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語彙力最強少女の英雄譚  作者: 春夏冬 秋
第三章《童話教典》編
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79.《童の伽噺》の計画

「ここが例の鉱山ですか……」



 私たちは、目的地である閉山済みの鉱山へと到着。

 しかし、どこを見てもそれらしき石室は見当たらない。場所を間違えた? いや、そんなはずは……

 私は確認のために、先生に問うてみる。



「石室へはどのように?」

「知りません」

「え?」

「ですから、知りませんって」



 別に聞こえてないわけではないんですけど。

 知らないのにここじゃないか、なんて言ったんですか。適当ですか? どちらにせよ、ここは怪しさ満点なので一度調べてはおきたいですが。

 しかしどうしたものか。

 そんな私の考えを読むように、アヴァリティアが仮説を述べてくる。



「あのさ、物語では洞穴に閉じ込めて終わりでしょ? それなら、石室なんて見えないんじゃない? たとえば瓦礫で塞がれてるとかさ」

 なるほど、石室が隠れている可能性、ですか。確かにその考えには思い至りませんでした。

「ですがどう探したものでしょう?」

「《一網打尽》で吹っ飛ばしたら?」

「鉱山だけでなく、中にいる子供たちも吹っ飛びますよ」



 私たちは鉱山の解体を頼まれているとかではないんですよ?



「どうする? 騎士団ギルド所属っぽい人はあちこちにいたけど、協力してもらう?」



 そう。鉱山に来る道中で見かけた、騎士団ギルド所属を示すバッジを胸に付けた人たち。

 しかし別の依頼にでも向かっているのか、それとも知らないのか。子供たちを捜している様子は見受けられなかった。

 あれだけの規模の巨木が生えていて、今回の事件を知らないということはありえない。知らないなんてこと、ちょっと世間は許してくれません。

 どうしたものか考えを巡らせていると、頭上から声がかけられる。



「あはは、遅かったねぇ~。セ・リ・ア♡」

「《童の伽噺(フェアリーテール)》……! アイリスと子供たちを返しなさい!」

「それはできないけどぉ~、王女様なら返してもいいかな。もう用済みで処理に困ってたから」



 くるりとうしろを向き、手をパンパンと二回鳴らすと、縄で縛られた状態のアイリスと、それを持つ《アンデルセン》。

 もう一方では、武器としている銃を構える《イソップ》が。その銃口はアイリスに向けられている。



「なにをしているのです。早くこちらに渡してください」

「いいけどぉ~、ヘンなことしないでよ? その子の頭は《イソップ》が狙ってるんだから」

「……わかっています」



 返事をすると、《アンデルセン》はゴミでもてるように、アイリスを雑にこちらへ投げる。

 あわててお姫様だっこの形で受け止める。

 帰ろうときびすを返しかけた三人へ声をかける。まだ聞いていませんよ。



「あなたたちの目的はなんです? 子供たちを誘拐して身代金……なんてことではないでしょう?」

「そーだねぇ~。あたしたちの目的は、手駒を増やすこと。ハーメルンの笛で洗脳して、《神の機械仕掛けデウス・エクス・マキナ》に、ひいては《童の伽噺(フェアリーテール)》に忠誠を誓わせる」

「忠誠心だけでは手駒になり得ませんよ」

「まあまあ、最後まで聞きなよ。みんな今は六歳ってところかな? それから育てるんだよ、九年間みっちりと」



 六歳から九年間となると……一五歳ですか。この数字になんの意味が? 別にあと数年使っても問題はないのでは。

 一五歳であることといえば──学院への入学、ですかね。その他には知識が浅いのもありますが、まったく思いつかない。



「一五歳である意味はないはずですが?」

「やっぱ全知の力を持ってても、頭がいいんじゃないんだねぇ~」

「あなたの頭の悪そうな話し方の人に言われるのは、心底腹が立ちますね。おとなしく教えたらどうですか」

「そうだねぇ~、今回は特別に教えてあげるよ」

「えっ、こいつらに教えちゃうの? ヤバくない?」

「計画阻止の危険性あり。自分は危険と判断」



 私に計画を話すのを止めようとする《アンデルセン》と《イソップ》。ちょっとー、余計なことしないでよー。今ゲームがいいとこだから!

