《傲慢》:スペルビア
思えば、あなたと出会ってから、もう約二ヶ月が経つわけですか。
時の流れは早いもので、あなたに促され、《七色の大罪》を辞めて学院の教師になり、世界が変わったように楽しい日々を送っていますよ。
初めて会ったときは驚きましたよ。
社会科教諭、レイア・シルエスタに扮し、学院に潜入したときのことです。
あなたの情報は回ってきていたので、なにか情報を集めようと、生徒の《言霊》をまとめてある、クラス名簿を確認してみれば、あなたの《言霊》の欄には《全知全能》と書かれているではないですか。
そのときは、なんて厄介な任務に手を出してしまったのでしょうかと後悔したくらいですよ。
ですが、不可能のない私であれば、簡単に達することのできるものだと思っていた、過信しすぎていた。
不可能はないと豪語している私にも、しっかりと不可能なことはあった。
……なんて言っていますが、私の代名詞となった今、自己紹介では不可能はないと言っていますが。
私の苦手とする(不可能ではない)変装はあっさりと見破られ、あろうことかセリア・リーフの変身能力を見破ることができなかった。
だって、アイリス・フェシリアの口調などを完璧に真似するんですよ。あれは厄介でした。
彼女の助言を受け、別の仕事に就くことにした私。
それならば、私にはなにができるのか? 私のおこなっていた暗殺業、それを応用した戦闘技術の指導ならば、私に合っているのではないか。
というのは口実に、アイリス・フェシリアを眺められる仕事を探していたのですが。あとは……セリア・リーフを。
こんなことを言ってしまうと、セリア・リーフにバカにされてしまいそうなので、言いませんけど。
こんな形で普通の教師としての生活を送っているわけですが、心のどこかでは、人を殺めてきた私に、普通の生活を送る権利なんてあるのかと思ってしまっている。
世間から突き放されているのではないかという不安や寂寥感。本当は生徒たちから認められていないのではという恐怖。
そんなことはないとわかっているはずなのに、心の中に潜む、もう一人の私がそれを否定し続ける。
「お前に居場所はない」、「お前に味方はいない」、「お前の存在に価値はない」と。
しかし、こんな私のことを、あなたは認めてくれましたよね。それがうれしかった、それだけで私の存在に対して希望が持てた。
ありがとうございます、セリア・リーフ。
私からは、こんな簡素で短い言葉しか言えませんが、これだけは伝えさせてください。




