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みらいひめ  作者: 日野
二章/庫持篇 アリス・イン・ワンダーランド
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七.わが袂今日乾ければ(4)

 翌朝は俺とノエルと美月の三人で、ホテル内の売店で朝食を買って来た。女子部屋に集まって朝食を取ることにしている。部屋を開けるとミヨが鏡台で髪を解かしていて、アリスはベッドの上で化粧をしていた。


「アリスって化粧とかするんだ」

 デリカシーが無い気もするが、そんなことを言って俺はテーブルに袋を置いた。椅子に座る。アリスはこっちを向いて、


「薄ーくね。私は美月ちゃんや実代みたいに素材が良くないからさ、お化粧しないとシュータくんやノエルくんと顔合わせられないよ」


「嘘よ。もっちーだって美しいじゃないの!」


 ミヨはアリスに向かって飛び付き、アリスをベッド上で組み伏せていた。アリスは「放してえ!」とジタバタしているが、ミヨはくすぐったり、すり寄ったりしていて、願いは聞き届けられそうにない。見る人によっちゃ眼福だろうが、俺は目の前の美月姫と一緒に飯を食う方が断然光栄である。


 弁当を美月とノエルに配って食べ始める。こうしていると皆で旅行に来ている気分だ。修学旅行も今年の夏にあるし、楽しみだな。ぜひ美月と同じ行動班になろう。命を賭してでも争奪戦を勝ち抜いてやる。そういえばアリスも同じクラスだったか。じゃあアリスとも思い出が作れそうだ。ミヨは別のクラスだからな。


「シュータさん。今日は何をしますか?」

 おお、ぼうっとしていた。今日の予定?


「どうしようか。部屋で対策を練っていくしかないのかな」


「話し合いも必要ですが、もし良ければテーマパークのお店でぬいぐるみを買いましょう」

「ぬいぐるみが欲しいんだ? いいよ。一緒に選ぼう」


「ええ。大きい物が欲しくて」


 美月は朝から綺麗なはにかみを見せる。ぬいぐるみが好きなんて可愛い趣味だね。


「ちょっと。私のご飯は無いの? お腹空いちゃった」

 いつの間にかミヨが俺たちを見下ろしていた。俺と美月のほんわか空間に入って来るな。


「これだよ。足りなかったらツナマヨとかシャケおむすびがある」

「ありがと。美月、そっちに詰めて」


 ミヨは美月の椅子に強引に座った。二人で座っているからケツが半分しか乗っていない。


「いいよ。ミヨはこっち座れ」

 俺は自分の椅子をミヨに譲って、美月が寝ていたと思われるベッドの方に移った。ノエルが座っている場所の隣だ。座ると美月の温もりをほんのり感じる。温熱便座とは違って緊張するな。


「って、アリスは生きてるか?」


 振り返ると、アリスは後ろのベッドでトランス状態(誇張)になり天井を見上げていた。大方、ミヨにくすぐり倒されて疲れ切ったんだろう。朝から可哀想なことだ。


「ほら、アリス。起きろ」

 俺は手を差し伸べ、アリスを引っ張り起こした。朝飯は食ったほうがいいぞ。


「ふう。そうするー。シュータくん持って来て」

「しょうがねーな。座ってて」

 俺が弁当を運んでやるとミヨが話し出した。俺はそのままアリスの隣に座る。


「ねえ、皆。今日はそこのテーマパークに行かない? どうせ今日はすること無いし」


 ミヨが割り箸で指す窓の外には、テーマパークの建物の一部が見える。いや、俺たちは遊びに来たんじゃないんだぞ。作戦や方針を決めないと……とは言っても缶詰になってりゃ出て来るもんでもないか。


「ノエルはどう思う? まだ考えが煮詰まっていないし、俺はいいと思うぜ」

「俺は任せますよ。先輩たちに付いて行きます」


 ノエルは振り向いて言った。お前は自分の意見が無いのか。と見せかけておいて、実はきちんと様子を窺っているんだよな。コイツはある意味信用できるし、信用ならない。あざとい後輩め。


「美月やアリスだって行けたらいいなって昨日言ってたし、決まりね! 皆で遊びましょう」


 ミヨは朝からテンションが高い。死んだと思っていた親友と一緒に遊べるのが嬉しいのかもしれない。アリスがいることにも慣れてきたようだ。一日くらい息抜きしてもいいか。待ち時間などには頭を動かさないといけなそうだがな。


「朝ごはん食べたら集合! 私たちで乗り込むわよ」

 ミヨは本気で解決したいという意思があるのか、キャプテン的に盛り上げてくれているのか。まあ、付いて行くぜ。

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