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語彙力最強少女の英雄譚  作者: 春夏冬 秋
第二章 《夏期休暇》編
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40.こんな時期に転入生?

 人生というものは、想定外や不思議な出来事の連続であり、それらであふれている。

 それに踊らされるのもまた一興と考える者もいれば、人生は自分が主人公であり、思いどおりになるべきだと考える者もいる。

 私とて一人の人間。このような出来事の一つや二つ体験しているもので、現にこの世界にいることがそれを物語っている。

 異世界への転生や、《言霊》という不思議な力の取得など、普通ならありえないと切り捨てていたものばかり、私の人生に関わってきた。

 逆もまたしかり。本来想定されているであろう事柄が、その想定とは外れた形で起こってしまえば、それはもう受け入れざるを得ない。

 まあ、私のたどってきた人生と比べれば可愛いものなわけですが、学生ならば一喜一憂するだろうイベント・『転入生の来校』が、今まさに起こっていた。



「転入生? この時期にですか?」

「ええ、なんでも、隣国から引っ越してきたようで」



 隣国……、神様の口ぶりから、《ラングエイジ》は一つの『世界』だと思っていましたが、歴史書にもそのようなことが明記されていましたね。

 まあ、《ラングエイジ》を取り仕切るのが国王なら、国であることは当然なわけですが。

 それにしても、どこからでしょう……



「隣国、というと?」

「ここから西に少し行くと、《フレージアル皇国》という場所があります。そちらからだそうですね」



 《フレージアル皇国》ですね。ちぃ、おぼえた。

 皇国ということは、天皇の治める国なわけですよね。なんだか日本に近いものを感じます。



「では、入ってきてください」



 先生が扉に向かって声をかけると、ガラガラと開かれ、毛先に少しウェーブのかかったプラチナブロンドの髪を揺らしながら、二人の少女が入ってくる。

 その少女たちはまさに瓜二つ、鏡合わせと言ってもいいほど。違いと言えば、髪の長さと表情の絶妙な違いくらい。

 まず初めに自己紹介をしたのは、肩口までのショートにした少女。

 どんぐりのように丸っこい瞳を潤ませ、媚びたような猫なで声を発する。ナーゴロゴロ。



「あたし、双子の姉で、エミル・ミソロジアって言います♡ わからないことばかりですが、よろしくお願いします♪」



 この子あれだ! 大学生の合コンで「イケメン」とか「高収入」の人にチュッと視線送るタイプの嫌われる女だ!

 今、ちらとこちらを見た気がしましたが……

 もしや、私を狙って!? 私にはアイリスという心に決めた人がいまして……、私、あなたの気持ちには応えられないの! ……ごめんなさい。

 と、告白をフっている感を出すも、気にするふうもなく、すぐに視線を前へと戻すエミル。なんだよ寸劇に付き合えよなー。

 次に話し始めるのは、眠たげでうつらうつらとしたまぶたを、なんとか持ち上げようとしている少女。

 先ほどから足下がおぼつかず、まぶたが一瞬下りきると、一歩、また一歩とあっちへこっちへフラフラ。



「妹、ナツハ・ミソロジア……です……。よろしくお願いし……ぐぅ……」



 自己紹介の途中で寝ちゃいましたよ。それも、先ほどのフラフラしていた様子はどこへやら、しっかりと直立し眠りに入る。まるで、ベッドで寝ているように快適そうに見えてしまう。

 なぞなぞで、逆立ちしたら寝られない動物な~んだ? の反対で、逆立ちしても寝られるのはだ~れだ? とか作ったら、確実に答えがナツハになることでしょう。



 媚び媚び月々一万円からのエミル・ミソロジアとは真逆……と言えばいいのでしょうか、なにごとにも興味のなさそうな妹、ナツハ・ミソロジア。

 この学院には変わった人ばかりが集まるため、面白いことが尽きないのが楽しいんですよね。

 しかし、彼女たちにはどこか怪しいと感じるところが多々あり、少し警戒しているというのが正直なところですが。

 ……まあ、ああいったぶりっ子キャラやマイペースなキャラというものは、一物いちもつ抱えていると思われることも少なくありません。

 私の杞憂きゆうで終わればいいのですが……



「転入生の人たち、可愛い子が入ってきましたね」

「え、そうですね……」



 私の耳元で小声でそう声をかけてくるアイリス。その声に、私は少し気のない返事をしてしまう。

 なによ! 私というものがありながら、あの子たちに気持ちが動き始めてるの!? 浮気よ、そんなの許さないわ!

