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語彙力最強少女の英雄譚  作者: 春夏冬 秋
第一章 《王女護衛》編
24/98

23.再戦

「ピグリティア! どこ!?」

「なんですか、アヴァリティア……」



 アヴァリティアが大声で呼びかけると、部屋の隅からむくりと起き上がる、ピグリティア。

 円卓の間にいたにも関わらず、こののんきさであるならば、先ほどの二人のやりとりは聞いていなかったのだろう。

 目を擦りながら返事をするピグリティアに少しイラつきながらも、事情を説明する。



「イラが怒って出ていっちゃったんだよ!」

「……? それはいつものことでは?」

「違うよ! セリア・リーフと王女を始末するって……」

「なっ……!? それはマズいですね……」



 ようやくことの重大さを理解したピグリティア。

 いつもの怠惰な彼女はどこへやら。すぐさま行動へと移す。



「イラ様をなんとか止めないとですね」

「ウチ、セリア・リーフに助けてもらえないかを話してくるよ」

「なにを言っているのです。彼女はわたくしたちの敵。それに、彼女も承諾してくれませんよ」

「でも……、やらないよりはマシでしょ……!」



 それだけ言い残すと、部屋から走り去っていった。

 その背を見つめながら、呆れのため息を吐く。



「わたくしを動かさせるイラ様は、あとでお仕置きですね。可能ならば、手を貸してくださいよ、セリア・リーフ――」


 

     ◇

 


 朝から絡まれ、アイスクリームもとい、アルフ・クリーヴのリベンジを受けるために、闘技場へと来ています。

 すごい絡んでくるものだから、たぶん前世はタコかイカですね。

 闘技場の使用には教諭の監視が必要なため、スペルビア先生に頼んであります。



「なぜ、特訓を始めてしばらくしてからリベンジを? 早めであれば、《言霊》を制限すれば勝てたのでは?」

「そんなセコいことするなんて、男じゃないからな。いや、漢じゃないからな!」



 なぜ言い直したのでしょう。しかも、わかりづらいところを。

 それに、少し古臭くないですか? なんですか、『漢』って。一昔前の不良ですか。



「それで、《言霊》の使用はありですか?」

「なし!……と言いたいところだけど、あったほうが面白いだろ?」



 なんですかこの人。自分の首を絞めるどころか、心臓を刺して刺しまくってますよ。ヤバいですね☆



「本っっっ当にいいんですね? 秒殺ですよ?」

「だからこそ、勝利条件を模擬剣を当てたらにするんだよ」

「いや、それでも勝ちますよ」



 私ってばもしかして、バカにされてます? 当てるだけなら勝てるだろ~、みたいな。

 舐められたもんですね。ペロペロされてますよ。いやそれはセクハラです。



「先手必勝、もらいますよ。――《電光石火》」



 一気に距離を詰め、模擬剣を突き出すも――



「あっぶねぇぇ……!」

「なっ……!?」



 受け止めた? あのスピードでの剣撃を?

 やはり、先ほど大見得を切っただけはありますね。

 距離を取るために、後方へと飛び退く。これは厄介ですね。



「なるほど、剣術に長けているわけですか。試験のときにも剣を引っ提げて来てましたからね」

「父さんが剣術指南をやっててな。小さい頃から教えられたからだな」



 では、剣先が見えていては、勝ち目が薄そうですね。

 見えていて勝てないのなら、見えなくすればいいじゃない。



「では、勝ちにいかせてもらいます。――《曖昧模糊あいまいもこ》」



 《曖昧模糊》の使用により、剣はもちろん、私の姿も同様に景色へと溶け込む。



「き、消えた!? そんな《言霊》もあるのかよ……!」



 これはさすがに対応できないみたいですね。まあ、見えない相手とやり合うなど、不可能ですからね。

 そのまま音を立てないようにゆっくりと近づき、剣先を触れさせる。



「ふぅ……また私の勝ちですね」

「……やっぱりさすがだな。勝てる気がしねぇよ」



 そう言って、ははっと笑い飛ばすアルフ。

 なんと言いますか……これはこれでいいですね。戦いから生まれる友情……。せーしゅんですね!



