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語彙力最強少女の英雄譚  作者: 春夏冬 秋
第一章 《王女護衛》編
32/98

31.再来

「はあ!? あんたも降りるっての!?」



 インヴィディアの帰宅後、開口一番に挙げられたものは、怒声だった。

 セリアとの『ゲーム』で、アイリスを狙わないと約束したインヴィディア。

 ゲームをたしなむ彼女は、ルールや約束事にはとことん従っておこなう。



「だって、ゲームだよ? あの学院最強がボクとゲームって……これで勝てばボクが上なんだよ。ふふふっ……ココロ踊るよ」



 ニヤニヤと不適な笑みを浮かべるインヴィディア。

 言い出したら聞かない性格は、イラもよくわかっている。

 あきらめて、次の作戦に出ることとした。



「アヴァリティア、ピグリティア、残っているのはアタシたちだけ。三人でセリア・リーフを叩きのめして、王女を始末する」

「ですが、勝算はあるのですか? わたくしたちの《言霊》は割れており、『影縫い』すらも知られております」

「あー、確かにそだね。で、どうすんのさ、イラ」

「三人寄れば文殊の知恵って言うでしょ? 三人いれば大丈夫なのよ」

「なにさ、その理論は……」



 イラの突飛な発言に、アヴァリティアは呆れながら返した。

 そんなものは気にしていないとばかりに机を叩き、グッと拳を突き上げると、声高らかに宣言する。



「アタシたちで、学院最強を潰すわよ!」

 


     ◇

 


  昨日で、《七色の大罪(モルトリア)》メンバーの内、四人を説得し、アイリスを狙わないと約束させることができた。

 話のわかる人たちで助かりました。



「さすがセリアさん、平和的解決ですね!」

「ふふっ、そうでしょう? 平和の伝道師と呼んでもいいですよ」

「平和の伝道師……! カッコいいです!」



 目をキラキラと輝かせ、こちらに視線を向けるアイリス。

 適当なこと言ってしまったので、心が痛くなり始めました。いや、これは萌え……?

 ひとまずは四人を落としたとはいえ、残りは三人。

 とはいえ、あちらも焦り始めている頃合いでしょう。



「あんた、またこっちの人員を減らす気?」



 廊下の先で待ち構えていたのは、イラ、ピグリティア、アヴァリティアの三人。うちの制服を着ているあたり、騒ぎになりにくいよう配慮しているのが見える。

 噂をすればなんとやらというやつですか。

 まさか、三人で来るとは思っていませんでしたけど。



「この学院の強化ガラスは……なるほど、《天変地異》ですか」



 あらゆるものを破壊する能力であれば、強化ガラスなんて、普通のガラスと変わらないですからね。



「こっちは焦ってんのよ。それなのに、ポンポン減らしてくれちゃってさ……、いい迷惑なのよ」

「いい迷惑ですか。いいことをするのは気持ちがいいですね」

「なにをふざけたこと言ってるのよ! いい迷惑って、グッドじゃなくて皮肉よ!」

「あはは、そんなことはわかってますよ。本当にイラは可愛いですね」



 私が何気なく言うと、ピグリティアはふっと息を漏らし、ドヤッと満足げな顔をする。



「そうでしょう、イラ様は可愛いのです。それなのに、自分に自信がないようで、わたくしのアプローチに応えてくれないのです」



 うわっ、すごい話し始めた。

 推しについて語るオタク並みの早口。私もアイリスの話をするとき、こんな感じなんでしょうか……



「いや、自信がないからとかじゃなくて、あなたと結婚する気はないからね?」

「ほら、こんなに照れてしまって……」

「アイリスもそうなんですよね。いつも、はぐらかされてしまって」

「別に、わたしもはぐらかしてなんて……」



 なんですか、アイリスとイラの二人して……

 ほら、もっと正直になれよ。俺たちのこと、好きなんだろ?



