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語彙力最強少女の英雄譚  作者: 春夏冬 秋
第二章 《夏期休暇》編
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56.調査の再開

 声が出るようになり、歩けるようになった私。

 だからと言って、調査をさっさと進められるかと言えばそうでもないわけで。



「これからどうしたものでしょうか……」

「セリアさーん……外は暑いし、まだ眠たいので寝ましょうよ~」



 ね、寝る!? 寝るってつまり、そういうことですよね? いや、でもまだお昼だし……せめて夜になってからじゃないと恥ずかしいよぅ……

 暑いのにそんなアツくなることをしたがるなんて……破廉恥ハレンチです!



「アイリスはお留守番ですか? それなら私一人で調べてきますので」

「それはダメです! わたしも行きます!」

「やる気あるなら、なんで寝ようとか言っちゃうんですか」



 この小娘やる気ないんちゃうんか? そんなアイリスちゃんにはお寝んねしててもらいましょうかね。



「それなら早速行きましょうか」



 海へと調査に向かおうとすると、バタンと少しばかり乱雑に開かれる扉。



「ちょっと邪魔するわよ」



 扉を開けて入ってきたのは、イラと先生の二人。



「なんですか、邪魔するならお帰りください」

「はーい……って用件があって来たのよ!」

「でも、先生は帰ったみたいですが?」



 イラの背後を指差すと、なにごとかと振り返る。



「えっ、ちょっと! どこに行くのよ、スペルビア!」

「どこって……帰るんですが? 帰れと言われましたので」

「それはセリアの冗談よ! あなたもバカじゃないんだからわかるでしょ!?」



 冗談をに受けるおバk――ピュアな先生は、玄関扉に背を向けて歩き出していた。

 なにを言っているのかと、疑問を含ませた表情で首をかしげる。



「というか、インターホンを鳴らしてくださいよ。見知っているのと、お父様に話をつけてあるからいいものの、なにかあっては困ります」

「それは悪かったわね、次から気をつけるわ」

「本当に思ってます?」



 それあれじゃーん! 「わかった!」って言ってわかってないやつじゃーん!

 ちょっとちょっとリーダーさんよぉ~、それじゃあメンバーに示しつきませんよ?

 「悪かったわね」とは言っているがこの女、まったく悪びれていないのである。



「それで、なんの用ですか? 今からアイリスとデートなんですけど」

「えっ、セリアさんさっき調査って……」

「あ、えーと……調査デート? 海デート?」

「命懸けのデートなんて行きたくないですよ……」



 安心しろ、お前のことは俺が護るからよ。

 おっと、話がれてしまいましたね。



「結局なんでしたっけ?」

「そうそう、これを持ってきたのよ」



 イラがポケットから取り出したのは、腕時計の形をしたもの。全体的に黒い四角のフォルム。こ、これって……



「アップ○ウォッチじゃないですか! 私欲しかったんですよねー!」

「あっぷ……なんて? まあいいわ、これはインヴィディアが作ったんだけどね」



 インヴィディアといえば、確か機械に強いんでしたよね。《七色の大罪(モルトリア)》の機械周りの担当をやっていたらしいですし。



「へえ、それでこれはなんです?」

「なんでも、空間の歪みを検知できるらしいわよ。検知すると、ディスプレイに警告が出るらしいわ。さらには、解決までのヒントも出るみたい」

「なにその便利機能、二二世紀の秘密道具みたいじゃないですか」

「これがあれば、《教典》の使用を察知できるから、対応しやすいかと思って、らしいわよ」



 ああ、イラの案じゃないんですね。薄々感じてはいましたけどね! 私の第六感すごいね!