 しかし計画を話すことをそれほど危惧していないような様子の《グリム》。



「まあ大丈夫だよ~。この計画は阻止できないんだからさ」



 それで、と前置きをして、計画について語り始める。



「一五歳、人によっては一六歳になると、学院に入るよね? 《言霊》を持つ人が多く集まる《ワーディリア学院》に」

「まさか入学させてわいわいお友だちと仲よし生活……なんてことはないですよね?」

「そうだよ」

「やはりそうですよね」

「違うよ、そっちじゃなくて、わいわい仲よしさせるんだよ~」



 一体なんのために……? それならば誘拐なんてする必要がない。

 もしや、戦闘訓練なりをさせるだけさせて、学院に通えるようにするだけとかでしょうか。なわけありませんよね。



「学院に通わせてどうするつもりですか?」

「さらに人を集めるんだよ」

「は? ですから、学院には人が集まりますが」

「そうじゃなくて、《言霊》を持った人たちをさらに集めて戦力強化をするんだよ」

「──まさか、生徒たちを勧誘でもするつもりですか?」

「ピンポーン! やっと正解だよ~!」



 ……あまり正解したくなかったですね。

 なるほど《言霊》を持つ人々の集まる《ワーディリア学院》。そこで根こそぎ生徒を《神の機械仕掛けデウス・エクス・マキナ》へと勧誘。強力な組織へと再構成するわけですか。

 ふふっ、それならば、私のすることは一つ。



「そんな計画、今ここで潰します。──ここからは、私の発言の時(ターン)間です」

「待ちなさい、セリア・リーフ!」

「あんたじゃ勝てない、やめなよ!」

「離してください! アイリスを危険な目に遭わせ、学院まで陥れようとしているんです!」

「そんなに戦いたいなら、この子たちに相手してもらおうかな」



 この子たちとは一体……。まさか子供たちを使うつもりで……!?

 いろいろと考えを巡らせていると、《グリム》はパチンと指を鳴らす。

 背後に現れたのは、二つの人影。私はその姿に目を見開く。先生たちも同じ。

 その人物の瞳は紅玉のように赤く、夜のように闇を宿している。

 しかし驚くのはそんなところではない。他に見るべき特徴が、短くウェーブする空色の髪。



「なっ……! なぜアイリスが二人も!」

「クローン技術とは違うようですね。複製体では元の性格と変わらないですから」

「てことは、なにかしらで……召喚ってところかな」



 召喚かどうかはともかく、なぜその複製の対象にアイリスを選んだのか。

 どこまでコピーされるか、自由に身体能力を変えられるかはわかりませんが、お世辞にもいいとは言えない。せっかくなら自分たちで作るほうがいいに決まっている。



「これはね、クローンでも召喚でもなくて、ただの姉妹だよ♪」

「おや、アイリス・フェシリアは一人っ子と聞いていますが」

「この子たちはね、『3匹の子ブタ』の力でできた姉妹だから、本当のじゃないよ。あたしたちに忠実なの。オリジナル以外は」

「ならそのオリジナルも洗脳すればよかったんじゃないの?」

「さすがは《強欲》だね~。でも、そんな弱っちぃ子いらないよ。ゴミはちゃんとポイしなきゃね」



 この言葉を聞いて、さすがに私は耐えられなかった。

 胸の底から湧き上がるのは、ただの怒りとは違う。グツグツと煮えたぎるマグマのように。

 このごうに、堪忍袋は耐えられなかったようだ。



「ふざ……けるな……」

「セリア・リーフ、どうしました?」

「ふざけるな……! この子を、アイリスをゴミ呼ばわりするな! 貴様だけは許さない。徹底的に叩き潰し、殺し尽くし、滅ぼし消し去る。

 ────死して償え、ちりあくたどもが」

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