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語彙力最強少女の英雄譚  作者: 春夏冬 秋
第二章 《夏期休暇》編
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41.校外学習は探検気分

「はあ、校外学習ですか」

「ええ、《ワーディリア博物館》に文化などを学びに行こうかと」



 毎年、一学期期末テスト後、学院で一年生がおこなう行事である校外学習。

 《ワーディリア博物館》には、図書館では置けないような代物が展示されていたり、様々な文化について触れられたりするそうです。



「校外学習……、学習……また勉強か~。嫌です」

「おや、アイリス・フェシリア、成績がつけられませんがよろしいですか?」

「いやぁ、それは困りますね……。そうだ、セリアさんの成績を半分ください」



 とんでもないこと言い出しましたよ。

 成績の譲渡制度なんて初めて聞きました。まあ、そんなものはありませんが。



「いや、あげませんよ。うっ……、そんな顔するのは反則……」



 若干の上目遣いに加え、瞳を潤ませるアイリス。

 それ、男子が勘違いするやつなので他の人にはやらないでください。私にだけですよ。



「先生、成績譲渡はできますか?」

「できませんよ。あっさり堕とされてるじゃないですか……」



 堕とされてませんよ? 可愛い子には旅をすると店舗特典で成績もあげちゃいます。なお、なくなり次第配布は終了します。



「とにかく、譲渡はできないので、アイリス・フェシリア本人が出席してください」

「はーい……」



 校外学習って、ここまで嫌がるものなのでしょうか? なんだか小学校の探検学習みたいで楽しみですよ。

 まあ、探検学習は校門をくぐった瞬間に体調を崩して脱落しましたけど。うん、これもまたいい思い出。いや、よくないですね。

 アイリスってば、もしかして、勉強アレルギー……!? それは大変だ、早くなんとかしないと。



「詳しいことは朝礼で話しますが、ひとまずはそういうことです」

「おお、私たちにだけリークしてくれるんですか。すごい特別待遇」



 えー、それってー、なんか裏で繋がってるみたいで怪しまれちゃう~。

 実際裏で繋がっていると言えば繋がっているんですけどね。危ない関係じゃないよ!



「まあ、私たちを助けてくれた……とでも言えばいいでしょうか。ですから多少は、ね?」

「やだ、なにそれうれしい。なんだか涙が出てきましたよ。……気のせいでした」



 うーん、まったく涙が出てません。ドライアイでしょうか。いいえ、誰でも。



「助けたと言っても、勝手に結婚できないと愚痴を零して辞表を出しただけでしょう。私はなにもしてませんよ」

「それでも、私としては感謝しているんですよ」



 そう言うと、先生はふっと口元をほころばせ、その切れ長の目を軟化させると、教壇へと歩いていく。

 その頬が少し赤く染まっていたのを私は見逃しませんでしたが、いつものようなイジリは口から出なかった。

 ……私も変わりつつあるとでも言うのでしょうか。いえ、私は私。永遠に変わりません。


 

     ◇


 

 《ワーディリア博物館》、約一万点の美術品や骨董品、書物などが展示されており、広さは図書館に負けず劣らずなほど。

 加えて、書物などは閲覧可能で、触れることも許されているのだとか。普通の博物館などではあまり考えがたいシステムですが、こういったものが好きな人にはうれしいことでしょう。

 私だって、アイリスに触れることができるならうれしいですしちゅっちゅ。あとは[放送禁止]とか[自主規制]とかしてみたいです。誰ですか私の願望に伏せ字入れたの。放送できますよ。



「では、まずは絵画から見ていきましょうか。絵画とは、風景を収めたものから、人の心を閉じ込めたものまで様々です」



 おや、社会科の担当ではないのに、スラスラと……なんですか、その紙。もしかしてカンペですか? レイア先生からのお助けアイテムですね?



