《怠惰》:ピグリティア
わたくしは、自分がわからなくなっていました。
両親からは冷たくあしらわれ、それはわたくしの出来が悪いからだと思い、褒められるように努力しました。
学校では、テストを満点取り、ちょっとしたものでしたが、委員長のような役職に就いたりもして。
――それでも、ダメでした。
両親はわたくしのことを冷たく見ていたのではなく、そもそも見てくれていなかった。
冷たくあしらわれていたのは、出来がどうこうではなく、道に落ちている石ころに向けるような『無』。
なにも感じない、なにも思わない、いわば『虚無』。
ですが、それでもいつかは振り向いてくれると信じ、また努力を重ね、新しいことにも挑戦し、成功すれば両親に報告し。
それでもやはりダメでした。
そしてある日、両親の会話を聞いてしまいました。そのときのわたくしは、どんな顔をしていたでしょうか。
きっと、顔をひきつらせ、だらしなく涙を溢れ流していたことでしょう。
そこで聞いた言葉と言うのも、「あの子は面倒だ」、「あんな子は生まなければよかった」、「どこかにやってこないか」という、わたくしを見放す言葉のオンパレード。
今はダメだとわかっていても、思わず声を出して、顔がぐしゃぐしゃになるほど泣いてしまった。喉からは嗚咽が漏れ、これでもかと咳き込む。
その声に気づいて来た両親の目は、厄介なものを見るものだった。まるで、そこにゴミでも置いてあるかのように。
そして父につまみ出され、途方に暮れたわたくしは、裏路地で一人寂しく死ぬことを決意した。
なにも食べず、なにも飲まず、なにも思わず、なにも欲しがらず。生存本能、思考能力、欲望など、人間にあるありとあらゆるものを捨てた。
だんだんと視界が霞み始め、本来はないはずの川が見え始めもした。
そんなときに声をかけてきた少女がいた。そうです、イラ様のことです。イラ様はわたくしに言いました。
「あんたの捨てた夢や希望、与えられなかった愛情、すべてをあげる。だから、アタシについてきなさい」と。
もうわたくしはどうでもよかった。相手が誰だろうと、どんな人だろうと。
でも、イラ様は口調は乱暴ですが、わたくしたちに向ける愛情は親のものに近く、そこでわたくしはイラ様に付き従うことを決めた。
しばらくなにもしていなかったがために、どうしても働くことに積極的になれなかった。働いても意味がないと思ってしまっているのでしょうか。
今ではリハビリを兼ねた給仕で戻りつつありますが。
それに暗殺なんてものはわたくしには向かず、できればやりたくはなかったですね。
セリア様による組織の壊滅……これは、ある意味僥倖だったのではないでしょうか。
感謝します、イラ様、セリア様。




