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ダービーと年増の女飼育員 その他・・・・・・

 ー星座の構図(ワンインチパンチ#3)ー


 突き出した東の岬にある灯台の黄色い明かりが周期的に回り始めた。長い光の棒は反時計回りに海から浜へ向かってきて背後の町明かりに一瞬吸収されると空へ消えるが、もちろん何のことはない。長く漂っていた、諦めかけの命に神の存在を示し希望を与えるような夜もある感情を持たない人工的な光は再び東の岬から無音でやってくるのだった・・・・・・ビーチに残る人はグッと減り新たに降りてきた数少ない人の全てが若い恋人同士だ・・・・・・ぼくに集めさせたシー・グラスを手の中でジャラジャラする彼女は、暗がりに目を細め立ったりしゃがんだり忙しい・・・・・・下絵を描かず編み上げるつもりなの。どこか不敵に宣言した星座の構図に耽っているのだった・・・・・・



 ーダービーと年増の女飼育員ー


 ご用達牧場に不吉な馬が生まれたという噂はすぐに広まりました。そこで王様はひそひそする国中へ自らの声で否定したのです。これからも永遠に何事は起きない旨、建国史上初めて国民へ嘘をついたというわけです。


 王様が我々に嘘なんかつくはずがない!!


 子供は確かにときどき親へ嘘をつくことはある。なんせ奴らは子供なんだからな。でも親が子に嘘をついたことがあるか? 女房に尻尾を掴まれたとき嘘をつく夫がいるのか? マジなんか怪しいぞ、と思わざるを得ない行動をとる女房が、いいえ絶対に違うわ、と断言したら、それでも信じられないような夫がいるのだろうか? 

 国民は各々胸に手を当てました。(わたし)以外の奴らはきっと誰一人嘘なんかつかない。つきっこない。ならばわたし(俺)もこっそり頷いて、声を大に「声明」を肯定するしかないじゃない!! そんなわけで、全国民は自分の嘘を匿うためにも、王様の「嘘」を信じました・・・・・・


 羽根の生えた馬が一才になると、黒い身体と共に成長した白い翼で羽撃を繰り返し始め、どうやらそのうち空を飛べるようになるんだ、と気が付いたようです。馬の存在を知る数少ない一人である飼育係りの、独り身で年増の女はそのことを若い男の執事に報告しました。

 「・・・・・・なので空を飛ぶ練習をさせてあげたいのですが?」

 聞く耳を持っているはずの王様は、しかし頷きませんでした。羽根の生えた馬のブームはとっくに下火となっていたとはいえ、王様はまだ「何か」に怯え警戒していたのです。そして自分の「嘘」にも・・・・・・


 「ならばこう言ってみてください執事さん。あの子を空に帰してあげることが出来れば、全てが元通りになりませんか、と」


 三才になった「ダービー」の身体はますます野生たる隆起を現しました。鋼のような筋肉を纏い、長さも幅も厚みも増した翼はみるからに強靭な、そしてごく自然な身体の部位になっています。

 馬小屋の壁や屋根を吹き飛ばしてしまうほどの羽撃を繰り返し、いななきはどこか狼のような時がありました。焦燥的な孤独感が月夜に響くのでした。しかしそれは王様の「嘘」にとって多大な懸念となり「ダービー」は毎夜、猿ぐつわをはめさせられてしまいました。


 「ダービー」と年増の女飼育員は、おそらく初めから会話が成立していたのかもしれません。猿ぐつわをするようになってから、苛立ちが劇的に増えた「ダービー」でしたが、飼育員にはなだめることが可能でしたし、血走る目で睨む馬に恐れなど持たず愛を持って叱ることも出来ました。

 たとえ王様に嘘をついてでも必ずお前をお空に帰してあげる、飼育員は約束していたのです。繰り返す怒りを何かの方法で都度消化する馬は、長いまつ毛で黒い眼玉を濡らしては彼女との約束を信じました。

 「もう彼を空に帰さなければいけません。彼は空に向けて狼を呼んでいます。空にいる沢山の狼をここへ呼ぼうとしているんです。私たちの国を襲わせるつもりなんです。一刻でも早くに彼を将来の物語の中に返さなければ、この土地が後の世界で本当にあった物語の舞台になってしまいます。狼の物語の舞台になってしまいますよ」




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