「別にそんな機能なくても、《教典》のとおりに進めれば解決じゃないの?」

「ですが、なにかしらで話を書き換えられていたら、解決のしようがありませんよ」

「え、えー……そんなことできるかな? 《教典》を書き換えるのか……」



 腕を組み、うむむとうなるアヴァリティア。彼女の疑問に答えるように、イラが口を開く。



「どうかしら、でも、《ドクター》ならできてもおかしくないわよ? 技術は目を見張るものがあるじゃない」

「ああ、あの研究メンヘラ? あいつヤバいからあんま関わってなかったんだよねぇ」

「まあ、なにか頼んだときの交換材料がめちゃくちゃだものね……。標本にしたり、人体実験のために人を生け捕りとか言われたときは驚いたわよ」

「ウチらは基本、ターゲット以外は干渉しないスタンスだしね」



 ちょっとちょっと、仲間内の会話やめてよねー。私たちと新規さんがついていけないですよ。初見さんいらっしゃい。

 なに? そんなヤバい人がいるんですか? あなたたちの組織どーなってんのー!?



「てか大丈夫かねぇ、仮に《童の伽噺(フェアリーテール)》が依頼をしてたとして、ウチらからの報告を《ドクター》が見てたら、セリアを欲しがらない?」

「私が可愛いから狙われちゃいますか? えー、やだ~」

「アタシたちからの報告だけだとしても、《言霊》を大量所持する規格外な存在だものね」

「無視はヒドくないですか?」



 最近私の扱いが雑すぎると思うんですよ。

 頬に手を当てて腰くねくねした超媚び売りモーション一切視界に入れてないですよね。乙女の尊厳を利子つきで返してくださいよ。

 他人の乙女の尊厳で上げる女子力は、他人のお金で行く焼き肉くらい美味しいです。ウッウウマウマ。



「まあ、そこにも目を光らせておくから、あんたは安心して調査を進めなさい」

「そこの不安は取り除けても、調査に対する不安は減らないんだけどなぁ……」



 などと愚痴を零したところで、動かなければ解決できるものもしませんし、早速調査へ向かいますか。



「アイリス、そろそろ行きましょうか。あまり暗くなると怖──調査が大変になりますし」

「? 今、なにか言いかけませんでした?」

「イエ、ナニモイッテマセンヨ?」

「そうですか、それならいいんですけど……なんでカタコトなんですか」



 危ない危ない……、私が暗いところが苦手なのを知られたら、アイリスの中のカッコいいセリアちゃん像が崩れちゃいますからね。

 ……まあ、彼女の中での私はどういった姿に映っているかはわかりませんが。え、変態お姉ちゃん的な立ち位置じゃないですよね……?


「調査って言っても、それになにも出てませんよ?」

「確かにそうですが、行ってからということもありましたし」



 アイリスが「それ」と指差すのは、私の左腕に装着された、先ほどの時計。

 そこに浮かび上がっているものは、警告文や、その類いのものではなく、時計としての役目を果たそうと、角張ったデジタル数字が刻々と時を刻むのみ。

 数字の間にある「:」は、一秒、また一秒と時間が進んでいることを私に痛感させるように点滅している。



「ひとまず行ってみましょうか。先生、私たちと一緒に海に来てもらってもいいですか?」

「私ですか? ええ、構いませんよ。では早速」



     ◇

 


 調査の再開は、ほんの数日ぶりという短い間が空いただけのはずなのだが、どうしてか数週は経っているように感じてしまう。

 痛みなどの苦痛が時間の感覚を狂わせたのか、もしや本当に数週間が経っているのかがわからなくなってしまう。



 しばらく日が経ったことで、真夏日とも言えるほどに気温は上がっており、日に焼かれた砂浜から蒸し上がる熱が、私に汗をかかせようとしているのか、ジワジワと肌に伝わってくる。

 身体から熱を逃がそうと制服の胸元をパタつかせるも、負けじと身体は汗を噴き出させる。

 あ~、水もしたたるいい女ですね。いい女、いい女。まあ元からですけど。ボディライン以外は。

 私たちが海に来たことを歓迎してか、排除しようとしてか、耳をつんざくように鳴り響くのは、警告アラートのようだ。



「……やはり来ましたか。さて、今日こそは解決させていただきますよ」

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