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語彙力最強少女の英雄譚  作者: 春夏冬 秋
第二章 《夏期休暇》編
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66.最善の対策

「アイリス、気をつけて生活しててくださいね」

「もしかして昨日のセリアさんのって……」

「はい。おそらくは彼らの視線でしょう」



 仕返しであれば返り討ちにできるものの、ストーカー化されてしまえば対処は難しい。

 可能とは思えませんが、悪意を向けずに私に近づかれれば、《悪事千里》が発動せず襲われて終わり。

《言霊》が厄介ならば眠らせてしまえばいいわけですから、不意を突くことが相手の第一目標となり得るでしょう。

 しかし私たちの帰宅と同時に逃走とは、行動の早いことで。その行動力をなにかに生かせばいいのでは。



「セリアさん、どこに行くんですか?」

「えーっと……ちょっとそこまで」



七色の大罪(モルトリア)》の元へ行き、このことに関して対策をしてもらいたかったのですが……

 アイリスはさすがに連れていけませんし、どうしたものでしょうか。



「外に出るなんて危ないですよ! 行くならわたしも行きます」

「やはりそうなりますよね……。ピグリティア、お父様の護衛をお願いします」

「承知しました」



 仕方ありませんね。お父様が被害に遭わないように、彼女に頼んでおきましょう。あの腕ならば、なにかあっても大丈夫でしょうし。



「では行きましょう。明るいうちに済ませておきたいですから」

「はーい、今行きまーす」



 外に出るという行為は、やはり怖いものがある。

 空はカンカン照りなほどに明るいとはいえ、いつ狙われるかがわからない以上どうにもできない。

 というか、私って巻き込まれ体質すぎません? そのうち飛行機で探偵に会うかもしれない。

 ひとまずは大丈夫そうですかね……?



「ササッと行ってしまいましょうか」

「結局、どこまで行くんですか?」

「イラのところへ、とりあえずの報告だけでもと思って」



 アヴァリティア辺りに伝えておけば、それなりの対処をしてくれると思いますしね。

 私、可愛いので誘拐されたら困りますし、早め早めのOS……じゃなくて、夜になにかあったときの対策をしてもらわなければですから。

 大丈夫かと歩いていると、背後からまたもや気配を感じた。



「アイリス、少し急ぎましょう」

「き、来てるんですね……!」

「ええ、ここで行動に出られる前に話をつけておきたいですから」



 気持ち早歩きで《七色の大罪(モルトリア)》の家へと向かう。

 マズいマズい。ここで来るとはあまり予想していませんでした。

 家を出てから大丈夫だったので、今日は大丈夫だと思っていたらこれですよ。つくづく上手くいきませんね。

 ここで裏路地にでも入って迎え撃つ? いや、相手が何人かがハッキリしていない。

 二人ならば問題ないものの、昨日のうちに人を集められていたらさすがに勝てない。方法がないこともないのですが、使ったことのない戦法なので、扱うことができるかが不安になってしまう。

 ここは大人しく退きましょう。


 

     ◇

 


