子供が生まれない世界
世界大戦後、人類の増加が目に余る。
資源の枯渇は秒読み段階に入り、環境汚染にも歯止めがかからない。
増えすぎた人口を養うほど地球は豊かではなく、居住地を求め、宇宙や海洋への進出すら真面目に議論される有様である。
確かに、行楽地への道は常に渋滞、高校や大学受験でも競争率異様に高い。
インフレのお陰で物価は年々向上し、おかげさまで求人率は高いが、長時間労働は当たり前だし、高い金利で買えるのは猫の額ほどの家だ。
というわけで、世界中の指導者が集まって人類を減らすことにした。
戦争案も出たが、戦後に人口爆発が起こるため却下。
代わりに新たに生まれてくる人間を抑制する案が選択された。
中国などの独裁国家では、一人っ子政策という手を使えるが、民主主義国家ではこうはいかない。
よって、子供を産むのは損、結婚は負債という風潮、また女性の社会進出・・・などによって婚姻率の低下と出生率の低下を狙った。
そしてデフレを起こし、貯蓄するほど得とさせ、家族よりも個人のために貯金を続けた老人ほど金持ちになるように仕向けた。
それに加えて、年金の支給である。
年金が支給されない時代であれば、子供が親の面倒を見るのが当然であったが、年金さえもらえれば、その必要はない。
こうして、人口増加に歯止めがかかり、計画通り人口減少に転じた。
そして、また世界会議が開かれた。
このままだと人口が減りすぎてしまうので、そろそろ人口を増やすこととなった。
中国では一人っ子政策から二人までOKとなった。
そしてある国では、若年人口の減少による年金崩壊が叫ばれるようになった・・・
---数年後---
建設現場やコンビニで働いているのは老人ばかりだ。
本来なら家族や子供のために使うはずであった金を、老後のために貯金に回したが、インフレによって年々物価が上昇し、貯金が計画よりも速いペースで減っている。
年金も支給されないため、この年でも働かざる得ないのだ。
一方で子供がいる世帯は生活に余裕がある。
子供への医療、教育費は保証があるどころか、収入によっては無料だ。
おまけに手当まで支給されている。
両親だけでなく、祖父母に渡って支給されているので---国はそのように言ってはいないが---子や孫がいる世帯だけに支給される年金みたいなものだ。
この政策によって出生率は年々増加傾向にあるが、子育て世帯の増加によって、色々と問題も起こっている。
この問題が深刻化する前に、人口調整の協議が行われるだろう。
ベビーブームのニュースが流れる中、子供をたくさん産み、育てたの老人が、自身の孫たち語りかけた。
「必要以上に子供を授からないようにな」