 それに、直立で眠りこける妹をかたわらに、エミルはこちらへとジッとした視線を向けてくる。いや、こちらへというよりは、アイリスにでしょうか。

 また厄介なことになっていなければいいのですが。

 エミルはとことこアイリスの前に来ると、にっこにっこにーな笑顔で、とんでもないことを口にする。



「これからよろしくお願いします♡ アリシアお姉様♡ あっ、アイリスお姉様って呼んだほうがいいかなぁ?」



 どうしてこの子は言葉の端々(はしばし)にハートマークを付けちゃうのかしら。若いうちからそんな色目使って! お母さんそんな子に育てた覚えありませんし、そもそも育てた覚えもありませんでした。



「えっ、は、はい……」



 少し身を引き気味に答えるアイリス。

 引いているのは、彼女の話し方に対してなのか、それとも他の誰にも明かしていない本名をピタリと言い当てられたからか。

 おそらくは後者でしょう。どこから情報を……



「セリアお姉様も、よろしくお願いしますね♡」



 ここで中指を立てて、「よろしくするわけねえだろ、このアマ! 帰ってママのミルクでも飲んでな!」と返すのは簡単ですが、いろいろと気になることもありますし、表向きだけでも仲よくしておきますか。



「はい、よろしくお願いします」



 ここで(笑)とか最後に付けてもよかったのですが、まあそこは勘弁してあげますよ。私ってば優しいので。



「アイリスお姉様ってば、すごい綺麗ですよね♡」



 待ちなさい、なにをアイリスと腕を組んでいるのです! 私だってしたことがないのに! インヴィディアではないですが、羨ましいことこの上ないです。

 なによアイリスってば、身長が低いほうが好みなの? ロリがいいんですかロリが! それなら私にも考えがあります。

 私もロリになります!

 私が心の中で一人で対抗心を燃やしているのを知ってか知らぬか、エミルはこちらへ視線を送り、口元をふっと歪めた。



「このガキ……!」



 思わず汚い言葉が出てしまいましたが、もう私は止まりませんよ。怒ったかんな! 許さないかんな!

 地味に胸も大きいんですよ? なんですか、私への当てつけですか。

 ちょっと、アイリスに胸を押しつけてるんじゃないですよ! 当てつけの次は押しつけとは。かーっ、卑しか女ばい!

 またもや私の心を見透かしたように、ニヤリと声をかけてくる。



「セリアお姉様、ご飯しっかり食べてますかぁ~?」

「食べてますが、なにか?」

「いやぁ、あたしとは栄養の行き着く先が違うんだと思ってぇ~♡」



 胸元をさすりながら言うエミル。こんのぉ……! 切り落としてあげましょうか。

 誰がこんな小娘と仲よくするもんですか。ふんっ! あんたなんか知らないから!

 それをなだめるように、先生が仲裁ちゅうさいする。



「まったく、二人とも仲よくしてくださいよ。こんなことを毎日されては、こちらも堪ったものではありません」



 やれやれと額に手を当て、深くため息を吐く。

 あーっ、エミルちゃんが先生をいじめたー! いーけないんだー!

 私は悪くないもん! 喧嘩を売られただけだもん!

 突然やって来た転入生。私の目は誤魔化せませんよ。彼女たちには、必ずなにかある。起きるであろう波乱の展開。

 これからもスローライフは送れそうにないですね。

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