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語彙力最強少女の英雄譚  作者: 春夏冬 秋
第一章 《王女護衛》編
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2.実戦

「セリアさんは――《全知全能》との結果が」

「……? それがどうかしましたか?」

「これはですね、存在する《言霊》すべてを扱える、世界で一人だけ持つ力なんです!」



 へえ……世界に一人。元々特別なオンリーワンなんですかね。

 異世界から来た私が持っていたのに、どのようにしてこの《言霊》のことを知ったのでしょう。

 まあ、ファンタジー世界ですから、なんでもありでしょう。ご都合主義って大事ですよ。



「《全知全能》? 私が?」

「ええ、そのように……」

「でも、他の《言霊》の力を知りませんし、使えませんよ?」

「《言霊》の能力をまとめた書物がありますので、そちらで勉強していただければ」



 なるほど、そんなものがあるんですね。それなら大丈夫でしょう。

 神様ってば、いいものくれましたね。太っ腹です。



「セリアさんって、すごいんですね! わたし、なんだか運命感じちゃいますよ!」

「運命だなんてそんな……けっ――」



 結婚を前提にお付き合いを申し込むところでした。危ない危ない……



「けっ?」

「け、結構うれしいですね!」

「はい!」



 太陽のように眩しい笑顔! 守りたい、その笑顔。

 周りの人たちの驚いた顔ったらありゃしないです。

 このあとは実際に《言霊》を用いて実戦みたいですからね。この力、早く試してみたいです。

 


     ◇

 


 これから実戦です。その前に、自分の《言霊》について知るために、紙が渡されます。

 私だけはもう、本が手渡されました。辞書みたいに分厚いやつです。いや、ものすごく浮いてますよ。本よりは紙の方が浮くのに。わけがわからなくなってきました。

 どんなものがあるか、試験に使えそうなものだけでも見てみましょうか。面白いものがあれば、あとで試してみましょう。

 へぇ……いろいろありますね。使えそうなものをピックアップしておきますか。

 


     ◇

 


 実戦の試験が始まります。

 闘技場みたいな場所に連れてこられました。お馴染みのドーム一個分はありますよ。ドームに行ったことはありませんが。

 うわ、すごい。こんなの、ファンタジーの世界だと思ってたら、目の前で繰り広げられていますよ! アニメみたいに激しい戦闘です。臨場感溢れるってやつです。

 おや、アイリスの番が回ってきたみたいですね。

 彼女の《言霊》は《百発百中》。矢や銃弾がすべて的に当たるという意味の言葉です。

 この力は、銃などをどこに向かって撃とうが、相手を視認さえできれば必中という能力。暗闇や遠距離、隠れている相手との戦闘では使用できないのがネックでしょうか。

 おそらく、飛び道具に能力をかけて使えるのでしょう。



「いきます! ――《百発百中》!」



 アイリスが近場の石を投擲する。

 カーブをしたかと思えば、上に向かって飛ぶなど、物理法則を無視した動きで相手に迫る。



「――《一騎当千》!」



 《一騎当千》、一人で一〇〇〇人を相手に戦うことができるほどに強いことのたとえです。この能力は、単純な筋力を爆発的に上げるものです。

 なるほど、相手は身体強化ですか。石を破壊するつもりでしょう。

 ……まあ、空振っては意味がないですけど。

 結局のところ石の破壊は叶わず、全弾命中して撃沈。

 この勝負、アイリスの圧勝で幕を閉じました。

 あの人はなにがしたかったんでしょう。

 


     ◇

 


 私の番がやってきました。

 相手は男性ですか。私、男性は苦手なので、一思いにやっちゃおうと思います。



「《言霊》は最強でも、使いこなせなけりゃ意味がないからな。俺の勝ちだな」

「あはは、そんなこと言って大丈夫ですか? 負けたときの言い訳考えた方がいいのでは?」

「なんだと!? ふざけるなよ!」



 こんなに簡単に怒って……最近の若者ですね。私も若者ですけど。

 相手は腰の鞘から剣を抜き取る。

 え、剣とかありですか!?



