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みらいひめ  作者: 日野
序章/竹取・石作篇 らいと版
12/738

 一.黄金ある竹を見つくる(12)らいと

 俺は一つ一つ思い出した。どこからを最初と捉えればいいのだろうか。

「とりあえず神社にしませんか?」

 ならこういうことになるな。


・俺と竹本さんが神社にいる

・片瀬が桜並木に来る

・桜がライトアップされる

・福岡が事故に遭う

・冨田が駆け付ける。その他学校関係者が来る

・警察や救急車が到着する

・冨田と話す。竹本さんが連絡先を交換する。


「俺たちが到着する時刻は順不同だから、書かなかったけど、こんな感じか」

「あのー、片瀬さんの話や、連絡先を交換する部分は必要なのですか?」

 竹本が紙を覗き込んだ。ふわっとお花のようないい香りがする。気が散るから近付かないで欲しいナ。


「何が重要なのかまだ判断できないでしょ。全ての可能性を考えてだな」

 じいっと竹本が紙を見つめていた。穴の空くほどとはまさにこのこと。


「これは結果論ですが、」

 竹本が切り出した。


「警察や救急車両が集まっています。このことによって、他の場所の警察捜査や救命行為に支障が出てしまって、世界に影響してしまうのではないでしょうか」

 キリッと少しだけドヤ顔をしている。楽しそうだ。こういう論理的な思考をするのが好きなのかもしれない。


「どうだろうな。仮に将来、総理大臣にでもなる人が、パトカーや救急車一台の騒ぎで、間違って亡くなったとしよう。それってやっぱり歴史を変えるくらい大きな出来事になるの?」


「――なんとも言えませんが、可能性は、薄いかと」

 だよな。こんな小さな町で起こる事件や事故なんぞ、世界に対して何の関係かこれ有らんやだ。


「ただ竹本さんにしては、機転の利くアイデアだと思うよ」

 竹本は「なんですかそれ、シンラツです」と不満そうに俺を揺する。や、やめてっていきなり。急なボディータッチなんか心臓に悪い。


「でも確かに、今の日本の総理大臣が一人変わったくらいでは、歴史に何の変革ももたらさないというのは一理あります。相田さんの説は正しい」

 そ、そうなんだ。竹本さんも無意識に辛辣じゃない?


「あらまあ、そうでしたか。失礼でしたか。すみませんっ」

 竹本は架空の総理大臣に頭を下げていた。可愛らしいところがある。ところで、やはり俺が思うに、俺と竹本さんの操作ミスのせいで世界がおかしな方向に行ってしまったという説の方を推したい。


「そうですね。世界史的なものというより、現実世界との齟齬を私たちが発生させてしまっているのだと思います」

 そうと決まれば、おかしな点が確実に一つあるよな。毎回「冨田と竹本さんが連絡先を交換している」ことだ。毎度あんな画を見せられる俺の気持ちにもなってくれ。


「――え? 目星がついていたのに私を泳がせたんですか? ひどいです」

 怒るなよ。俺だって確証があったわけじゃないんだからさ。


「でも、ずっと変だと思ってたんだ。なんで竹本さんのスマホには冨田の連絡先があって、冨田のスマホには無かったんだ?」

 色んな意味でずっと気になっていたんだ。冨田が竹本と連絡先を交換したがることも、二人の端末のデータが辻褄の合わない状態だったことも。竹本は記憶をたどって、それから「なるほど」と呟いた。わかったのか?


「簡単なことです。どうして今まで無視していたのでしょう」

 竹本はにっこりと口角を上げた。何やら掴めたみたいだな。

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