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一歩目

短剣からダガーに変更しました。


「昇級試験……ですか?」


 『選定の儀式』を受けた翌日、俺は昇級試験を受けにギルドに来ていた。


 受付嬢のミーナさんにその意思を伝える。


「グレイシア大洞窟から帰って何か心境の変化でもありましたか?」


 今まで昇級試験を受けて来なかったのに急に受けると言い出したのだ。そう思うのは自然だろう。


「はい、俺も頑張らなきゃなと思ったんです」


 そう答えるとミーナさんは優しく微笑みながら応援の言葉を送ってくれる。


「そうですか、それは良かったです。フェイトさんの戦績は受験を受けるのに十分なものです。ギルドはフェイトさんの昇級試験の実施を承認します。頑張って下さい」


 承認の手続きとともに試験の内容が発表される。そしてミーナさんは試験に向かう俺に手を振りながら見送ってくれた。


 ◇◇◇◇


 試験の内容はEランクダンジョン、ハルアン森林に生える薬草を採取してくることだった。


 ハルアン森林はギルドからも比較的近くにあり、新人冒険者が最初に挑む登竜門のようなダンジョンだ。


「挑むまでに随分とかかっちまったな」


 冒険者になって3年、冒険者になった当時は14歳だったが今や17歳になり、普通ならDランク、優秀なやつならCランクくらいなっていてもおかしくないくらいの年月が経っている。


「そう考えるとやっぱりあいつらは別格なんだよなぁ」


 大抵の冒険者はCランクでその冒険者人生を終える。なぜならCランクとBランクの間には圧倒的な壁が存在しているからだ。


 その理由としてはCランクは中級ダンジョン、Bランクからは上級ダンジョンを中心に活動することになる。中級と上級では魔獣のレベルも跳ね上がるため、大抵の冒険者はそこで挫折してしまうのだ。


 にも関わらず、あいつらは俺と同じ17歳にして既にBランクを超えAランク冒険者として活動している。本当に凄いことだ。


 まぁ、だからと言って諦めたりしないけどな。


「その一歩目を踏み出すとしますかね」


 ダンジョンに入り、まず初めにいつものを発動する。


「空間把握」


 以前のスキルである空間把握を発動する。スキルの変化に伴い消えたかと思っていたが、昨日色々試している中で空間把握も使えることに気づいた。


 おそらく空間干渉の一部に統合される形になったんだと思う。だからスキルが変化したというよりも進化したと表現した方が的確だな。


 半径50メートルに設定して把握する。すると、前方に魔獣を確認することに成功する。


 ゴブリンか……それも5体もいる。


 いつもの俺なら逃げるか、バラけるまで待つ場面だな。


 だが今は違うぞ。


 俺は新調したダガーを握る。以前使っていたダガーはグレイシアとの戦いで破壊されてしまったからな、装備を一新するためにコツコツ貯めた持ち金を全て使った。このダガーはそのうちの一つだ。


空間固定(チェーン・ロック)


 昨日色々試す中で生み出した技、空間を標的に合わせて固定するという技だ。


 ゴブリンの体を空間ごと固定させる。体が動かなくなったゴブリン達は突然の事に驚き動揺する。俺はその一瞬の隙にゴブリンの首を狙う。


 ザシュッ、ザシュッ……


 5体のゴブリンをまとめて倒す。一瞬の隙を狙うのはいつもやっている事だ。ゆえにスムーズに倒すことに成功した。


「よし、上手くいったな」


 倒したゴブリンから魔石を回収しながら、俺は頬を緩ませた。


 これまでにない手応えを実感する。今までは相手に隙が出来るまで待つか、アイテムに頼る戦い方しか出来なかったのに俺もちゃんと戦えるんだと実戦の中で確認することが出来たんだ。


 興奮しないはずがないじゃないか。


「おっと、油断はいけないな。マスターに怒られちまう」


 緩みかけた気を改めて引き締める。ここはダンジョンだ、何が起こるかわからない。油断は大敵だ。


「先へ進もう」


 魔石を回収し終え、先へ進む。


 空間把握によって行く先々は把握出来ているため、魔獣と遭遇するのを事前に知ることが出来る。


 そのため魔獣と遭遇する前にある程度の準備をすることが出来る。これは大きなアドバンテージだ。


 行く先にいる魔獣を奇襲する形で倒して行く。奇襲と空間固定(チェーン・ロック)の相性はとても良く、危なげなく魔獣を倒す事が出来た。


 ゴブリン7体、コボルド4体、トングガエル5匹、ジャンプラビット2匹と多くの魔獣を倒し、魔石を回収した。


 よしよし、順調だな。空間把握も以前よりも長時間発動することが出来ている。さらに頑張ればもっと広範囲の把握も出来る。


 空間干渉の方は使い方によって消耗が変わってくる。より強く空間に干渉しようとすると多くの魔力を要するし、干渉する距離が離れれば離れるほど多くの魔力と高い集中力を要するため今の俺では使いこなすことはできない。


 だから近距離で短時間の単純な干渉を心がける必要がある。


「あっ、あった。目的の薬草」


 森林の奥へと進み続け、目的の薬草を発見する。


 案外簡単に見つかったな。これで試験クリアだ。


「ガルルル……」


「って、そんな簡単には行かないよな」


 空間把握で分かってはいたが、やはり薬草を守っていたのか。


 マッドベアー……その大きな体と威圧からこのダンジョンで最も強い魔獣であると理解した。

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