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みらいひめ  作者: 日野
二章/庫持篇 アリス・イン・ワンダーランド
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八.わびつる心地笑い栄えて(2)

「ちゃんと捜したんでしょうね。どこ行っちゃったのよ」


 俺はミヨたちと合流してアリスを捜していた。四人で固まって行動している。アリスはトイレに行って帰らないままだ。スマホにも連絡がつかないし、外に出たというわけでもなさそうだ。十時には閉園時間になる。もう時間も無い。


「いないっすね。これだけ人がいると目立たないというのもありますが」


 ノエルの能力は場所を選択して移動するものだ。人捜しには向かない。


「美月、時間を『遡って』俺がアリスと会うことはできるんだよな」

 美月は不安で顔をいっぱいにしていた。


「そうですね。三十分前に『遡れ』ばアリスさんと会えますかね」


 お土産を買う暇も無かったな。ここはお土産などを売るストアが立ち並んでいる。ずっと遊び通すんじゃなくて、こういう所でゆったり時間を送っても良かったんじゃないか。ミヨは、スタミナが有り余っていたから知らないかもしれないが、メリハリとわびさびが大事なんだぜ。美月にもぬいぐるみを買ってあげたかった……って、美月遅くない? 「瞬き」待ちの繋ぎだったんだが。


「どうしたんすか、美月先輩。何かありましたか?」とノエル。


「へ、変なんです! 確定ボタンを押しているのに時間が『遡ら』ないんです。エラーが出てしまいます」


 美月がボタンを押しているのは知らなかった。視界に現れる画面にボタンが出るのだろう。だが、時間を「遡れ」ないのは、どういうことだ?


「あれれー? おっかしいぞー」


 ミヨがフザけたのかと思ったが、違う。背後には警備員服の女性がいた。本物の警備員はそんなに胸元開けねえよ。誰だ!


「え、もう忘れちゃったんですか? シュータくんってシツレイね」

 その女はビックリする。いや、見たことはあるんだ。思い出せない。


「ルリ! アンタがどうしてここにいるの」

 ミヨが俺の前に立って両腕を広げる。コイツ、ルリか! 道理で見たことある顔だと。


「えへへ。警備員コスプレです。逮捕しちゃうゾ」

 ルリはおもちゃの手錠をクルクル回す。警備員は逮捕する職業じゃない。


「シュータさん。もしかしてルリさんのことを忘れていたんですか?」

「顔を見てもピンと来なかった。それに今日、何回か会っていたような、いないような。あれ?」


 何だかちょっと前にもこういう女性と出くわしていた気がする。だが、いつどこで?


「竹本整形美月、うるさいですね」

「私にミドルネームはありません! あと整形のイメージを植え付けるのはやめてください。風評です。整形はしたことありませんので!」


 なんでルリは美月を整形ってことにしたいんだろうな。反則級の可愛さだとは思うが。


「それで、どうして出て来たのよ。まさか……」


「みよりん怖ーい。そんな反抗的な目をしないで。その目は、夜中にシュータくんが〈ピー〉して来て、〈ピー〉になって、〈ピー〉するときに、どうしようもなく〈ピー〉ってなって、悔しがりながらも〈ピー〉しちゃう、切なげな〈ピー〉を〈ピー〉しながら〈ピー〉しているときにしなさいよ」


 〈ピー〉は俺の判断で自粛したものだ。ミヨは顔を真っ赤にして硬直している。美月はというと、ポカンとしていた。


「……ルリさん。アリスさんを失踪させたのは貴方で間違いありませんね?」


「えー、何のことですかー? 全然身に覚えがありませーん」

 ルリは顎に指を当てながら首を傾げる。白々しい真似をするな。


「アリス先輩の身柄を押さえるメリットは何です? 人質を取るのが目的っすか?」


「あ、ノエルくん。帽子似合ってるじゃん。メリットならあるよ。アリスちゃんをアナタたちが守りそうになったときに困るから、身柄を押さえておけばいいの。賢いでしょ。ルリって偏差値高ーい。サイコショックゾンビだ」


 才色兼備って言いたいのかな。知らんけど。


「でもお前はもう一人のアリス、つまりこっちの時代のアリスの方が誘拐しやすかっただろう。俺たちはそっちを見張っていなかったんだし。どっちを殺してもいいならお前はわざわざこっちを選ぶ必要は無いだろ?」


