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語彙力最強少女の英雄譚  作者: 春夏冬 秋
第三章《童話教典》編
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71.人心を操る笛の音

「先生、行きましょう。操られていた子供たちが心配です」

「あなた、身体は大丈夫なんですか? 半日ちょっと寝ていましたが」

「はい。もう全然問題ないですよ」



 腕をぐるぐる回し、異常がないことを見せる。

 正直言うとすごい我慢してます。腕めっちゃ痛い。腕どころか身体中痛い。痛い痛い病とかになってるかもしれない。



「結局、あの巨木を登る算段は立ったんですか?」

「そりゃあもちろん──」

「さすがですね。頭の回転の早さは尊敬します」

「思いついてませんがなにか?」

「は? それならさっきの感じはなんですか」

「あっははは、普通に考えて無理じゃないですか。《東奔西走》でも数十キロが限界ですよ」



 どこでも行けるピンクのドアとか、空を飛べる竹トンボとかがあれば別ですけど。

 巨木を切り倒すと、おそらく物語が終わるために、天空の城が消失してしまえば子供たちがどうなるかはわからない。

 巨木へ向かうために走りながらいろいろと考えていると、私はあることに気がつく。



「先生……私、とんでもないことに気づいてしまいました」

「なにか重要なことでも……!?」

「今日の夏祭りどうしましょう! 夏休み最後なのに! アイリスの浴衣姿がぁ!」

「来年にしなさい。アイリス・フェシリアもあんな状態ですし」



 うおぉぉぉ! この夏最後の思い出がー!

 先生があきれた顔してるんですけど。だって、うちのアイドル。いや、ヒロイン。いや、天使……女神の浴衣姿ですよ!?  見たいですよね? 見たいよなぁ?



「まあそれはいいですけど……宿題は終わってますよね?」

「シュク、ダイ……? そんなもの出されてませんよ?」

「出てるじゃないですか。各教科からプリントが数枚ずつ」

「だってぇ~、わたしぃ~、事件に巻き込まれて忙しかったからぁ~」



 どうです、このウザい話し方戦法。さすがの先生もあきらめるでしょう。



「確かに一理ありますね」

「そうですよね! 難しいですもんね!」

「やらなくていいとは、ひと言も言ってませんが?」

「なんですか、鬼、悪魔、胸無し!」

「セリア・リーフ、宿題を二倍に……っと」

「いやホントにごめんなさい。二倍はやめてください。この問題を解決しますから! なんとかして提出しますから!」



 怖いことするなぁ……なんて人だ! 宿題がある上に、夏祭りに行けないとか、今日は一体なんて日だ! もしかして世界の終わり……? ドラゲナイ?



「冗談ですから。巨木までの距離は結構あります、急ぎましょう」

「ええ、わかっていま……なんです?」



 私たちの周りを、人を見つけたゾンビのごとく囲む子供たち。ハーメルンの笛で操られているのでしょう。さすがに子供を押し退けて通るのは気が引けますが、今は仕方ありません。

 強行突破しようとすると、わらわらと群がってくる。



「ちょっ、なんですか……! 動けない……」

「足止めしに来たのでしょうね。ここで時間稼ぎされては堪りません。ですが……子供の腕力とは思えません」

「笛によるものでしょうか。しかしどのように……」



 私たちはあえなく地面に押し倒され、腕を脚を押さえられる。

 は? 少年、今、私の胸を触りましたね? どういう料簡だ貴様ァァァ! 万死に値する……万死に値するゥ! 隣にいた少女なら許す。というか逆に私が触りたい。



「いいねいいね! 無様な姿だね!」

「《アンデルセン》……、それに《イソップ》も」

「あれ、セリアは殺したはずなのに生きてる? てことは……もう一度、殺せる? アハハハハハハ! ねえ、もう一度殺してもいい? いいよね?」



 チッ……ここまでですか。

 私は死なないので、先生の死を覚悟したとき。



「またキミたちか……。ボクを動かした罪、重いよ?」

「ワタシもひさしぶりに身体を動かしたい気分だからちょうどよかったわ」



 そこに現れたのは、インヴィディアとルクスリアだった。ルクスリア……あなた、最近出番ありませんでしたよね。だからですか?



