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語彙力最強少女の英雄譚  作者: 春夏冬 秋
二章・後日談
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開幕! 美少女だらけの戦い

「えぇ……私とイラですか? 心配しかないんですけど……」

「あんた失礼にもほどがあるわよ?」



 ドジっ子イラちゃんとチームとか負けフラグ立ちまくってますよ。展開がメニエール……じゃなかった、目に見えるようです。

 ほら、想像してみてください……ホワンホワン。



「サーブのときに空振ったり、スパイクのときに空振って顔にベシーン! って展開になりますよ。絶対」

「そんな言い切っちゃう? てか、アタシ空振りすぎじゃない?」

「そうそう、まるでイラの人生みたいにってね!」

「「あはははは!」」

「あんた一回死んどく?」



 イラがキッとこちらをめつけ、いつもの幼声からは想像もできないドスの効いた声を出す。

 ヒィッ! 今の一緒に笑ったのはなんだったんですか? 私は……あなたと仲よくなれたと思ったのに……!

 あっ、もしかして友人間では殺し合いが普通……? なぁ~んだ、そういうじゃれ合いなんですね。



「ちょっと待って、本当にアタシの人生空振ってる? そんなことないわよね? アリシア、ベル」

「えっ、あー……ハイ、ソウデスネ」

『イラさんならイケますよ、顔ベシーン!』

「このっ……、あんたら見ておきなさいよ……! アタシの華麗なボールさばきを!」



 こうして、美少女だらけのビーチバレー大会が開催された──



「それで? ルールとかはどうするの?」



 ──と言うとでも思ったかぁ!! とでも言わんばかりに話しかけてくるイラ。二つ名を《独白の破壊者モノローグ・ブレイカー》とかにすることをおすすめします。



「イラさぁ……、今いい感じに始められそうだったんですけど」

「いやいや、アタシがコケにされて始まろうとしてたでしょ。これがいい感じとか、あんた性格悪いわよ」

「いえ、いい感じのモノローグが流れてですね……」

「モノローグ? さっきからなにを言ってるの?」



 もしやさっきのって、私にしか聞こえていないのでは。

 幻聴ですか? もしや危ないおクスリでも飲んでしまったんじゃ……

 はっ、梅雨のときのあれは、もしや現実……? ふっ、終わったぜ。私逮捕されちゃいますわ。

 あれって夢じゃなかったんですか? 夢と現実の区別がつかなくなってきたら終わりだと思います。



「まあいいわ、結局ルールは?」

「二一点先取の三セットでいかがですか? バレーと同じルールですし」

「へぇ、そうなんですね。知りませんでした」



 アイリスがキョトン顔で問うてくる。この顔の写真撮りたい……!

 王女様はバレーをやらないんですか? 水泳はやるのに。あっ、技能が必要ないから? そっすか。了解でーす。

 そして、本当の本当に美少女だらけのビーチバレー大会が開催された──……されたよね?

 


     ◇


 

 先攻と後攻を決めるために、お互いのチームの代表がじゃんけんをする。あちらからはアイリスが出、こちらからは、「アタシに任せなさい!」と意気込んだイラが。



「「先攻後攻じゃんけんポン!」」

「えーっと……、アイリスがパーで、イラが……グー」



 あんさん任せなさい言うたやん。あっさり負けてて草、超えて草原、超えて森。



「うっわ、イラ、じゃんけん弱っ! あれだけキメ顔で任せなさいって言ってたのに……」

「う、うるさいわね! 今回はたまたまよ……」

「じゃんけんの勝ちすらも空振る女、イラさん」



 この子、たまになかなか心に来ること言いますよね。ビックリしちゃうわ。



『さすがの空振りっぷりです。マジリスペクトです!』

「アリシア、あんたね……。それにベル、あんたはどこでそんな言葉を覚えてきたのよ」

『グーラさんが言ってました』

「あの女……! ヘンな言葉教えてくれたわね」



 グーラが、というよりも、そもそも《七色の大罪(モルトリア)》がヘンな人ばかりじゃないですか。ベルに悪い影響が出ないか心配ですよ。

 そんなことになったら怖いので、私がいろいろと教えてあげましょう……エッヘヘヘ。



「じゃあいきますよー!」



 先攻であるアイリスチームから、アイリスが手を挙げ振り開始の声をかけてくる。やだ……わき見えてるよ脇。普段は袖で隠れて見えませんが……よっしゃ、ラッキー!



