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語彙力最強少女の英雄譚  作者: 春夏冬 秋
第二章 《夏期休暇》編
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37.図書館は言葉の宝庫

 今日は土曜日、そう……お休みの日です!

 《ワーディリア図書館》に、アイリスは勉強を、私は《ラングエイジ》の歴史についてを調べに来ました。

 さすがは言葉の世界、それの象徴たる書籍が大量に蔵書されているようで、見渡す限り、際限ないように見えるほどの大きさがある。



「うっわ、難しそうな本ばっかりですね……」

「それ、絶対本が好きな人の前で言っちゃいけませんからね」



 難読な漢字が使われたタイトルに、あからさまな難色を示すアイリス。

 「うっわ」とか言おうものなら、本好きに怒られますよ。

 私も本は好きですが、寛容かんようなのでそれほどでは怒りません。短気は損気という言葉もあるくらいですから。



「では、勉強でも始めましょうか」

「はーい、……あっ」



 「あっ」? なにかあったのでしょ――



「アイリス、勉強道具はどうしました?」

「あっははは……忘れましたごめんなさい」



 手にはなにも持っておらず空っぽ。

 教科書はおろか、ペンの一本も持ってきていない。



「……まあ、忘れたものは仕方ありません。帰ると遠いですし、ここで《出没自在》を使うのもあれですし、今日は読書タイムにしましょう」

「はーい!」



 ここ数日で一番元気な返事。

 『図書館ではお静かに願います』の貼り紙をフル無視での返事に、図書館員さんがこちらをキラリとにらみつける。

 背後からの視線にアイリスは気づくことなく、図書館員さんの無言の抗議は空振りに終わった。

 蔵書種は、0~9の十進数による『十進分類法』というもので区分けがされており、大きなジャンルごとに、一〇個のグループが成されている。

 私の目的となるものは、第2類「歴史」。



「さすがの規模の図書館だけあって、歴史書なんて当然のように置いてあるんですね」



 他には、なぜか歴史コーナーに並べられている、神話や童話の本。えっ、なんですか、神話がかつて本当に存在していたとでも?

