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語彙力最強少女の英雄譚  作者: 春夏冬 秋
第二章 《夏期休暇》編
58/98

50.学院最強の弱点

 ひとまずはイラと今後の方針を固め、それぞれで行動することにした。



「さて、これからどうするかですが……」

「そうね、アタシとしては、表立ってこの案件を解決するのは、あんたがいいと思うんだけど」

「そうなりますよね。情報収集能力に関しては、私よりもあなたたちのほうが長けていますからね」



 最低限の情報しか伝えられないとはいえ、《童の伽噺(フェアリーテール)》に関する知識は、確実にイラたちのほうが持っている量は多い。

 それならば、実際に起きている現象の解決は、《言霊》を見ても私のほうが適任と言えるでしょう。

 すべての《言霊》を使える私であれば、どんな状況におちいろうとも対応できますし。

 ですが、アイリスを巻き込むのは本意ではありません。私が一人で解決するしかありませんか。

 言ってしまえば、《七色の大罪(モルトリア)》には一人で対応したようなものですからね。まあ、アイリスの助けがあったのも事実ですが。

 一概いちがいに私一人でとは言えないのが難しいところですね。アイリスをお留守番させるための説得の材料となり得ませんから。



「問題はアリシアのほうよね。あの子はまだ未熟でしょう?」

「ええ、試験くらいでしか《言霊》を使ったことがないくらいには、戦闘を経験していませんね。なぜか説得などをしたがりますし」

「それはあんたの影響じゃないかしら……」



 私の影響? 言われてみれば、私はすぐ戦闘というよりは、まずは話し合いで解決しようとする節がありますね。

 《七色の大罪(モルトリア)》とは、基本それで解決まで持っていってますしおすし。



「とりあえず、今は基本的にアヴァリティアが調べてくれてるわ。組織では情報収集を担当してたから安心していいわよ」

「情報収集担当なのに、学院に攻めてきたわけですか」

「うちのメンバー、少々血の気が多いところあるから……。あのときは悪かったわ」



 他のメンバーの担当はわかりませんが、アヴァリティアやスペルビア以外の五人は、戦闘に駆り出されるような担当ではないでしょう。

 なんですか人材不足ですか? あっ、私のせいですかごめんなさい、でも反省はしてません。

 私は悪くないでしょう。殺されかけた人を護っていたんですよ? 合法的に相手をボコボコにできる正当防衛ですよ。せーとーぼーえー大好き。



「しっかり働いてくださいよ? あなたの代わりは他にいるんですから」

「は、はい……。頑張ります、だからクビだけは……って、しっかり働いてるわよ!」

「そういえば、調査費だって言って騎士団ギルドからお金ふんだくれないですかね」

「あんた結構ゲスいこと言ってるのわかってる? それに、前の依頼の報酬でガッポリもらったって聞いてるけど?」



 前の依頼と言えば、王女護衛の話ですね。あのときの報酬は確か……



「一〇〇〇万はもらいましたね。特に今は欲しいものもないので、必要経費など以外では使っていません」

「なにそれ、アタシたちよりもらってるじゃない。組織ってなにかしら……。てか、学生がそこまで物欲ないものなの?」

「いえ、欲しいもの自体はあるのですが、お金では買えないんですよね」

「へぇ、なによ、その買えないものって」

「アイリスの心です……」

「うわぁ……」



 えっ、そんなにあからさまに引きます?

 でも、やつ(アイリス)はとんでもないものを盗んでいったんですよ。――私の心です(ドヤッ)。



「まあそれはどうでもいいけど……」



 なんたるスルースキル。そういう《言霊》でも持ってるんですか?

