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14/24

約束

一日遅れの更新となってしまいました。ごめんなさい。

それとタイトルを少し変更させていただきました。

「パーティーを組まないってどういうことだよ!!」


 エルドさんに俺がそう告げてからしばらくしてグレッドとシノンを連れたノエルが戻ってきた。


 そしてエルドさんからその話を聞かされてこの反応という訳だ。


「そのままの意味だ。お前たちとはパーティを組まない」


 怒り顔で詰め寄ってくるグレッドにそうキッパリと言う。


「お前洞窟ではパーティ組みたいって言ってたじゃねーかよ!! やっとお前と一緒に冒険出来ると思って楽しみにしてたのに!!」


「うん、私たちの心を弄んだの?」


「やっぱり……私たちのことが嫌いになった?」


 グレッドは怒りながら睨みつけ、シノンは静かに睨みつけ、ノエルは涙目になりながら睨みつける。


 おっと、お前らちょっと怖いぞ。そんなに睨まないでくれ。


「いや、ずっとって訳じゃないぞ。今はまだって話だ」


「「「今は?」」」


 俺はすぐに足りなかった言葉を付け足す。それに三人が同時に首を傾げた。


「はぁー、なんで理解出来ないみたいな反応なんだよ」


 こいつら無自覚だったのか? 今パーティを組んだ所で結局前と何も変わらない。俺はまだ冒険者として何も実績を上げていない。なのにこいつらとパーティを組んでしまったら、また余計な劣等感に苛まれることになると俺は確信していた。


「俺にはまだお前たちの隣に立つ資格はない。そんな状態でパーティを組んでも誰も納得しないし、何より自分自身が一番納得出来ない。お前らだって四人のうち、一人だけ実力が劣っているパーティを見たら同じ風に思うだろ?」


「た、確かにそうだな。俺もそう思う」


 ノエルとシノンも同様に頷く。


「だからまだお前たちと一緒のパーティには入れない。でも必ず追いついてみせる、自分の力でランクを上げて必ず追いついて、すぐにセンターギルドに行ってみせる。だからお前らも先に王都のセンターギルドに行って待っていてくれ」


 強い意志を込めて三人の目を見る。俺が本気であることを余すことなく伝えるために。


「お前の言い分は分かったよ、しっかりと筋を通すってのが大切なことも分かる。でも、今まで俺たちはこの時を散々待ってたんだぜ? やっとパーティが組めると思ったのにまだ待ち続けろって言うのか?」


 不貞腐れながらグレッドが言う。まあ、確かに待たせてしまっていると言う事は申し訳なく思うが、


「それに関してはすまないと思っている。だけど、もう少し待っていて欲しい。俺も冒険者だ、自分の力でその立場を手に入れたい。与えられた立場なんてゴメンなんだ」



「うん……フェイトくんらしいと思うよ、でも私たちはセンターギルドには行けないよ」


「ブラックウルフを倒したのは私たちじゃ無いから、か?」


 先に俺がそう言うと、シノンは静かに頷いた。


「確かにブラックウルフを倒したのはあの竜だな。圧倒的な力を持った白い竜、俺はあいつを前にして何も出来ずにボコボコにされた。そんな俺と比べたら、シノンたちはあの竜と戦えていたんだからブラックウルフ討伐に相当するだけの力は示したんじゃ無いのか?」


 ブラックウルフはAランク魔獣の中でも極めて危険度が高い魔獣だ。そしてそのブラックウルフを野良犬と言い、あっさり殺した月下竜グレイシアはAランクの枠を大きく逸脱した存在と言えるだろう。


 グレイシアはノエルたちのことを才能がある、かつての強者たちにも引けを取らないと評した。これからの努力次第では自分の命にすら手をかけることができるかもしれないとも言っていた。ならば、ブラックウルフ討伐よりもはっきりとノエルたちの実力は証明されたと言えるだろう。だって竜がそれを認めているのだから。


「お前たちがAランクに上がり、センターギルドに行く資格は十分すぎるくらいなんじゃないか? センターギルドも三人を受け入れる準備は整っているんですよね?」


 エルドさんの話では今回の試験を達成した暁には、センターギルドでの冒険者活動を全面的にバックアップするとの約束だったはずだ。


「ああ、センターギルドはノエルたちのグレイシア大洞窟の攻略を受けて、契約の履行を約束してくれた。だからあとはノエルたちがどうするかだけだ」


「だそうだぞ、こんなチャンスがまたいつ訪れるか分かったもんじゃない。逃す手はないんじゃないか?」


 ノエルたちだってそれくらい分かっているだろう。それでも俺とパーティを組むということを選ぼうとしてくれた。それは凄く嬉しいし、俺だってそうしたい気持ちが無いと言えば嘘になる。


 でもそれじゃあ今までと何も変わらない。三人に後ろめたさを感じていた今までと。自信を持って三人とパーティを組む事は出来ない。


「……本当にすぐに来てくれる?」


 ここまで会話を静かに聞いていたノエルが口を開く。


「ああ、すぐに追いつく、いや……追い越すよ」


「ふふっ……そっか。じゃあ私たちも頑張らないとね、フェイトに追い越されないように」


 涙目なのは変わらないまま、ノエルはそう言う。下を向かずに前を向いて、一心に俺の目を見ている。


「分かったよ、待ってるから絶対に迎えに来てね」


 ノエルのその言葉はきっと、色々な感情を押し殺して発しているんだと分かった。だって言葉とは裏腹に表情は今にも泣き崩れそうなものだったんだから。


 だから、俺がノエルにかける言葉は一つだけだと分かった。


「ああ、約束するよ。絶対に迎えに行くから」


 全身全霊で約束することが、俺の今出来る最大の答えだ。

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