《嫉妬》:インヴィディア
ボクとしては、セリアはまだ嫉妬の対象ではあるさ。
なにを隠そう、彼女はボクよりも能力がある。天性のものか、努力の賜物か。それはわからないけれど、ただただ羨ましい。
……いや、嫉妬と言うよりは、羨望のほうが近いかもしれない。意味は同じだけれども、なんだか後者のほうが、憧れも混じってるみたいだから、ボクはこっちを使う。
憧憬とは違うんだよね。
ボク的に「羨望」は、嫉妬五〇パーセント・憧れ五〇パーセントってイメージだから、今のボクの心境に合ってる。
まあ、そんなことはともかく。
さすがに《全知全能》を手に入れることは不可能だから、それに近づけるような努力を最近はしてる。
とはいっても、かなりの頻度で引きこもってたわけだから、体力にはあまり自信がないし、力だってすごい非力なわけ。
王女暗殺の任に赴いたときは、かなり疲れてたところを無理して動いて虚勢張ってたところあるし、普段使ってる大剣は見た目によらず軽い。
もやしのボクでも軽々振り回せるくらいには。
セリアとの初めての戦闘では、厄介なことこの上なしだよ。
危機回避能力の《危機一髪》、身体蘇生能力の《起死回生》、最硬拘束能力の《手枷足枷》。
まあここまで多種多様な《言霊》を簡単に使いこなすもんだよ。
極々稀に複数の《言霊》を所持している人もいるみたいだけど、戦闘時にはテンパって状況に合った能力をとっさに発動できないって聞くからね。
ボクはその噂を鵜呑みにしすぎたから、セリアだってそうなんだろうと思ってた。
けれど、今考えれば、うちの実力者を返り討ちにしてるんだから、そんなことあるわけないよね。
どちらかと言えば、ボクのほうが焦っていたみたい。
ボクの《言霊》でセリアを仕留めたところまではよかったけど、蘇生能力を発動しちゃうんだから困ったものだよ。
それだけでも困りものなのに、生き返ってからの登場シーンがカッコよすぎたもんで、思わず惚れちゃいそうだったよ。
それからは怒濤の《言霊》使用であっさり敗北しちゃったよね。
もやしとは言っても、そこそこに動けるもやしだったから、今までの護衛はなんとかなってた。《言霊》連発なんてされる前に倒してたから、ボクでも戦えたってわけ。
そんな昔話はそこそこに、今のボクはかなり強くなったんだよ? セリアと対等に戦えるくらいにはね。
それに、騎士団に入ったことで、功績を挙げれば評価されるし、バッジって形で目に見えるから、ボクはうれしいのなんの。
今の楽しい生活はセリアのおかげかな。
後日談は今話で完結となります。後日談が7話で一区切りだったので、1週間毎日の更新でしたが、次回からの二章は今までどおり毎週水、土曜日の更新になります。
二章は《夏期休暇》編と銘打ちますが、半分三章に触れるものとお考えください。