「食らえ! ――《一刀両断》!」



 いや、それはさすがにマズイですよ! 真っ二つですって! ――私じゃなければ。



「はあ!? 今、確かに斬った感覚があったのに……」



 《一刀両断》、一太刀で二つに割ること。

 一刀のもとにどんな物質も切り伏せる能力。それがたとえ、刃物の物質より(・・・・・・・)硬くとも(・・・・)

 人間なんて、あっという間にすぐに沸くわけではなく、真っ二つ。ここで惨状を目の当たりにすることになりますよ。

 私に《一刀両断》の効果がなかったタネ明かしをいたしましょう。



「面白いものをお教えします。《空前絶後》、ご存じですか?」

「いや……」

「この力は、あらゆる事象をなかったことにするんです」



 うーん……説明が難しすぎましたかね? みなさんぽかん顔です。



「簡単に言えば、斬られたことをなかったことにした(・・・・・・・・・)んです」



 《空前絶後》、今だかつてなく、これからもまずあり得ないことを言うもの。

 自身に与えられる危害を、かつてにもなかったことに、そして、これからもあり得ないこととする能力。

 あらゆるものをなかったことにするのですが、当然例外は……あります! 若返りの細胞があるかは知りません。



「そんなの反則だろ!」

「これがなければ私、縦に半分でしたよ? 惨劇です。斬撃で惨劇ってね」



 一気にシーンとなりました。ここ笑うところですよ。

 あと、これ自動で発動するんですよ。なので、不意打ちされても大丈夫なんです。強すぎませんか?



「宣言します。私は、今からここら一帯をさら地にします。……え? ダメですか? それは困りましたね……」



 先生に怒られてしまいました。さすがにさら地はマズイですよね。

 どうやって勝ちましょう。特定の力じゃないので、無茶なやり方でも勝ててしまうんですよ。なので、これが楽なんですよね。



「そうだ、私があなたを斬ってもいいですか? 《一刀両断》なら私も使えますし。その剣を貸してください」



 あらら、相手の方が泣いてしまいました。彼は《空前絶後》の能力がないですもんね。すごい土下座してきました。

 仕方ありません。見逃してあげますよ。

 相手が降参して勝ちとは、なんとももの足りませんね。

 


     ◇

 


 実戦試験のあとに呼び出され、何事かと思えば、私は今、高原に来ています。

 先生から直々にお願いされて、さら地にするところを見せて欲しいと。この学院の教師、少し危ない人ばかりなのでは?

 小さい山があるので、あれは消滅しますが、私は悪くないです。

 私、とてもか弱いので、先生に従うしかないのです。うえぇーん。

 まあ、冗談はともかく。



「いいですか? いきますよ?」



 みなさんから見られるなんて、私にもついにこういう瞬間が訪れましたか。

 輝くJK爆誕ですね。……今の私って高校生なんですか?



「では――《他力本願》、《一石二鳥》、《一騎当千》」



 これらは、最後に使う《言霊》への布石です。いわゆる『バフ』ですね。能力アップです。

 さあ、ここからです。みなさん、刮目せよ!



「――《一網打尽》!」



 はい、さっきの山が消滅するまでと、みなさんが静かになるまでに一秒もかかりませんでした。

 整地完了ですね。建築業に手を貸すとは、私ってばとても優しいのでは?

 今回はなにがすごいかを説明しますと、一つずついきますよ?



 まずは《他力本願》、他人の力を使い、自身の願いを叶えること。

 この能力は、他人の力を自身のものとして一時的に借りられるもの。

 今回は、一番筋肉がありそうな人の筋力を借りました。

 筋力だけでなく、技術や《言霊》ですら借りられます。私には必要ないですが。



 次は《一石二鳥》、一つの行為から、同時に二つの利益を得ることのたとえ。

 これを使用することで、この能力の使用という一つの行為で、のちに使用する《一騎当千》の効果を二つ分、すなわち二倍で受けたわけです。



 そのあとの《一網打尽》、網を一度打つことで魚を捕り尽くすこと。

 これは簡単に言えば、一気に片づけるというもの。

 しかし、本人の筋力によって強さが変わるため、ヒョロヒョロの私ではそこらを吹き飛ばすのが精々です。

 そのために、初めの《他力本願》が必要というわけですね。



 どうして私はこんなことをしているのでしょうか。《ワーディリア学院》の試験に参加していたはずなのですが。

 結局試験はどうなったのでしょう? あれで終わりなら、試験の合否が楽しみです。

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