 来るのは二回目となる、《七色の大罪(モルトリア)》が利用している家。

 未だに前回のコケや壁の剥がれは健在で、今回も私たちを出迎えてくれる。

 インターホンを鳴らすと、ガチャリと扉が開かれる。



「あー……なによ? またなにかあるの?」

『セリアさん、アイリスさん、おひさしぶりです』



 出てきたのは、少し眠たそうなイラと、スケッチブックを掲げたベル。すっかりイラになついているみたいですね。



「とりあえず入りなさい。今はヘンな男がウロついてるみたいだし、落ち着いて話ができないでしょ」

「そのニュースを知っているのなら話は早いです。それではおじゃまします」

「おじゃましまーす」



 私に続いて入ってくるアイリス。

 中に入ると、リビングにはアヴァリティアとインヴィディアの二人しかいなかった。



「今日は少ないですね、どうかしたんですか?」

「まあ、寝てたり遊びに出かけたりしてるわね」

「おー、セリアおひさじゃない?」



 大きく手を挙げて声をかけてきたのはアヴァリティア。

 前のベルの話をしに来たときに会っているはずですが、酔っていたので忘れているのでしょうか。



「一応、数日前に会っていますよ」

「あれぇ? そうだっけか。ウチうっかりしてんねー。ま、話があるならしなよ。座って座って」

「ありがとうございます」



 座るように促され、イスに座ると、改めて話を始める。



「先ほどイラが言っていた男の話ですが、私たちが狙われている可能性……というか、ほぼ確証があるんです」

「となると、その護衛に……っている? 学院最強なのにさ」

「完璧な予防策を張っておきたいんです。仮に夜に忍び込まれては対処は難しいです」

「なるほど、それは一理あるわね。じゃあインヴィディア、なにかあるかしら?」



 イラが声をかけたのは、なにやらカチャカチャとイジっている、藍の少女インヴィディア。

《嫉妬》の肩書きを持つほどに嫉妬深く、《馬耳東風》を持っている、敵に回すと厄介極まりない人物。

七色の大罪(モルトリア)》では機械関係の担当をしていたそうですが、なにか作っているのでしょうか。



「ボク的には、場所がわかればアヴァリティアとかが対応してくれると思うし、発信器とか監視カメラでも付けておくのがいいと思うよ」

「なるほど、発信器にカメラねぇ……。それってあんたにも作れるの?」

「もちろんだよ、リーダー。ボクを誰だと思ってんの?」

「さすがね。なら頼んだわ、すぐにできるかしら?」

「そーだね、しっかりしたものを作りたいし二時間くらいかな」



 機械ってそんなにすぐできるもんなんですか? へぇ~、すごいですね。

 インヴィディアが作り終えるのを待っている間、イラがニュースについて詳しく訊いてきた。



「それで、あの男たちとはなにがあったの? また巻き込まれた感じでしょ?」

「ええ。彼らは結婚詐欺を働こうとやって来ました」

「わたしに、結婚しないか、って言ってきたんです」

「あー、あれだね。財産目当てっしょ? ウチもたまにやってたし」



 そこそこ衝撃的な発言をそんなにあっさりと言っちゃうんですか?

 アヴァリティアってバツ付いてるの? 年齢的には問題ありませんが……。見る目変わっちゃう~。



「でも、結婚まではいってないけどね。結婚の縁談を進めてる間に根こそぎ財産かっさらって逃げてたから。変装してたし顔バレなし!」



 さすがはプロの盗賊、鮮やかな手口ですね。なんですけど、それ普通に犯罪だから! やっちゃアカンで!

 今となってはそのスキルに助けられているわけですが、犯罪に分類されるスキルで治安を守るとはいかがなものか。

 まあええか! バレなきゃ犯罪じゃないですからね!

 アイリスも、私のハートを盗むという大罪を犯していることですし、大丈夫でしょう。



「今回の件だけど、アヴァリティア一人では大変でしょう? あとは……スペルビアでも連れていく?」

「いやー、スペルビアはどうだろ。学院の仕事に追われてるって言ってたし」

「それは大変そうね……。ならインヴィディア、頼めるかしら?」

「ボク? それならリーダーが行ったら?」

「アタシ、戦闘は苦手なのよ。《天変地異》を使っていいなら行くけれど」

「それは室内戦闘になったときに死にません?」



 イラの《天変地異》! 建物に一〇〇のダメージ! 天井が崩れてきた! 潰されてゲームオーバー……

 そんな未来が見えました。占いはできませんけど、占い師じゃなくてもなんとなくわかる。



「それならやっぱりインヴィディアね。頼んだわよ」

「はいはい。一気に片をつけられるような動きにしてよ?」

「なんかあったらウチがなんとかするし、安心してなよ」



 なるほど、なんとも頼もしい方々です。これでひとまず布石は打てましたかね。

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