「せーの、はいっ」

「はいっ、セリア!」

「任せてください、イラの死は無駄にしません!」

「まだ死んでないわよ!?」



 渾身の力を込めてスパイク! ボールが砂浜へと一直線に向かい、点取得を確信したと同時、横から現れた影が。



「ベル……!? あなたそんなに運動神経よかったんですか!?」

「次はわたしです!」



 ベルから上げられたトスを受け取り、ボールへと向けて手を打ちつける。勢いよく飛んできたボールは、私の真横を掠めていく。



「イラ! お願いします!」

「ええ、どんと来なさ──べはっ!」



 予測していたボールの飛んでくる位置とはまったく異なる、イラの顔へと飛んでいく。

 彼女からしても予想外だったようで、頬を押さえ涙目になりながら、「なんで……? ボールはアタシに恨みでもあるの……?」とか呟いている。なんだか可哀想になってきましたよ。



「おのれアリシア……! ユルサナイ……」

「えっ、わたしですか!? わたしあんまり悪くないような……」



 怒りからか口調がおかしくなっているイラ。森で出てきそう。それか、霊的なものに取り憑かれたんですかね? あとで除霊でも行きましょうか。



「うるさいうるさい! 次こそは点を取る!」

「じゃ、じゃあいきますよー。はいっ、ベルさん!」



 アイリスのかけ声に合わせて、跳び上がるベル。

 その華奢な身体からは考えられないような強烈なスパイクが、まるでミサイルのようにこちらへ向かってくる。

 次こそはと意気込んでいたイラ。直接スパイクをしようとしてか、高く跳び上がる。



「イラ、それでは遅い──」



 ボールを返そうと振り上げられた手は、明らかにボールが通り過ぎたあとに挙げられており、イラの手の甲に当たって私のほうへ飛んでくる。



「げふっ! ……お腹……!」

「セリア!? ちょっと大丈夫!? ……ベル、あんたって人は……」



 ベルはなにごとかと、自分を指差しあちこちをキョロキョロしている。

 まあその反応も当然ですよね。相手がチームメイトにダメージを与えたと思ったら、自分に罪が被せられるんですから。私だったらキレてる。なんなら頭でスパイク打ってる。



「ベル、あなたは悪くないです。そしてイラ、あなたは人のせいにするのをやめなさい」

「運動神経がないんだから、せめてそれくらいはさせてよぉー!! うあーん!」



 泣いた。一九歳、高校生に諭されて泣いた。普通に見たら、小学生を泣かせた高校生に見えるからやめて欲しいんですけど。



「ちょっと、泣き止んでくださいよ……」

「どうしましょう? このままっていうのも……」

「ですが、簡単に泣き止むとも思えませんし」



 なにでなら泣き止むの? いないいないばあとか? おやつならなにかあるとは思いますけど。

 どうしたものかと考えていると、ベルがスケッチブックになにやら書いて見せてくる。



『それならサーブでも譲りましょうか?』

「そんなことで大丈夫ですかね? ……イラ、ベルからサーブを譲ってもらえるみたいですが」

「……本当……?」



 ピタリと泣き声が止む。本当にこれでよかったんですか?

 もしかして相手ばかりがサーブ打っててつまらなかったんですかね。それならそうと言えばいいのに……

 とりあえずベルのおかげでなんとかなりましたね。

 さて、気を取り直して再開していきますか。

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