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鼠よ、この空の果てまで飛んでいけ

作者: 翔という者
掲載日:2021/10/17

 草原、森林、悠久の緑が広がる大地にて。


 一匹の(ネズミ)が、空を見上げていた。


 この青い空を飛んでみたい。

 高く。どこまでも、この空を突き抜けるように高く。


 鼠は、そう考えていた。


 だが、どれだけ頑張ろうとも、鼠は飛べない。

 背中に翼が生えているわけでもなし。


 結局、鼠はこの後、伴侶を得て、子宝に恵まれ。

 そして、天寿を全うして息絶えた。


 それから時は流れ。

 この惑星に、巨大な隕石が落下した。


 多くの生命が死に絶えた。

 海の生き物も。陸の生き物も。空の生き物も。


 しかし。

 あの鼠の子孫たちは、生き延びた。


 また長い時が流れ。

 鼠の子孫たちは、進化していった。


 進化していった鼠の子孫たちは、やがて二足で大地を歩くようになる。


 鼠の子孫たちは、他の生命にはない深い知恵を身に着けた。

 その知恵で道具を生み出し、火を生み出し、そして利用した。

 力は他の生命たちより弱かったが、その知恵で自然社会を生き抜いた。


 鼠の子孫たちは、この星で最も繁栄する生命となっていく。



 そして、鼠の子孫たちもまた、空を見上げて、思った。


 この青い空を飛んでみたい。

 高く。どこまでも、この空を突き抜けるように高く。



 鼠の子孫たちは、ますます知恵を付けていった。

 やがて鼠の子孫たちは、言葉を扱うようになる。

 やがて鼠の子孫たちは、国を(おこ)すようになる。


 鼠の子孫たちは、ますます知恵を付けていった。

 化学、工学、医学、薬学、物理学。

 あらゆる学問を確立していった。


 とある鼠の子孫の兄弟が、とうとう空を飛べる乗り物を発明した。

 その乗り物は、飛行機と名付けられた。


 空を飛ぶ技術は、やがて戦争にも使われるようになった。


 悲しいかな、闘争は生命の限界を引き上げる。

 空を飛ぶ技術も、戦争の中でさらに磨かれていった。

 核兵器という、この星を滅ぼしうる武器まで製造された。


 やがて戦争も終わり、一応の平和が訪れる。


 そして、来たるべき1961年。


 鼠の子孫の一人が、遂にこの星を飛び出し、宇宙(ソラ)へと到達した。

 鼠の子孫たちは、自分たちが住むこの星が青いことを知った。


 1969年。

 鼠の子孫の二人が、月に到達した。


 この星の全ての生命たちが。

 ただ見上げることしかできなかった、(まばゆ)い黄金色の天体に。

 小さくも、偉大なる一歩を残していった。



 やがて、また長い時が流れていく。


 およそ一億年後。

 膨張した太陽が、この青い星を飲み込んでしまうだろう。


 しかし鼠の子孫たちは、開発した宇宙船でこの星を飛び立つ。

 新たな故郷を探しに、星々が(またた)く漆黒の海を。

 どこまでも、どこまでも。


 ああ、我らの祖たる鼠よ。

 貴方の子孫は、貴方に代わって、貴方の夢を果たしたぞ。


 鼠の子孫たちは飛んでいく。

 高く。どこまでも、この宇宙(ソラ)を突き抜けるように高く。



 鼠の子孫たちよ。

 この宇宙(ソラ)の果てまで、飛んでいけ。

※この作品は、仙道アリマサ様が主催なされる「仙道企画その2」参加作品です。


自分が今回の曲を拝聴させていただかせて感じたのは、宇宙でした。

どこまでも無限に広がっていく、漆黒の海。


そして同時に、空に向かってどこまでも高く飛んでいくようなイメージ、あるいは雄大な自然を神の視点で眺めるようなイメージも想起いたしました。


これらのイメージを自分なりにまぜまぜしてみた結果、誕生したのがこの作品です。


星の歴史と力強さ。

そして宇宙(ソラ)の無限大な高さを、少しでも演出できていれば幸いです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 血に宿った記憶に突き動かされて行動するって、面白いですね。果てが見つかるまで跳躍をやめなさそうな子孫さんたちにエールを送りたいです。
[良い点] 企画より拝読いたしました。 宇宙のイメージとのことでしたが、私は生命のイメージも感じ取れましたね。 色としては緑でしょうか。 皆様、それぞれ色んなインスピレーションで書かれてて新鮮ですね…
[一言] 切ないですね。 空を飛ぶ道具が戦争に使われて、夢が現実になっても幸せになれるとは限らないという。 最後は無限の可能性を感じさせたまま終わるのも良かったです。 果たして人類はどこまで飛んで行け…
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