「それはそうだけど。向こうはいつでもゲットできるもん。こっちは超能力を使ってあなたたちを助けるから邪魔なんです。大丈夫よ、十日が終わったら返すから」


 二月十日が終わったら意味ないんだよ。ルリのヤツめ、嫌いだ。


「もっちーは私の親友なの。変なことしたら絶対許さないわよ」

「変なことって言うと、具体的には?」


 やめろ。どうせルリはロクなことは言わない。


「はいはい。ですがどうせアリスちゃんを返しても、殺しちゃうんですよね?」

「…………」


 今の方針でいくとそうなる。だが、まだ決定したわけじゃない。より良い案が出る可能性もある。それに残りの時間はなるべく一緒に過ごしたい。


「美月、時間を『遡って』くれ。それなら何とかなる」

「や、やっています。ですが、できません!」


 なぜなんだ。アリスの事故のときは「遡る」ことはできていたのに。


「できません! なんてだらしないですね。いくら美人でもそんな体たらくじゃ、盗れる男も盗れないですよ。見かけ倒しで中身の無い女なんて、男に逃げられるだけなんですから。整形して外見だけ可愛くなっていっても無駄なんですよー」


「シュータさん、私の中で何かが沸き立つ音が聞こえるのですが……」


 美月、それは殺意ってヤツだぜ。ルリはどうしても美月を愚弄したいらしいな。


「ルリさんのせいっすか。時間の移動を封じたのは」

 ノエルの質問に、ルリはドヤ顔をした。


「実はそうです。ちょこまかと『遡ら』れると面倒なので、停止させてもらいました。世界構成のセキュリティーが、ガバガバでユルユルのザルですね。すぐ入り込んじゃいましたよ」


 伊部はもっとしっかり仕事しろ、とは言えないよな。連続で「戻った」のだから。


「ルリさんは単独ではなく、どこかのバックアップを受けていますね」

 美月が悔しそうに睨む。ルリは嬉しそうだ。


「そうなの。言ったでしょ? 組織の命令でここに来てるって。ルリたちは正義の使徒なの」

 パターン青ってわけだ。……何でもない。


「ですから隙があれば付け込んじゃいます。デキる女は確実に相手を追い詰めます。既に美月のスリーサイズもこっちは掴んでいますからネ。もう丸裸だと思いなさい」


 アリスの件とは別途でそれを教えてくれ。小遣いは少しあるぞ。じゃない、アリスを返せって話だ。時間を「遡る」ことができないならルリと交渉するしかない。


「それはムリです。もう閉園ですし、今日はここまででーす! バイちゃ」

 ルリは走るでもなく、すたすたと歩き出した。逃げる気あるのか。


「みよりんもノエルくんも美月も、追い掛けて来ないでね」とルリ。


 そう言って一人一人と目を合わせていった。いや、俺たちはそんな言葉で逃がすほど素直じゃないぜ。


「あれ?」


 ミヨは追い掛けようとしない。ただルリが歩いて行くのを眺めているだけである。それはノエルや美月も同様。ちょっと待て、追い掛けろよ。


「なぜか、そういう気が失せてしまって。行かなくていいような、面倒なような」

 いつも忠誠なノエルがそんなこと言うなんて。俺が追い掛けないと——


「あたっ!」


 転んでしまった。その間にもルリは遠ざかって行く。そして立てない。立ち上がる気が起きないと言うべきか。ルリが雑踏に紛れて見えなくなるまで、俺はそうしていた。


「んもう! 逃げられちゃったじゃない」

 ミヨは地団太を踏んだ。さっきのは何だったんだ? まさか超能力?


「私もわかりません。ですが、ルリさんは未来の人間なので超能力ではなく、精神的な暗示か薬ではないでしょうか」


 俺が石島を大人しくさせるのに、目を五秒間見て投薬した。そういう仕組みなのだろうか。ルリは俺たちと目を合わせていた。


「今日は時間切れよ。ホテルに戻って一旦頭を冷やしましょう」

投稿日の8月31日は初音ミクの誕生日。全然カンケーないですけど小さい頃から大ファンなんです!

Orangestarさんの『快晴』(←ミクver.もあるんです)が聴きたくなる日。。。

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