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鼠よ、この空の果てまで飛んでいけ

作者: 翔という者

 草原、森林、悠久の緑が広がる大地にて。


 一匹の(ネズミ)が、空を見上げていた。


 この青い空を飛んでみたい。

 高く。どこまでも、この空を突き抜けるように高く。


 鼠は、そう考えていた。


 だが、どれだけ頑張ろうとも、鼠は飛べない。

 背中に翼が生えているわけでもなし。


 結局、鼠はこの後、伴侶を得て、子宝に恵まれ。

 そして、天寿を全うして息絶えた。


 それから時は流れ。

 この惑星に、巨大な隕石が落下した。


 多くの生命が死に絶えた。

 海の生き物も。陸の生き物も。空の生き物も。


 しかし。

 あの鼠の子孫たちは、生き延びた。


 また長い時が流れ。

 鼠の子孫たちは、進化していった。


 進化していった鼠の子孫たちは、やがて二足で大地を歩くようになる。


 鼠の子孫たちは、他の生命にはない深い知恵を身に着けた。

 その知恵で道具を生み出し、火を生み出し、そして利用した。

 力は他の生命たちより弱かったが、その知恵で自然社会を生き抜いた。


 鼠の子孫たちは、この星で最も繁栄する生命となっていく。



 そして、鼠の子孫たちもまた、空を見上げて、思った。


 この青い空を飛んでみたい。

 高く。どこまでも、この空を突き抜けるように高く。



 鼠の子孫たちは、ますます知恵を付けていった。

 やがて鼠の子孫たちは、言葉を扱うようになる。

 やがて鼠の子孫たちは、国を(おこ)すようになる。


 鼠の子孫たちは、ますます知恵を付けていった。

 化学、工学、医学、薬学、物理学。

 あらゆる学問を確立していった。


 とある鼠の子孫の兄弟が、とうとう空を飛べる乗り物を発明した。

 その乗り物は、飛行機と名付けられた。


 空を飛ぶ技術は、やがて戦争にも使われるようになった。


 悲しいかな、闘争は生命の限界を引き上げる。

 空を飛ぶ技術も、戦争の中でさらに磨かれていった。

 核兵器という、この星を滅ぼしうる武器まで製造された。


 やがて戦争も終わり、一応の平和が訪れる。


 そして、来たるべき1961年。


 鼠の子孫の一人が、遂にこの星を飛び出し、宇宙(ソラ)へと到達した。

 鼠の子孫たちは、自分たちが住むこの星が青いことを知った。


 1969年。

 鼠の子孫の二人が、月に到達した。


 この星の全ての生命たちが。

 ただ見上げることしかできなかった、(まばゆ)い黄金色の天体に。

 小さくも、偉大なる一歩を残していった。



 やがて、また長い時が流れていく。


 およそ一億年後。

 膨張した太陽が、この青い星を飲み込んでしまうだろう。


 しかし鼠の子孫たちは、開発した宇宙船でこの星を飛び立つ。

 新たな故郷を探しに、星々が(またた)く漆黒の海を。

 どこまでも、どこまでも。


 ああ、我らの祖たる鼠よ。

 貴方の子孫は、貴方に代わって、貴方の夢を果たしたぞ。


 鼠の子孫たちは飛んでいく。

 高く。どこまでも、この宇宙(ソラ)を突き抜けるように高く。



 鼠の子孫たちよ。

 この宇宙(ソラ)の果てまで、飛んでいけ。

※この作品は、仙道アリマサ様が主催なされる「仙道企画その2」参加作品です。


自分が今回の曲を拝聴させていただかせて感じたのは、宇宙でした。

どこまでも無限に広がっていく、漆黒の海。


そして同時に、空に向かってどこまでも高く飛んでいくようなイメージ、あるいは雄大な自然を神の視点で眺めるようなイメージも想起いたしました。


これらのイメージを自分なりにまぜまぜしてみた結果、誕生したのがこの作品です。


星の歴史と力強さ。

そして宇宙(ソラ)の無限大な高さを、少しでも演出できていれば幸いです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 血に宿った記憶に突き動かされて行動するって、面白いですね。果てが見つかるまで跳躍をやめなさそうな子孫さんたちにエールを送りたいです。
[良い点] 企画より拝読いたしました。 宇宙のイメージとのことでしたが、私は生命のイメージも感じ取れましたね。 色としては緑でしょうか。 皆様、それぞれ色んなインスピレーションで書かれてて新鮮ですね…
[一言] 切ないですね。 空を飛ぶ道具が戦争に使われて、夢が現実になっても幸せになれるとは限らないという。 最後は無限の可能性を感じさせたまま終わるのも良かったです。 果たして人類はどこまで飛んで行け…
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