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語彙力最強少女の英雄譚  作者: 春夏冬 秋
一章・後日談
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《怠惰》:ピグリティア

 わたくしは、自分がわからなくなっていました。

 両親からは冷たくあしらわれ、それはわたくしの出来が悪いからだと思い、褒められるように努力しました。

 学校では、テストを満点取り、ちょっとしたものでしたが、委員長のような役職に就いたりもして。

 ――それでも、ダメでした。

 両親はわたくしのことを冷たく見ていたのではなく、そもそも見てくれていなかった。

 冷たくあしらわれていたのは、出来がどうこうではなく、道に落ちている石ころに向けるような『無』。

 なにも感じない、なにも思わない、いわば『虚無』。

 ですが、それでもいつかは振り向いてくれると信じ、また努力を重ね、新しいことにも挑戦し、成功すれば両親に報告し。

 それでもやはりダメでした。



 そしてある日、両親の会話を聞いてしまいました。そのときのわたくしは、どんな顔をしていたでしょうか。

 きっと、顔をひきつらせ、だらしなく涙を溢れ流していたことでしょう。

 そこで聞いた言葉と言うのも、「あの子は面倒だ」、「あんな子は生まなければよかった」、「どこかにやってこないか」という、わたくしを見放す言葉のオンパレード。

 今はダメだとわかっていても、思わず声を出して、顔がぐしゃぐしゃになるほど泣いてしまった。喉からは嗚咽おえつが漏れ、これでもかと咳き込む。

 その声に気づいて来た両親の目は、厄介なものを見るものだった。まるで、そこにゴミでも置いてあるかのように。



 そして父につまみ出され、途方に暮れたわたくしは、裏路地で一人寂しく死ぬことを決意した。

 なにも食べず、なにも飲まず、なにも思わず、なにも欲しがらず。生存本能、思考能力、欲望など、人間にあるありとあらゆるものを捨てた。

 だんだんと視界がかすみ始め、本来はないはずの川が見え始めもした。

 そんなときに声をかけてきた少女がいた。そうです、イラ様のことです。イラ様はわたくしに言いました。

「あんたの捨てた夢や希望、与えられなかった愛情、すべてをあげる。だから、アタシについてきなさい」と。

 もうわたくしはどうでもよかった。相手が誰だろうと、どんな人だろうと。

 でも、イラ様は口調は乱暴ですが、わたくしたちに向ける愛情は親のものに近く、そこでわたくしはイラ様に付き従うことを決めた。



 しばらくなにもしていなかったがために、どうしても働くことに積極的になれなかった。働いても意味がないと思ってしまっているのでしょうか。

 今ではリハビリを兼ねた給仕で戻りつつありますが。

 それに暗殺なんてものはわたくしには向かず、できればやりたくはなかったですね。

 セリア様による組織の壊滅……これは、ある意味僥倖(ぎょうこう)だったのではないでしょうか。

 感謝します、イラ様、セリア様。

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