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語彙力最強少女の英雄譚  作者: 春夏冬 秋
二章・後日談
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オーシャンビュー・リターンズ

 この酷暑こくしょ、学業に支障が出るために、その対応策として用意されている夏休みも残すところあと三日。

 しかし夏休みという休息のときにも私を休ませてくれないのがこの世界。

 夏休みに私の身に起こった三つの出来事!



 一つ。始まってすぐに海に遊びに行くも、《童話教典》の力によって、世界が『アンデルセン童話』の『人魚姫』さながらの世界に書き換えられるところを防いだ。

 当然ながらそれ以外にも起こっており、『人魚姫』の件については、声が出なくなり、足に歩くたびに激痛が走る呪いがかかったり、胸がなくなったり。それは元々?



 二つ。それが解決したはいいものの、次に出会った出来事が『ベル・リンケルトの保護』。

 これは、最初の私たちの担任教師であったゲイル・マーシェルが、ベルを養子として引き取ったことから始まる。

 ネグレクトに家庭内暴力と、彼女の生活を脅かす行為ばかりおこなわれていたため、私たちでなんとか保護することにし、ゲイルは騎士団ギルドへと引き渡すことで事なきを得た。

 それで終わらないのが私の夏休み。



 三つ。最後に起こったのは、《フレージアル皇国》皇太子、グレイズ・フレージアルを名乗る男からの、アイリスへの婚姻の申し込み。

 結局は偽物であり、こちらも騎士団ギルドへ引き渡して終了……なんて上手い話があるわけもなく。

 騎士団ギルドに引き渡した日、私たちが事情聴取を受けている間に、男たちが逃げ出した。帰り道では謎の視線を感じて終わったものの、翌日のニュースで知ることとなる。

 さらには、筋弛緩剤で動きを封じられたのちに誘拐、《童の伽噺(フェアリーテール)》に渡される算段となっていたようだ。

 アヴァリティアとインヴィディアによって助けられ、事なきを得たものの、やはり恐怖を植えつけられたのには違いない。

 もう事件に巻き込まれるのはごめんですよ……



 そんなこんなで一ヶ月など、あっという間にすぐに沸いてどこかへ消えてしまいましたよ。

 そのリベンジではないですが、残りの三日間は有意義にすごしたいと思います!



「ということでアイリス、もう一度海に行きましょう」

「どういうわけかわかりませんけど、わたしは大丈夫ですよ」

「では明日、早速行きましょう!」



 待って? そうしたら残り二日じゃない? 結局ろくに楽しめないじゃないですか……

 仕方ないですよね、あきらめて二日間だけでも楽しみます。カムバーック! オーガストー!

 でも、またアイリスの水着姿が見られる……! このためなら私、なんだってできちゃいます!

 


     ◇

 


「海よ、私が帰ってきたぞー! ……待って、泳ぎの練習忘れてました」

「それならここでしますか?」

「いや、海で泳ぐ練習は初めて聞いたんですけど」

「そうですかね? お母さんには沈められる勢いでやらされましたけど……。というか沈められました」



 お母様ってそんなスパルタなんですか?

 どうしよう……もしかしたら、アイリスと結婚した途端、あからさまな嫁イビリとかされてたのでしょうか……

 お母様の霊に怒られそうで怖いです。

 沈められちゃうんだ……。私は初めはプール派なんですぅー!