 会話の流れを壊すとは、なんでも破壊する能力は伊達じゃありませんね。富澤でもない。甘いものは真ん中にカロリーが集まるので、真ん中に穴が空いているドーナツはカロリーゼロです。



「あんたこそしっかり働きなさいよね」

「イラとは違うので大丈夫ですよ」

「だから! はあ……もういいわよ。アタシは報告書出してくるから帰りなさい」

「そうですね、ではまた」



 扉を開けると、当然ながら日が落ちており、目の前には漆黒の闇が広がっている。

 街灯はあるので視界は問題ないのですが、別で問題が発生していた。



「イラ、一つお願いがあるのですが」

「なによ? アタシにできることならいいけど」

「ありがとうございます。それでは――」

 


     ◇

 


 闇に包まれた帰路を歩くのは私とイラ。私たちは身を寄せ、くっついて歩いていた。



「しっかしまさか、学院最強ともあろうあんたが――暗いところが怖いなんてね」

「な、なななんですか、イラだって子供なんですから、強がっているだけで本当は怖いのでしょう?」

「声震えてるわよ。アタシは別に怖くないし強がってないし。てか、アタシあんたより年上だからね?」



 お化けなんていないさお化けなんて嘘さ。寝ぼけたイラが見間違えたのさ。



「私、暗いところだけじゃなくて、お化けも雷も怖いです」

「自慢げに言うこと? いやそれよりも、《迅雷風烈じんらいふうれつ》とか《霹靂一声へきれきいっせい》とか使ってるじゃない」

「自分で使う分には大丈夫なんです。ほら、自分でコンプレックスをネタにするのは大丈夫みたいなものです。私は胸がないです、みたいな感じで」

「まあ、結構な幼児体型のアタシよりないものね……」

「はぁ? チビぺったんなイラに言われたくないですね」

「なによ、それならここから一人で帰る?」

「すいません、私が悪かったです」

「変わり身早すぎじゃない?」



 はぁ……、と呆れから大きくため息を吐くイラ。

 だって置いていかれたら、私怖くて泣いちゃうぞ。

 なんかあの裏路地になんかいそうですもん! 地面とかからズモモモ……って出てきそうじゃないですか!



「でも、暗い中での活動も少なからずあったでしょう?」

「そうですね、戦闘をおこなうことはありましたが、あのときはアイリスを助けるのに夢中で気にしてませんでしたね」

「なるほどね。夢中は人の恐怖を散漫させるとはよく言うものね」



 人間というものは、なにかに集中し意識がれると、苦手なものが近くにあったとしても平常心でいられるもの。

 仮に、アイリスを助け出すのに余裕を持っていたら、夜闇の恐怖で足が動かなかったことでしょう。



「なんでもいいけどね、それより大丈夫なの?」

「大丈夫? なんの話ですか?」

「なんでも夏休み明けて少ししたら林間学校があるみたいじゃない。肝試しで生徒を怖がらせるって、スペルビアが意気込んでいたわよ」

「え……。なんですかそれ、そんな話聞いてませんよ?」



 肝試しですか……。やだやだやだ! やりたくなーいー!

 先生ってば、まさか私にイジワルをするために……!? いや、私が怖が――暗いところが苦手なのは知らないはずですし……

 時期的に、知らせる前に夏休みに入ってしまったといったところでしょう。



「イラ、私に知恵を貸してください」

「なによ今日はいろいろあるわね。それで?」

「林間学校を中止にする方法です。学院を壊せばいいですか?」

「あんた、だんだんバイオレンスになっていくわね……。悪に染まらないでよ?」

「少し前まで悪に染まりきってたイラがなにを言っているんですか」

「う、うるさいわね……。とにかく、中止なんてダメよ」



 イラに計画を止められてぶー垂れていると、スタスタ先を歩いていってしまう。ま、待ってー!

 


     ◇

 


 話しながらでのんびり歩いていたために、少し帰りが遅くなってしまいましたね……

 夜が更ければ当然ではあるのですが、騎士団拠点ギルドハウスを出た頃よりも暗くなっている。まったく……、私が一人で帰ることになっていたらどうするんですか。

 怖くて――私、美少女ですから誘拐とかされたらどうするんですか。

 到着してから、イラが思い出したように呟く。



「あのさ、暗いのが苦手なら、歩かなくても《東奔西走》で帰ればよかったんじゃないの?」



 えっ、あっ、本当じゃないですか。うっわぁ……、それを思いついていたら、イラにこんなこと知られずに済んだのに。



「なんで早く言ってくれないんですか」

「アタシだって今思い出したのよ。あんた、一回しか使ったことないじゃない。それに、アタシが実際に見たわけでもないから印象が薄かったのよ。てか、自分の能力なんだから忘れないでよ」

「あははっ……以後気をつけます」



 このことを周りにバラさないこと伝え、イラと別れることとなった。

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