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語彙力最強少女の英雄譚  作者: 春夏冬 秋
第一章 《王女護衛》編
23/98

22.特訓

 アヴァリティア、ピグリティア戦での苦戦から、稽古をすることにした私。

 戦闘に関して精通した元暗殺者、スペルビア先生からの特訓を受けることになったのですが……



「ふふん、この私の特訓を受けられることを、光栄に思ってください。誇ってください、ほらほら」



 くっ……、このドヤ顔がウザすぎる……

 こんなところでも、傲慢さは忘れないところが、先生の悪いところですよ。

 確かに感謝はしてますし、助かっていますけどね。

 あと、「ふふん」とか「ほらほら」が妙に可愛いのが、さらにイラッとする。

 私より誤差程度ですが、背が低く、それに加えて、キリッとした目に反した童顔なため、妹感も相まって可愛さが増すんですよね。きーっ、悔しい! 悔しいわ! 私も可愛いって言われたいです。

 まあ、それはともかく。



「それで、特訓とはなにをするのですか?」

「私なりのやり方を教えましょう」



 これは期待大ですね。

 戦闘のプロから教えを請える機会は、あまりありませんからね。



「まずは、これからしたい動きをイメージします」



 私は目を閉じ、言われたとおりに動きをイメージする。



「イメージ……。はい、できました」

「次は、そのとおりに動くだけです」

「……は?」



 そのとおりに動くだけって……。それができたら苦労してませんよ。誰でも戦闘の達人になれますよ。タツジンにこぱです。

 この人、感覚派ですか……。私、昔から理論派だったので、根拠のない言動は理解できないんですよね。



「えっ、そんなやり方なんですか?」

「ええ、そうですよ?」

「もっとこう……型を覚えて応用とか……」

「いえ、私はこうやって成功しました!」



 いきなり、怪しい広告の宣伝文句みたいなこと言われても。

 やはり、この人に頼むべきではなかったかもしれませんね……。頼む相手間違えたー! 戦闘経験は完熟してませんが、フレッシュではあります。娘のほうが強い。



「それでは、実戦でもしてみますか? もちろん、《言霊》はなしで」

「いや……《言霊》ありの男子生徒を五秒で沈めた人と、いきなりの実戦はちょっと……」



 ガチガチの武器を使われても怪我をしないとはいえ、殴られたりすれば痛いですし。

 仕方がないですよね……



「……さっきのやり方で教えてください」

「そうですか? わかりました」



 緩すぎる特訓方法のせいでやめたくなることがあるとは。

 普通なら、スパルタが嫌だ、とかだと思うんですけど。

 感覚派とは、やはり馬が合いませんね。ヒヒーン。あ、実は私、午年なんですよ。どうでもいいですね、はい。



「セリアさん、頑張ってくださーい!」



 遠巻きで体育座りをしながら、手を筒にメガホンのようにして、アイリスが私へと声をかける。

 これだけが、私のやる気に火をつける着火剤ですよ。今のひと言で、特訓に対するやる気がグングン湧いてきました!

 テンション上がってきたー!


 

     ◇

 


