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【空間干渉】

「……空間干渉?」


 聞き覚えの無いスキル名だ。空間把握と名前は似ているが、


「そう、君に与えられたスキルは【空間干渉】。空間に存在するありとあらゆるものに干渉し、歪めることの出来る力さ」


 『選定の儀式』を終えたマルナさんが俺のスキルの詳細を語る。歪めるという単語を聞いてあの時の空間の歪みを思い出す。


「しかしこんなことが起こりうるとはね。長い間『選定の儀式』を執り行ってきたけど、こんなことは初めてだ。本当にスキルが変化しているとは……」


「ああ、そうだな。俺もギルドマスターになって大分経つが見たことが無いぜ」


 マルナさんだけでなくエルドさんも俺の身に起こったスキルの変化に驚いているようだ。


 まぁ当然の反応だよな、スキルが変化するなんて前代未聞の珍事だもんな。


「実際起こっているんだからしょうが無いけどな」


 それにしても空間干渉か……スキルが変化したと言っても空間把握とスキル名は大差ない感じだな。どうせならノエルの【神剣の理】みたいな明らかに強そうなスキル名が良かった。


「そうだ、せっかくスキル名も判明したことだしちょっとスキルを使ってみろよ」


 そう言ってエルドさんは訓練用の巻藁を持ってきた。


「これに向けてスキルを発動してみろ、どれほどのものかお前も試してみたいだろう?」


 その意見には賛成だ。俺も新たなスキルがどのようなものか試してみたかった。以前に一度発動したときはスキル名もまだ無い状態だったしな。


 巻藁に向けて右手を伸ばして構える。意識を巻藁に集中し、スキルを発動する。


「空間干渉……発動」


 体内に巡る魔力が右手から放たれ、標的の巻藁に集中しているのが分かる。なるほど、どうやら空間干渉には魔力が消費されるようだ。空間把握には魔力の消費は不要だったが、以前グレッドが結界の発動に魔力が必要だと言っていた気がするから、スキルによっては魔力を消費するものがあるということか。


 さあっ、新たなスキルは一体どれほどのものなのか見せてもらおう。


 ザザッ……


 巻藁が少し揺れる、そして静寂が訪れた。


「よし、早くスキルを発動させてみろよフェイト!!」


「いや、発動させたんだけど……」


「発動させたって巻藁はあの通り運んだときと何も変わらない傷一つ無いキレイな状態を保っているぞ?」


 あ、あれ? 俺ちゃんとスキル発動させたよな? 何も起きないんだけど……


「も、もう一回やってみろ」


「あ、ああ」


 もう一度スキルを発動するために集中する。今回はさっきよりも魔力を使って、思いっきりやってみる。


 ザザザッ……


「うーん、ちょっと大きく揺れたな」


「ああ、そうだな」


 スキルを受けた巻藁はさっきよりも大きく揺れたが、依然として綺麗な状態を保っている。


「これがお前のスキルなのか? 何て言うか、ショボいな」


 何でだ、グレイシアとの戦いでは儀式によって形を与えられていないにも関わらず、あの強力なブレスごと空間を歪めたというのに儀式を終え名を得たというのにその能力は向上するどころか劣化しているぞ。


「ふむふむ……ちょっといいですか?」


 想定外の自体に慌てていた俺やエルドさんと比べ、冷静に状況を見ていたマルナさんが口を開く。


「これは私の予想なのですが……もしかしたらスキルを発動する際にどのように空間に干渉するか、明確なイメージが必要なのかも知れません」


「イメージ?」


「はい、フェイトくんのスキルである【空間干渉】にはどのように干渉するかをイメージして行わないといけないのでは無いでしょうか? 一口に干渉と言っても色々でしょうし、その解釈はその人次第です。だから発動には明確なイメージが必要なのでは無いでしょうか?」


 確かにさっきは漠然とスキルを発動していた。だから何も起こらなかったのか? でも以前に一度スキルが発動したときは明確なイメージが無かったにもかかわらず空間を歪めて見せたが、それは咄嗟にブレスを防ぐイメージをしたということなのか? その結果、空間が歪みブレスを曲げたと。


 詳しいことは分からないが、やってみる価値を十分ありそうだ。


「明確なイメージか……」


 空間にどのように干渉するか、じゃあ巻藁ごと空間を捻るイメージでやってみよう。


「……空間干渉」


 魔力で空間を捻るイメージでスキルを発動する。すると、


 空間は巻藁を巻き込みながら捻れていく。バキッバキッと音を立てながら巻藁は絞られた雑巾のようになってしまった。


「おお、すっげー」


「これは……予想以上だな」


「ええ、とてつもない力なんじゃないですか?」


 無惨な姿になった巻藁を見て、このスキルの威力が如実に伝わってくる。


「この力があれば」


 想像以上の威力に俺は心を弾ませていた。

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