「いやぁ、ピグリティアに呼ばれて巨木まで行ったのにいないからさ。それで探してみたらこんなことになってるし」

「アヴァリティア、助かりました」

「いいってことよ。さぁ子供たち、こっちだよ!」

「邪魔しやがって……、ダメ組織のクセに! 取っ捕まえてよ!」



 二人の声であちらへ意識が集中することで、私たちの拘束が緩くなる。ここがチャンス!



「行きますよ、先生!」

「は、はい……!」

「待て! 行かせて堪るか!」

「二回目も自分がこの手で! アハハハ!」



 私たちを追うために走り出す二人。それにしても、《イソップ》は脚の治りが早すぎる。回復に使える時間は私と同じはずなのに。



「キミたちの相手は──」

「──ワタシたちよ」



 そんな二人の前に立ちはだかるのは、インヴィディアとルクスリア。

 みんなからの手を借りた。そうなると私は、確実に助け出さなければならない。借りた手を無駄にしないために。



「どう登ったものでしょう……」

「とりあえず試してみますか。──《地水火風》・風!」



 先生を抱え、風に乗り上へと向かう。

 しかし、目的地がまったく見えてこない。ぐっ……そろそろ……


「体力のげん、かい……!」

「ちょっと、セリア・リーフ!? 落ちて──」

「うぎゃあぁぁ! いでぇぇぇ! 身体が、美少女セリアちゃんの身体がぁぁ!」



 派手に背中から落下し、背中は当然のこと、腰や手足と身体全体を地面に叩きつけられる。骨や筋肉がきしむ感覚。

 身体の欠損はないものの、感覚の話となるとまた別です。



「大丈夫ですか?」

「全然大丈夫じゃないです……。めっさ痛い」

「やはりあの高さは無理ですかね」

「え、もうちょっと心配してくれるものだと思ってました」



 思ってるより大丈夫だからいいけどね! 泣いてなんかないよ!

 はぁ~あ、こんな高さ普通に考えて無理ですよ。なんとか体力を増やすことができればいいんですけどね。



「今から体力を増やすために、ランニング行ってきます」

「今からですか!? いやいや、そんなことしてたら間に合いませんよ!」

「間に合うか間に合わないかじゃない、間に合わせるんだ」

「意気込みとかではなく、時間的に不可能ということであってですね。可能性があるなら、私も勧めてましたけども」



 あきらめたらそこで試合終了ですよ。えっ、試合時間がもうない……? それなら仕方ないですね、あきらめますか。人間、あきらめも肝心ってね!

 元がもやしだからなぁ……《言霊》の長時間使用や大量使用はできないのがネック。

《全知全能》なんて大層な能力を持っていても、宝の持ち腐れですね。



「では、《東奔西走》でも使ってみますか?」

「それは無理ですね」

「やはり距離があるから……」

「いえ、今《地水火風》をほぼフルに使って私の体力がないので、ちょっとした《言霊》も使えません」



 落下時の《空前絶後》の使用でも体力を使ったのでもう無理。私ゎ……、もうダメ、死んじゃうょ……

 やっぱりあのとき途中でやめておくべきでしたね。体力のご利用は計画的に!

 簡単に言えば、マラソンでスタートダッシュ決める、どこかの大サーカスの団長みたいなことをしてしまったわけですが。

 くっ、言ってるそばから……



「そろそろ立っているのも限界に……」

「本当に無茶をしすぎです! このままでは死んでしまいます! 少しあの影で休みましょう」

「は、はい……」



 先生の肩を借り、建物の影まで移動する。

 八月終わりのこくしょの中での行動だったため、より早く体力を消費していたのでしょう。日影で休むことで気が楽になった。ですが。



「私がこうして休んでいる間にも事は進んでいる。早く行かないと……」

「待ちなさい。あなたが倒れては、助けられる人も助けられません。休むことも助ける順序の一つです。この間に策でも練ればいいでしょう」

「そう、ですね……。今は休むことにします」

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