「お母さんはわたしのこと、猫可愛がりするところがあったので、それでだと思います」

「可愛がっていたのは本当だと思いますけど、なにか違う気がするんですが」



 可愛いから沈めるとか、そんな性癖聞いたことないです。

 そういえば、プールの授業で、じゃんけんに勝ったら相手の頭をプールに突っ込むって遊びがあった気がしますけど、あれ軽く犯罪。訴えたら勝てる。



「セリアさんが泳げないならどうしましょう?」

「水かけ合って、『きゃあ~、冷た~い』ってやつやりましょう」

「水かけ論って言うのですよね?」

「待って違う。覚えたての言葉ですね? 意味と合わせて覚えてくださいよ……」



 ちなみに『水かけ論』とは、両者が互いに理屈を言い合い、解決することのない議論のこと。

 海でカップルが「それ~」「きゃあ~、冷た~い」っていう羨ましい光景のことを言うわけじゃないです。



「覚えたてですけどなにか?」

「え、逆ギレ? この子、怒ったらなんだか怖い……怒らせんとこ」

「ちなみに、それ楽しいんですか?」

「さあ? 海に来たことないので知りません」



 カップルって、相手どうしてるんですか? カップルだから恋人か。解決しましたわ。

 いやそれなら、カップルじゃない人たちはどうしてるんですか? 友だちでもいるんですか? そっか、友だちと行ってるのか。これも解決しました。

 さあここでまたも疑問が生まれたわけですが……友だちいなかったらどうするの? ああ、そもそも海に行かないのか、納得納得。



「じゃあどうします? セリアさん、他にやりたいことないですか?」

「それなら、『こっちだよ~』『あはは、待て~』ってやつやりますか?」

「なんかどれもつまらなさそうです。やっぱり泳ぎましょう!」



 バリバリ体育会系じゃないですか。泳げへん言うとるやん。なにかあるたび筋肉に頼るようになりそうで怖いんですけど。

 座右の銘が『筋肉はすべてを解決する』とか。どこぞの桃色魔法少女じゃないですか。鉱山とかで重いものを運ぶ働く車のタイヤ引いて訓練とか嫌だ。



「そうだ、ビーチボール持ってきてるんでした。これでビーチバレーでもしましょうか」

「楽しそうですね! やりましょう!」

「ですが、人数が少なすぎますね……どうしましょう?」

「それならあそこに」



 アイリスが指差す先にいたのは、イラとベルの二人。それなら二対二で試合ができますね。この人数なら十分でしょう。



「イラー! ベルー!」

「……ん? あら、セリアとアリシアじゃない。どうしたの?」

「ビーチバレーでもしませんか? 人数が少なくてですね」

「ふーん……まあ、スペルビアから海の見回りを頼まれて来てただけだから」



 普通にパシられてるじゃないですか。そういうのって、担任とかがするものでは?

 せめて教員のアヴァリティアにでも頼めばよかったのでは……



「アタシはいいけど。ベルはどうするの?」

『ぜひ、やらせてください』



 イラの問いかけに、スケッチブックにひと言書き答えるベル。



「水着はどうします?」

「大丈夫よ、ここにあるから」



 イラが指差すのは、肩にかけられた黒いカバン。少し大きめで、出かけるための荷物を持っていくにはちょうどよさそう。

 というか、そこにあるってことは……



「元々遊ぶつもりで来ましたね?」

「うっ……」

「まあいいですけど」



 それでは始めましょうか。戦闘でつちかった運動能力を見せつけてやりますよ!



「チーム分けはどうするの? グとパ?」

「グとパ? なんですかそれ? 聞いたことはあるんですけど……」



 そんな都市伝説っぽいものじゃないですけど。結構一般的なものだと思ってました。そうでもないんですかね?



「アリシアは知らない? 王女はやらないのかしら。ほら、グとパでわかれましょ、ってやつよ」

「そんなことでわかれるんですか?」

「まあ、そういうものだし……」

「恋人ってあっさりしてますね」

「いや、『わかれる』って、『別れる』じゃなくて『分かれる』だからね?」



 ごめんなさい! この子、どうにも言葉に関していろいろ苦手なんです! いろいろ教えておくので、今回は我慢してください……



「ですから、別れるんですよね?」

「だからね……まあいいわ……。このまま説明しててもキリないもの」



 ついにイラもあきらめることを覚えましたか。私うれしいです。

 ですが、組織で一番能力が低かったのでは……。大丈夫なんですかね?



『イラさん、いつもドジっ子なのに、運動なんて大丈夫ですか?』

「ちょっと! 大丈夫に決まってるじゃない!」

『いつもお皿落としかけるし、高いところのもの取れてないじゃないですか』

「そ、それはうっかりで……って、二つ目のはアタシの身長イジってない?」



 それは運動能力とは関係ない気もしますが……



「とりあえず始めましょう」

「いきますよ? グとパで分かれましょ!」

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