「私に勝とうなんて、一〇〇年は早いですよ」

「そうか、なら、一〇〇年後にまたリベンジしにいくからな!」

「生きていたら、ですけどね。そのときは受けて立ちますよ。また私が勝ちますけどね」

「そうはいくかよ。次こそは俺が勝つ」



 テンプレながらも、拳同士をコツンと打ち合わせ、揃って笑みが零れる。

 終わったことを報告するため、先生の元へと向かう。その途中で、背後から声をかけられる。



「ちょっといいかな、セリア・リーフ、頼みがあるんだけど……」

「あなたは、アヴァリティア……!? どうしてここに!」



 腰をかがめ、構えを取ると、アヴァリティアがあわてて止めてくる。



「待った待った! 今日は戦いに来たんじゃないんだよ!」

「それでは、どのような用で?」

「それがさ――」



 神妙な面持ちで話を始めるアヴァリティア。

 よくよく話を聞いてみると――



「なんですかそれ! そんなことしたら……!」

「そう。下手をすれば、世界終焉ルートにネコまっしぐらなわけよ」

「それで、私に助けを求めに来たと。……ネコ?」



 カ○カンの話ですか?



「うん、どうにか頼めないかな?」



 普通ならば、オーケーを出すところでしょう。しかし、相手は敵。そう簡単には承諾できません。

 とはいえ、世界終焉は避けなければなりません。

 イラが私たちを狙っているのなら、学院へと向かってくるはず。そこを迎え撃つしかないわけですが……



「彼女の《言霊》は、《天変地異》と聞いています。使われてしまえば、仕留める他ありません。息の根ごと止めざるを得ない可能性も」

「えっ、それは……」



 嫌でしょうね。あれだけ怒鳴り散らしていても、大切なリーダー。慕ってきていたのですから。

 私も、なるべくなら生かしておきたいですが……

 そこで、アヴァリティアは、思い出したように声を挙げる。



「そうだ、イラは《天変地異》をコントロールできるんだよ」

「……なんですって?」



 本来、《天変地異》はコントロール不可能な代物。一度発動すれば、世界が終わるか使用者が終わるか。もしくは、《言霊》を無理矢理止めるしか手立てがないはず。

 それをコントロール? 一体どんな仕組みで……

 ひとまず、コントロールが可能であれば、破壊し尽くすことはないでしょう。

 ですが、止めなければいけないのは事実。



「わかりました。手を貸しましょう。しかし、アイリスにもしもがあれば、あなた方を徹底的に潰します」

「ははは……わかってるよ、一時休戦ってことで」

「では、先生に話をつけてきます」



 今の先生は、監視役兼アイリスの護衛。こういったことは伝えておかねばなりませんからね。

 話をつけに行こうと振り向いた瞬間、遜色なしに目と鼻の先に先生が。



「うおぁ! 先生いたんですか……」

「ふっ、これに気づけないとは、学院最強が聞いて呆れてあくびが出て寝てしまいそうです」

「えっ、いや、そこまでですか?」



 寝るのは言いすぎでしょう……

 っと、そんなことを考えている場合ではありませんでしたね。



「実は――」

「ええ、聞いていましたよ。イラが飛び出していったと」

「それなら話は早いです。アイリスの護衛、頼みましたよ」

「任せておきなさい、私の辞書には不可能の文字はありませんから」



 なんとも頼もしい限りです。彼女であれば、信頼できますからね。

 信頼って、『信じて頼る』じゃないですか、いい言葉ですよね。



「では、行きましょうか、アヴァリティア」

「そうだね、早め早めの水分補給……じゃなくて、解決をしないとだから」



 イラを探すために一歩を踏み出そうとすると同時、私たちへ向けて、声がかけられる。



「なにをしているの、アヴァリティア? もしかして、セリア・リーフに肩入れしたの?」



 ――そこにいたのは、くだんの少女、イラでした。

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