一.黄金ある竹を見つくる らいと
第1章のライト版です。要点をかいつまんで簡略化しました
内容はほぼ同じですが、順序の入れ違いや削減で1万2千字ほど短いです
※1章は読破済みという方は読まなくて大丈夫です。
話数が増えてしまってすみません(;・∀・)
――「竹本美月です。去年まで海外の学校に通っていました。一日でも早く馴染めるよう頑張りますので三組の皆さん、よろしくお願いします」――
ふと、そんな科白が頭をよぎった。強烈なフラッシュバックのような映像だ。すらりとした出で立ちに、健康的な血色のいい白い肌、黄金色に輝く金の長髪、ピカピカの我が星陽高校のブレザーを身にまとった女子生徒が自己紹介する映像だ。黒板の前で、青く澄んだ瞳をぱっちりと開き、ほんのり上気した頬でにっこりと微笑む。
俺は一目で恋に落ちるほどの衝撃を受ける。「たけもと/みつき」。それが彼女の名前だ。
……夢でも見たのかな?
二学年に進級し、退屈に教室の窓際であくびをかみ殺していた俺は、「海外から来た転入生を紹介する」という新担任の言葉にびっくりして目を見張った。校庭に生えるつまらない桜から、教室の入り口に目を転じる。
扉が開く。
――そこには、先ほど浮かんだ映像と同じ少女が立っていた。
正夢? 予知夢? 寝ていたわけじゃないから、なんだ? 神託、未来予知、えっと千里眼……なんでもいいが、竹本はチェックのスカートをはためかせて教室に入る。担任と代わって黒板の前に立ち、俺たち二年六組の生徒を見渡した。あまりの美貌に男子が圧倒され、女子が唖然としている。
「竹本美月です。去年まで海外の中学校に通っていました。一日でも早く馴染めるよう頑張りますので六組の皆さん、よろしくお願いします」
俺が思い浮べたのとほとんど全く同じ科白だ。違っているところもあるけど、当然ここは二年六組なので、「六組の皆さん」と言うのは不思議じゃない。
竹本は黒板を振り返り、丁寧な可愛い文字で「竹本美月」と漢字で書いた。俺は脳内メモに漢字を記録する。名前の発音も同じだった。やっぱり、予知だ。それからゆっくりとお辞儀をした。クラスは拍手喝采。そりゃ、こんな美人が来たら、歓迎するっきゃないが。
竹本は元々あてがわれていた教卓の前の席に座らされた。俺は窓際の一番前なので、隣の女子を挟んで一個飛びに座っている。もっとよく見たいが、
「きもい」
隣に座る片瀬に白眼視された。ぐ、見えねえ。
担任は連絡事項を伝えてから、始業式が始まるまで自己紹介をしようと言い出した。だろうね。毎年の恒例イベント。俺の大嫌いなやつ。
「じゃあ出席番号1だから、窓際の……相田から」
俺は内心で盛大に溜息を吐いて、立ち上がる。毎年毎年トップバッター。わかるか、この苦しみ。しかし、立ち上がることで一瞬だけ竹本と目が合った。俺が息を詰まらせて目を逸らすと、竹本は小首を傾げて微笑んだ。
「えっと、相田周太郎。元三組。帰宅部。……一年間、よろしくお願いします」
俺は内心でさっきの三倍の溜息を吐いて座り込む。前髪を押さえて恥ずかしさと情けなさを噛み締める。竹本が拍手してくれただけでも幸せだと思おう。ま、こんな灰色の人生だった。美月と出逢うまでは。