開幕! 美少女だらけの戦い
「えぇ……私とイラですか? 心配しかないんですけど……」
「あんた失礼にもほどがあるわよ?」
ドジっ子イラちゃんとチームとか負けフラグ立ちまくってますよ。展開がメニエール……じゃなかった、目に見えるようです。
ほら、想像してみてください……ホワンホワン。
「サーブのときに空振ったり、スパイクのときに空振って顔にベシーン! って展開になりますよ。絶対」
「そんな言い切っちゃう? てか、アタシ空振りすぎじゃない?」
「そうそう、まるでイラの人生みたいにってね!」
「「あはははは!」」
「あんた一回死んどく?」
イラがキッとこちらを睨めつけ、いつもの幼声からは想像もできないドスの効いた声を出す。
ヒィッ! 今の一緒に笑ったのはなんだったんですか? 私は……あなたと仲よくなれたと思ったのに……!
あっ、もしかして友人間では殺し合いが普通……? なぁ~んだ、そういうじゃれ合いなんですね。
「ちょっと待って、本当にアタシの人生空振ってる? そんなことないわよね? アリシア、ベル」
「えっ、あー……ハイ、ソウデスネ」
『イラさんならイケますよ、顔ベシーン!』
「このっ……、あんたら見ておきなさいよ……! アタシの華麗なボール捌きを!」
こうして、美少女だらけのビーチバレー大会が開催された──
「それで? ルールとかはどうするの?」
──と言うとでも思ったかぁ!! とでも言わんばかりに話しかけてくるイラ。二つ名を《独白の破壊者》とかにすることをおすすめします。
「イラさぁ……、今いい感じに始められそうだったんですけど」
「いやいや、アタシがコケにされて始まろうとしてたでしょ。これがいい感じとか、あんた性格悪いわよ」
「いえ、いい感じのモノローグが流れてですね……」
「モノローグ? さっきからなにを言ってるの?」
もしやさっきのって、私にしか聞こえていないのでは。
幻聴ですか? もしや危ないおクスリでも飲んでしまったんじゃ……
はっ、梅雨のときのあれは、もしや現実……? ふっ、終わったぜ。私逮捕されちゃいますわ。
あれって夢じゃなかったんですか? 夢と現実の区別がつかなくなってきたら終わりだと思います。
「まあいいわ、結局ルールは?」
「二一点先取の三セットでいかがですか? バレーと同じルールですし」
「へぇ、そうなんですね。知りませんでした」
アイリスがキョトン顔で問うてくる。この顔の写真撮りたい……!
王女様はバレーをやらないんですか? 水泳はやるのに。あっ、技能が必要ないから? そっすか。了解でーす。
そして、本当の本当に美少女だらけのビーチバレー大会が開催された──……されたよね?
◇
先攻と後攻を決めるために、お互いのチームの代表がじゃんけんをする。あちらからはアイリスが出、こちらからは、「アタシに任せなさい!」と意気込んだイラが。
「「先攻後攻じゃんけんポン!」」
「えーっと……、アイリスがパーで、イラが……グー」
あんさん任せなさい言うたやん。あっさり負けてて草、超えて草原、超えて森。
「うっわ、イラ、じゃんけん弱っ! あれだけキメ顔で任せなさいって言ってたのに……」
「う、うるさいわね! 今回はたまたまよ……」
「じゃんけんの勝ちすらも空振る女、イラさん」
この子、たまになかなか心に来ること言いますよね。ビックリしちゃうわ。
『さすがの空振りっぷりです。マジリスペクトです!』
「アリシア、あんたね……。それにベル、あんたはどこでそんな言葉を覚えてきたのよ」
『グーラさんが言ってました』
「あの女……! ヘンな言葉教えてくれたわね」
グーラが、というよりも、そもそも《七色の大罪》がヘンな人ばかりじゃないですか。ベルに悪い影響が出ないか心配ですよ。
そんなことになったら怖いので、私がいろいろと教えてあげましょう……エッヘヘヘ。
「じゃあいきますよー!」
先攻であるアイリスチームから、アイリスが手を挙げ振り開始の声をかけてくる。やだ……脇見えてるよ脇。普段は袖で隠れて見えませんが……よっしゃ、ラッキー!
「せーの、はいっ」
「はいっ、セリア!」
「任せてください、イラの死は無駄にしません!」
「まだ死んでないわよ!?」
渾身の力を込めてスパイク! ボールが砂浜へと一直線に向かい、点取得を確信したと同時、横から現れた影が。
「ベル……!? あなたそんなに運動神経よかったんですか!?」
「次はわたしです!」
ベルから上げられたトスを受け取り、ボールへと向けて手を打ちつける。勢いよく飛んできたボールは、私の真横を掠めていく。
「イラ! お願いします!」
「ええ、どんと来なさ──べはっ!」
予測していたボールの飛んでくる位置とはまったく異なる、イラの顔へと飛んでいく。
彼女からしても予想外だったようで、頬を押さえ涙目になりながら、「なんで……? ボールはアタシに恨みでもあるの……?」とか呟いている。なんだか可哀想になってきましたよ。
「おのれアリシア……! ユルサナイ……」
「えっ、わたしですか!? わたしあんまり悪くないような……」
怒りからか口調がおかしくなっているイラ。森で出てきそう。それか、霊的なものに取り憑かれたんですかね? あとで除霊でも行きましょうか。
「うるさいうるさい! 次こそは点を取る!」
「じゃ、じゃあいきますよー。はいっ、ベルさん!」
アイリスのかけ声に合わせて、跳び上がるベル。
その華奢な身体からは考えられないような強烈なスパイクが、まるでミサイルのようにこちらへ向かってくる。
次こそはと意気込んでいたイラ。直接スパイクをしようとしてか、高く跳び上がる。
「イラ、それでは遅い──」
ボールを返そうと振り上げられた手は、明らかにボールが通り過ぎたあとに挙げられており、イラの手の甲に当たって私のほうへ飛んでくる。
「げふっ! ……お腹……!」
「セリア!? ちょっと大丈夫!? ……ベル、あんたって人は……」
ベルはなにごとかと、自分を指差しあちこちをキョロキョロしている。
まあその反応も当然ですよね。相手がチームメイトにダメージを与えたと思ったら、自分に罪が被せられるんですから。私だったらキレてる。なんなら頭でスパイク打ってる。
「ベル、あなたは悪くないです。そしてイラ、あなたは人のせいにするのをやめなさい」
「運動神経がないんだから、せめてそれくらいはさせてよぉー!! うあーん!」
泣いた。一九歳、高校生に諭されて泣いた。普通に見たら、小学生を泣かせた高校生に見えるからやめて欲しいんですけど。
「ちょっと、泣き止んでくださいよ……」
「どうしましょう? このままっていうのも……」
「ですが、簡単に泣き止むとも思えませんし」
なにでなら泣き止むの? いないいないばあとか? おやつならなにかあるとは思いますけど。
どうしたものかと考えていると、ベルがスケッチブックになにやら書いて見せてくる。
『それならサーブでも譲りましょうか?』
「そんなことで大丈夫ですかね? ……イラ、ベルからサーブを譲ってもらえるみたいですが」
「……本当……?」
ピタリと泣き声が止む。本当にこれでよかったんですか?
もしかして相手ばかりがサーブ打っててつまらなかったんですかね。それならそうと言えばいいのに……
とりあえずベルのおかげでなんとかなりましたね。
さて、気を取り直して再開していきますか。




