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語彙力最強少女の英雄譚  作者: 春夏冬 秋
第二章 《夏期休暇》編
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36.何事もコツコツと

 「ちりも積もれば山となる」とはよく言ったもので、塵という小さくわずかなものであっても、積み重ねれば山のように大きな実りとなるというたとえ。

 これに似たもので、「努力は必ず報われる」なんてものもありますが、先ほどとは違い、こんなものは真っ赤な嘘。赤通り越して赤外線。

 努力でどうにかなるのなら、極論今頃は人間が空を飛び、タイムマシンが開発されているでしょう。

 人間には翼がないために飛ぶことは不可能で、相対性理論が破られない限りはタイムマシンなんて夢のまた夢。

 これは、言ってしまえば根性論なわけです。

 そもそも三次元には「時間」の概念がないらしいので、時間を行き来するなんて無理な話ですが。

 努力とは、個人個人に合ったものがあり、その合ったものを伸ばそうとしなければ、伸びるものも伸びない。

 しかし、誰でも伸びることのできるコンテンツが勉強なわけですが……



「うぅぅ……地理難しいです……」



 現在勉強しているのは地理。

 塵もとい地理を積もらせているわけですが、やはり一から山を作るとなると、相当な時間と労力が必要なわけで。

 しかし、すでに山を作り始めていた人と比較するなど愚の骨頂。誰かと比べてもいいことなどありません。

 比較をしてしまえば、どこかで劣る部分が必ず出てくる。そうなれば、「自分はできない人間だ」と自己嫌悪に陥り、なにに対しても行動を起こす気力をなくしてしまう。

 人生とは自分との戦いなのです。



「別に街の特色なんて興味ないですよ……」

「まあ、何事も言ってしまえばそれまでですけどね」



 正直、私だって興味ないですよ。

 歴史の授業を初めて受けたときなんて、「関ヶ原ってどこだよ」とか「信長、はよ本能寺から逃げな」とか思いながら授業受けてましたから。

 昔の戦争なんて知ってどうするんですか。戦わされるんですか? まあ、今なら勝てますけど。

 私だってヤダヤダヤダ! 勉強やりたくなーいー! ですが、やらなきゃいけないことなわけでして。

 とはいえ、モチベーションが続かなければ手を伸ばしたくならないですからね。



「それなら、アイリスの好きな教科をしましょうか」

「好きな教科……。あっ、家庭科!」



 家庭科ですか。嫌な予感しかしませんが、一応訊いておきましょうか。



「ちなみに、どうして家庭科を?」

「だって、授業でご飯が食べられるじゃないですか!」



 やはり調理実習でしたか。

 あれは別にご飯を食べることが目的ではなく、料理というものに触れる機会を作るものであって……



「じゃあ、キッチン行ってきます」

「ちょっと待ちなさい」



 ビックリしたぁ……

 まさかの実習のほうですか? なんですかそれなら私と保健体育の実習でもしますか? ……なーんちゃって。いやほんとにごめんなさいコミュニティガイドラインには抵触してません私の勝ちですはっはっはー。



「実習ではなく座学に決まっているでしょう」

「えっ、座学……? ご飯は……?」

「いや、もう小一時間したら夕飯の時間でしょう。もう少し我慢してください」



 涙目になるアイリスに無理を強いるのは心が痛いですが、食事は摂ればいいものではありませんからね。



「それに、栄養の摂りすぎは体調不良や病気につながります」

「病気ですか、それは嫌ですね……」



 顔をしかめながらすごすごと席に戻る。

 しかしやはり勉強が手につかないのか、「うぅ……」や「あぅ……」などと呻いては体勢を変えを繰り返している。

 すると、アイリスの嘆きを感じ取ったかのように、扉がコンコンと三度ノックされる。



「はい」

「セリア様、アリシア様、ご夕食の用意ができました」

「わかりました。アイリス、ご飯です行きますよ」



 すると、パアッと顔を明るくし、スキップ気味に部屋を出る。その様子は、イヌだったら尻尾をちぎれんばかりに振っていたことでしょう。

 


     ◇


 

 食事を終え、元気一〇〇倍になったアイリスは、黙々と机に向かっていた。

 やはり、苦手なものに集中が続くはずもなく、すぐに脱落していたが、先ほどから見れば進歩でしょう。

 今回はピグリティアがそばについている。



「うぅ~……わかりません……」



 またもやうなり始めたアイリスに、ピグリティアがツカツカと歩み寄る。



「おや、数学ですか。よろしければ、わたくしがお教えしましょうか?」

「えっ、いいんですか!? お願いします!」



 こくと一つ頷くと、一問一問を丁寧に解説を交えながら教えていく。



「ここはですね、この公式を――」

「……なるほど、わかりやすいです!」

「それはそれは……痛み入ります」



 むうぅ……、なんですかなんですか、楽しそうにしちゃって。羨ましいです。

 私だってアイリスとあんなふうに……

 ……いえ、今は勉強中。あまり余計なことは考えないようにしましょう。

 アイリスの様子を視界の端に捉えつつ、気を紛らすために、歴史の教科書を開いてパラパラとる。

 初めのページの内容は「《言霊》について」。

 やはりこの世界の要となる《言霊》、そのことについて早々に学ぶものなのでしょうか。

 元の世界での「言霊」とは、言葉に宿る不思議な力、発したとおりの結果を現す力があるとされた言葉。

 まさにそのとおりで、四字熟語の意味と似た力を顕現できているわけですが……



「なぜ、四字熟語なのでしょうか……?」



 《ラングエイジ》は、日本語文化ではないはず。当然昔のことは知りません。元より日本語を使用していた国なのかもしれません。

 そうなると、ここはあの世界のパラレルワールド的存在となってくるわけで……

 もしかすれば、どこかから日本語を取り入れる機会があったはず。



「――もしや、日本から転生してきたのは、私だけではない……?」



 そうなると、この国ができた当初、もしくはそれに近い時代からこの世界に来た人がいるはず。

 ……ダメだ。私には、この世界の知識が少なすぎる。

 近いうちに、どこかしらで調べてみましょうか。

 さすがに教科書だけでは、手に入れられない知識もある。前に授業で言っていた、歴史書でも探してみましょうかね。

 これで、次の目的は決まりました。

 あとはそれを進めつつ、テストに向けた対策をするだけです。

 人間、タスクを整理しないとなにをすればいいかがわからなくなりますからね。

 マルチタスキングができない生きものが故でしょう。



「アイリス、明日はお休みなので、図書館デー……勉強しましょう」



 うっかり図書館デートなんて言っちゃうところでした。あぶないあぶない……



「図書館で勉強ですか? わかりました、《ワーディリア図書館》ですか?」

「はい、そこで構いませんが……私はあまり詳しくないので、案内お願いします」



 正直なことを言うと、「そこどこやねん」なんですけど、おそらくは大丈夫なのでしょう。



「任せてください! わたし、方向音痴ってよく言われるんですけど、たぶん大丈夫です!」



 わぁ、こんなに不安になる言葉は初めてだぁ。

 学院までは行けていたのに、その他に行けないとはこれいかに。



「学院には無事に向かえていたみたいですが?」

「学院は楽しみすぎて一〇回くらい下見に行ったので迷わなかったですね」

「ああ、なるほど……」



 さて……地図でも借りましょうかね!

 でも、図書館にも何回か――

 ……よく考えたら、図書館を何度も利用しなさそうですもんね。本棚にも教科書以外に漫画しか置いてなかったですから。

 今度、学院の図書室にも寄ってみましょうかね。

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