「次は、こちらの書物。これらは主に《教典》と呼ばれ、後世に教え示すためのものです。物語がつづられており、誰かが書いたと言われていますが、本当に起こった事柄などを閉じ込めてあるとも言われています」



 《教典》ですか。表紙をチラチラ見てみると、《悪魔教典》やいろいろな種類の《神話教典》、《童話教典》なんてものもあります。

 物騒なものや、平和そうなものまでありますね。

 これが実際にあったらと思うと……

 しかしさすがは言葉の世界。神話などの語り継がれたものさえも存在するわけですか。



「文字として書き記したり、絵を描くことで封じ込める力があるとも言われているようですね。詳しくは未だ謎みたいですが」



 そんな危険な……、そういえば、図書館にもあった気がしますが。あれですかね、作りもの、サンプルといったところでしょうか。



「うーん……説明が面倒です。皆さん、これから自由時間とします。見学してきなさい」



 ちょっと。説明が面倒って、それ職務放棄では?

 まあ、自由時間のほうが、なにかと行動がしやすいのでいいですけど。

 「自由」の言葉を聞いてはしゃぎ出したアイリスが、とことこと博物館内を歩き回る。

 やがて一冊の本を手に取ると、私の元へと駆け寄ってきた。



「セリアさん、料理本なんてものも置いてありました!」

「なぜ」



 いや、料理本を博物館に置くのはどうかと。

 おや、元の世界の料理ではないですか。そういえば、ところどころで私のよく知る料理を見かけましたが、これが由来でしょうか。

 どなたが書いたのでしょう、ええっと……クック・パッ――やめておきましょうか。

 あれですよね? 私みたいに横文字の名前が思いつかなくて、料理のクックと、パッと思いついたからパッドなんですよね? 例のレシピサイトは関係ないですよね?



 こちらの《悪魔教典》は『ソロモン72柱』の話ですか。ページを繰ると、なんとも禍々しいイラストが描かれている。

 《童話教典》はグリム童話やアンデルセン童話、イソップ童話などに加え、他にも様々な童話が収録されている。

 こちらの著者は――ウィリアム・シェイクスピアってなんだこいつふざけてんのか。おっと、汚い言葉が出てしまいました、これは失礼。

 あの人は劇作家・詩人であり、童話作家ではないのですが……

 失礼ながらお嬢様、ここに転生した人はアホばかりでいらっしゃいますか?

 《教典》とは一口に言っても、何種類もあるのですね。近いうちに読みに来ましょうかね。



 エミルとナツハは、《教典》を興味深げにしげしげと見つめる。よほど面白いものでもあったのでしょうか。

 しかし《教典》だけを見るのもいかがなものかと思い、辺りを見渡してみると、なんだか人を描いた絵画がこちらをジッと見ているような視線を感じる。

 ……気のせい……ですよね?

 《教典》の話を聞いてしまうと、絵画ですらも生きているのではと思ってしまう。

 いや、いやいやいや……

 私、怖いの苦手なんですよ、やめてくださいよ……

 あー、これ今夜寝られないやつですね。仕方ないです、アイリスに一緒に寝てもらいましょうそうしましょう。

 あちこちを見て回っていたアイリスがこちらへとてとて歩いて来ると、満面の笑みで私に告げた。



「セリアさん、なんだか絵の人たちがこっち見てます!」



 や、やめてくれー! せっかく考えないようにしてたのに……

 気のせいです、気のせい。おかしなことを言いますね、この子は。絵が動くはず……動くはずなんて……



「なんですかアイリス、胸はこんなにあってもデリカシーはないんですか」

「えっ、いやっ、セリアさんダメです……!」



 ……なんだかイケナイことをしている気分になるじゃないですか。

 えっちぃのはダメですよ! R指定R指定!

 くっ……、今すぐにでも引きちぎってやりたいものですが、寝る前などに顔をうずめると落ち着くので、あのままにせざるを得ない……

 なんたるジレンマでしょう。こんな気分にさいなまれたのは初めてですよ。やはり胸は人間関係を壊す兵器なので、全員所持を禁止しましょう。

 非胸三原則を発足したいと思います。

 内容は『(巨乳を)持たず、(パッドで胸を)作らず、(胸へと栄養を)持ち込ませず』の三つとします。

 そんな悶々とした気分のまま、校外学習は幕を閉じた。

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