 いくつか種類のあるうちの、一番分厚い歴史書を手に取る。

 重ッ!! 持てないわけではありませんが、持ち運びには適してなさすぎますよ……

 ですが、情報を手に入れるためには、これが最適でしょうからね。大は小をカーネルと言いますしね。クリスマスは今年もやって来ます。

 持って席に着くと、黙々と本を読み漁るアイリスの姿が目に入る。

 それを横目に、歴史書を見てみる。

 表紙はいたって普通の本。しかし、著者名には驚かざるを得ませんでした。



「――著者・《セルシア・リーフェル》……!?」



 《セルシア・リーフェル》、かつての《ラングエイジ》を支配していた魔王なる存在。現在は滅んでいるそうですが、なにを機にかはわかっていない。

 目次項を見てみれば、「《ラングエイジ》について」、「《言霊》について」、「言語の習得に関して」など、この国の発展や起源を見てきたような見出しが。

 ひとまず第一項目から、ゆっくりと見ていくことにした。



『第一項目「私の存在」

 初めは意味がわからなかった。

 神様だの生まれ変わりだの、なにをバカなことを。どうして私が国の発展になんて携わらねばならないのか。

 でも、神様は言った。「君には面白い力をプレゼントしよう」と。なんのことか想像もつかない。生まれてこの方、私には力なんてものはなかったのだから。』



 ……なるほど、《セルシア・リーフェル》は、どこかから転生してきた人物というわけですね。

 しかし、《ラングエイジ》の発展に関わっていたにも関わらず、なぜ支配する道を選んだのか。

 ……いや、発展させたからこそ頂点に立てるわけですか。なんとも複雑な成り立ちでできた国なのですね。

 それに、歴史書というよりか、日記と言ったほうが適切かもしれません。



『第二項目「この国に伝わるもの」

 この国には「言葉」が存在しない。いや、正確には失われたそうだ。どうしてそうなったかはわからない。

 そのため、国民はジェスチャー、ボディーランゲージでの会話をおこなっていた。

 昔より遺されていたと思われる書物を読み漁り、ある一つの存在を知った。これは、のちに記すことにする。

 それならばと、私はこの国を支配することにした。私にはその力があるからだ。』



 国を支配する力……? 国家権力でも握っていたのでしょうか。

 それに、言葉が失われた? いつ? どうして? 《ラングエイジ》には謎が多すぎる。

 そもそも、言葉の起源自体も謎が多い。どうして出来上がったのか。

 他国より伝わったりだとかはよく聞きますが、それこそ本当かはわからない。



『第三項目「私の力」

 神様から与えられた力。おそらくは、古来より《言霊》と呼ばれる不思議な能力のことだろう。

 なぜ私にこの力を、と疑問は残るものの、この力があれば私は国家を動かすことができる。

 手始めに言葉を教えてみようか。それによって人を憎み、恨むように仕向け、戦にまで発展させてみようか。考えていれば尽きることがない。

 ――力ってものは素晴らしい。

 こんなものがあれば、人が狂うのも納得だ。

 これからは私の時代、私の創る国家だ。』



 このときにはすでに、人間同士を戦わせようとする思考が芽生えていた。

 授業で聞いたとおりならば、それ故に人間に《言霊》の力を与えた。その火種となった力を、今私は有している……

 心を強く持て。この全知の力に呑み込まれないように。



『第四項目「言葉の力」

 やはり、言葉というものは面白い。

 たった一つの、口から発せられる文字の羅列。それだけで、人々は愉悦し、悲壮し、杞憂する。

 言葉とは、時に武器となり、時に盾となり、時に癒し、時に救済し、時に人を殺す。

 《言霊》という力は、まさに言葉を体現したもので、人を癒せば人を助け、さらには人を傷つける。

 ふわふわ言葉やチクチク言葉とはよく言ったもので、ふわふわ言葉は人の心を浮き足立たせ、チクチク言葉は人の心に突き刺さる。まさにピッタリの言葉だ。

 今までの戦の種となってきた言葉。やはり、この《言霊》を使い、人間に戦をさせてみようじゃないか。

 ――これから楽しい愉しい宴の始まりだ。』



 ……言葉の力、ですか。

 確かに、ここに書かれていることは的を得ている。

 いい方向への利用を願う国王とは反し、《言霊》という力を悪用する者さえ現れる始末。

 現在では改心したものの、《七色の大罪(モルトリア)》がその例となり得るでしょう。

 とはいえ、戦闘で《言霊》を使用しているのは私とて同じ。それが時に人を傷つけていることなどわかっている。

 でも、こちらから力を振るうことはない。

 言ってしまえば聞こえはいいが、私は人を護るためにこの力を使う。人に向ける。



『第五項目「《ラングエイジ》の建国」

 国民自体はいたものの、「国」としてはしっかり成り立っていなかったこの地。

 ならば、国として建国し、他国に宣戦布告をしようじゃないか。我が国は一番だと。

 私は《言霊》で戦えるように国民を育て、他国をも――いや、世界を私が統治する。

 であれば、言葉で成り立つこの国を周知させる名をつけよう。

 言語を意味する「langage」より名付け、ここを《ラングエイジ》とする。』



 世界を統治する。かつて《七色の大罪(モルトリア)》が掲げていた目的。その第一歩として狙われたのが、国を統治する王の娘――王女であるアイリス・フェシリアもとい、アリシア・ラングエイジ。

 《七色の大罪(モルトリア)》を創立した大本の組織は、魔王《セルシア・リーフェル》に反旗はんきひるがえした人たちの集まりなのではないか、との考えが頭に浮かぶ。

 果たしてそうならば、その組織は魔王の被害を受けた被害者たちとなる。

 私から言えることは推測しかありませんが、その可能性を捨てきれないのもまた事実。

 とはいえ、これで《ラングエイジ》のことについてはある程度わかりました。すべてがわかったわけではないため、再度なにかしらで調べる必要がありますが。

 私は本を閉じ棚に戻すと、図書館をあとにした。

 これからの動きの方針を固めていかねば。

 ――私に与えられた使命を見つけるために。

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