「「これだから受けは……」」



 私とピグリティアの声が重なる。

 それに反論するように、アイリスとイラが声を挙げる。



「わたし、受けなんですか?」

「アタシは受けじゃないわよ?」



 その声を聞き届けると、居ずまいが悪そうに、アヴァリティアが問うてくる。



「あのさ……、話終わった? ウチ、完全に空気じゃん……。忘れられてるよね?」



 これは申し訳ないことをしました。

 でも、空気は人にとって大切ですからね。うん、だから……忘れてないですよ? ……うん。

 影ながらっていうのも時にはいいものですしね?



「ハハハ、ソンナワケナイデショウ? 覚えてますよ、ええ」

「いや、カタコトじゃん! 普通に忘れられてるし!」

「隅っこにいて話さないのが悪いんでしょう?」

「なんか逆ギレされた! イラ、あいつ理不尽だよ!」

「なによ、アタシ知らないわよ……」



 少し面倒くさがりながら返すイラ。

 こほんと咳払いをすると、改めて本題を話し始める。



「インヴィディアがヘンなゲーム持ってくるから面倒なことに……。そこで、あんたを徹底的に潰すために、三人で来たわけよ」

「面倒と言いつつも受けるあたり、真面目ですね。あっ、そうだ、あなたたちのせいで制服を買い換えるハメになったんですからね!」

「ち、違うわよ! 初めに雇ったやつらも使えなかったし、メンバーも一人で向かわせると負けるからよ! それと、制服に関してはインヴィディアに言ってちょうだい!」



 なんですか、責任放棄ですか。

 しかし、初めに雇った人……、ああ、もしかして裏路地の四人ですか。なるほど、《七色の大罪(モルトリア)》が雇った人たちでしたか。

 確か、一人は騎士団ギルドに引き渡したはずですし……。あとの三人はどうしているのでしょう?



「雇った人で、あとの三人はどうしました? まさかクビですか?」

「ええ、そうよ。でも、あんたの考えてるクビとは違うと思うけど」

「イラ様の言うクビというのは――」



 ピグリティアは親指を立て、首の前へと持ってくると、横へ一閃した。

 それが示すのは、もうわかりきっている。



「首だけにするという意味です。そこをご理解ください」

「やはり、斬首したというわけですか」



 暗殺を生業としているため、当然といえば当然のクビの切り方……首の斬り方ではありますが。



「それで、今からあんたをこの世からクビにさせてもらうから」

「そうしたいなら、インヴィディアでも連れてくることですね」

「大丈夫よ、ピグリティアがいればね」



 ピグリティア? 『影縫い』……いや、《意気沮喪》でしょうか。

 まさか、生きる気力をなくすつもりですか……?

 さすがにそれは対処できませんよ。私だって、《馬耳東風》を持っている身。自殺となれば、《空前絶後》は発揮されない。

 それに、場合によっては《起死回生》は発動しない。

 前回は戦うことが目的でないために、意識だけを失わせて帰ったわけですか……

 彼女たちに生かされ、今まさに殺されようとしている。

 私の命は《七色の大罪(モルトリア)》に握られていた……? ずっと泳がされていたと言われても不思議でない状況。

 どうしてか、本来の標的であるアイリスではなく、私が狙われている。

 ……いや、待ってくださいよ?



「そもそも、なぜアイリスなのですか? 現在国王であるお父様のほうを狙うのでは?」

「ああ、それなら、アタシたちがアリア・ラングエイジを始末したのちに、本人が『他の女性と関わるつもりはない』って語ってるの」



 アリア・ラングエイジを始末……? お母様を殺したのも《七色の大罪(モルトリア)》だと言うのですか? それに、なんの答えにもなっていない。



「だから、キルシア・ラングエイジは子供を作ることはない。それなら、王族の血筋を受け継がせる可能性のある、王女、アリシア・ラングエイジを狙えばいい」



 《七色の大罪(モルトリア)》の目的は「王族の血筋を絶やすこと」?

 それになんの目的が……。考えられるのは、《ラングエイジ》の支配ですが、それならばたった七人に任せることはないでしょう。

 他に考えられること……。まさか――――

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