから徒歩20分の所を歩いている。ホテルや企業オフィスなどのビル街であるが、もう少し歩けば再開発された公園のある港湾だ。普段ならお洒落な街を美月と歩く最高のシチュエーションになる。でも、生憎と芳しくない情勢なのでね。かなり追い込まれている。


「美月、ポケットに手を入れたらどう?」


 美月はトレンチコートを羽織っている。美月が来たのは春だから、この冬物のコートの所有者はミヨなんだろうな。ミヨでも似合うと思うぜ。ミヨといえば、チェックアウト後のクジ引きで、ペアを作ったときに俺と再び別れたことを怒っていた。俺と美月、ミヨとノエル組で活動中だ。


「ポケットに手を入れるのはお行儀が悪いとみよりんさんから聞いたのですが……」

「いや大丈夫だって」


 美月が手を入れていても可愛いだけだ。どうしても手を出したいなら手を繋ぐか?


「アリスさん以外じゃ、シュータさんは手を繋がないんじゃないのですか」

 美月は少し棘のある言い方をする。それはゴメンって。美月は俺を真似るようにポケットに手を入れた。


「あーほら、海が見えてきたぞ」


 角を曲がると、海や大きな鉄橋、クルーザーが視界に映った。手前には木や芝生が植えられた公園がある。家族連れやカップルがたくさんいた。


「あれがうみですか」

「美月、そのイントネーションだと、生みの親の『うみ』になってる」

「ウニと同じですか。海、海」


 美月は楽しそうに暗唱していた。近付いて行くと凍えるような浜風が吹き付けてくる。冬と海は相性が良くない気がする。


「綺麗ですね。惑星の表面のおよそ七割を覆う巨大な水源なんて、信じられません」

 本物の海も見たこと無いのか。そりゃまあ何とも筆舌に尽くしがたい気分だ。

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