 円卓の間で正座させられているアヴァリティア。

 そんな彼女を、腕を組みながら睥睨する赤髪の少女、イラ。

 こんな状況になっているのには、ある理由があった。



「アヴァリティア、なんでこんなことになっているか、わかってるわよね?」

「はい……、ウチが勝手に学院に乗り込んだからです……」

「そうよ、わかってるならいいわ」

「そう? じゃ、ウチはもう帰るから~」

「待ちなさい」



 帰宅をしようと立ち上がり、振り向いた瞬間、服の襟を掴む。



「ぐえっ」



 あまりに突然の出来事に、アヴァリティアの口から、あまりにも間の抜けた声が漏れる。



「なにすんのさぁ~。一瞬、死んだかと思ったよ」

「まだ終わってないわよ? なにを帰ろうとしているのかしら……?」



 背後にゴゴゴと文字が浮かびそうなほどの迫力。

 顔には満面の笑みを浮かべているが、明らかに怒っているであろうオーラに、アヴァリティアは口元を引きつらせる。



「あっははは……。さーせん、座ります」



 その迫力に気圧され、おずおずと正座し直す。



「あのさ、なんで勝手に動いたわけ?」

「だってさ、二人が失敗したんだよ? さすがにヤバいじゃん? イラこそ、焦ったりしないの?」



 アヴァリティアの言うとおりである。初めに動いた、スペルビア、ルクスリアは、セリアの説得によって、任務を失敗との形で終わらせている。

 イラも、そのことはわかっている。わかりきっている。



「そんなこと……わかってるわよ!! 学院最強……セリア・リーフのせいで、成功しないのよ! 最初の雇ったやつらもそう。四人もいて失敗して! それなら、アタシが王女を始末するから連れてこいと言ってもダメ! ああ、イライラする!」



 あまりの怒りから、辺りのものを投げ、床に叩きつける。

 だが、それだけでは収まらないようで、彼女はある行動に出ることにした。



「もういいわ。どいつもこいつも使えない! アタシがセリア・リーフごと、王女を潰す。あんたらは大人しくしてなさい」



 それだけ言い捨てると、部屋から出ていってしまう。

 そのうしろ姿を見つめながら、アヴァリティアはポツリとひと言漏らす。



「マズいよ、このままだと、世界が終わる……!」

 


     ◇

 


 特訓を始めてから二週間が経ち、だんだんと様になってきた今日、学院へと向かうと、ある男子生徒から喧嘩を売られました。



「セリア・リーフ! お前、最近特訓を始めたらしいじゃないか!」

「まあ、そうですが……。どこでそれを?」

「昨日、たまたま見かけたからな。先生とフェシリアと一緒にやってたのをな」



 見られていましたか……。こういうものは、陰でやるからカッコいいというのに……

 とりあえず、そのことはいいです。



「それで? 朝っぱらから私になんの用ですか?」

「受験のときのこと、覚えてるか?」

「受験のとき……ああ、あなた、泣いて土下座して帰った人ですか」

「その呼び方はやめろよ! いや、お前は俺の肩に手を置くな! リーフにイジメられているみたいだろ!」



 お友だち……でしょうか。

 彼の肩に手を置き、目を伏せながらフルフルと首を横に振る。

 その呼び方をやめろと言われましても、名前知りませんし。

 えっ、自己紹介? 初日にありましたけど、女子の名前しか聞いてませんでした。

 ええと、確か……



「思い出しました、アイスクリームですね!?」

「アルフ・クリーヴだよ! ……いや、ちょっと似てんな……」

「で、結局アイスクリームがなにか用ですか?」

「だからっ! ……まあいい。受験のときのリベンジをさせてもらう!」



 なんとも唐突な……。ですが、逆に言えば、特訓の成果を試す、いいきっかけになるかもですね。

 なぜ、このタイミングかはわかりませんが、ここは受けておいて損はなさそうですね。



「わかりました、受けましょう」

「お前なら、そう言うと思ってたぜ!」

「ですが、絶対に勝てませんよ? 私が《言霊》を持っている限りは」

「いや、それでもだ!」

「お前、もしかしてさ……」



 お友だちが、アルフにジト目を送りながら、声をかける。



「リーフのこと、好きなのか?」

「バッ、バカなこと言ってんなよ! なんで俺がこいつを……!」



 瞬間、アルフは顔どころか、耳まで真っ赤に染め、慌てて言い返す。



「いや、勝てないとわかってて挑むんだろ? とりあえず関わっときたいみたいに見えるんだよ」



 なるほど、確かにそうですね。それか、極度のM気質かですかね。

 ですが、私の答えは決まっています。



「ごめんなさい。私はアイリスが好きなので」

「いや、だから、そうじゃないって言ってるだろー!」



 アルフの叫びが、騒がしい教室にすら、よく響く声で発せられるも、少しずつ掻き消されていった。

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