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語彙力最強少女の英雄譚  作者: 春夏冬 秋
第一章 《王女護衛》編
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20.強欲

 まったく……なんの対策もできていないと言うのに、襲撃なんて勘弁ですよ。

 ですが、今までも襲撃に対応してきました。

 さあ、戦闘開始です。



「あんた、動きが単調だねぇ。今までは《言霊》で補ってきた感じ?」

「ええ、戦闘経験など少ないですから。ですが、あなたも変装でボロを出すとは、甘かったですね」

「あー、あれね。言ってから、やっちまったーって思ったけど、まあ遅いよね」



 彼女が出したボロとは、私の呼び方。うっかり、『セリアさん』と呼んだことが、変装に気づくに至る道となったわけです。



「ま、そのことはもういいよ。ねっ? 本気の戦いを始めようじゃあないか。武器を取りなよ。ウチはフェアに戦いたいからね」



 武器は手元にないのですが……

 武器がないなら作ればいいじゃない。――セリア・アントワネット。



「では、武器を用意しますので、しばしお待ちを。――《創意工夫》」



 《創意工夫》、今まで誰も思いつかなかったような、新たな考えや方法を編み出すこと。

 この能力は、簡単に言えば『物体形成能力』。

 しかし、すでに存在するもの、一度でも《創意工夫》で作り出したものは製作不可能。完全新作に限ります。

 とはいえ、微妙に違えば別もの。たとえば、デザインの差、大きさ、重さも対象です。

 一定時間で消失するため、消えないようにできないかを考案しています。



「へえ、剣ねぇ。それ、扱えるの?」

「私でもある程度扱いやすい重量にしてありますから」



 『ある程度』な訳は、今後消失させなくてもよい方法が見つかったとき、本当に使いやすいものを作りたいですから。

 そのためには、今使うわけにはいかないのです。



「じゃ、いかせてもらう――よ!」

「ぐっ、なんて力……」



 受け止めるので精一杯なほどに強力な一撃。ナイフとのつばぜり合いになるほどとは……

 押し負けると、あとがつらくなるでしょう。ここは、スピード勝負に出させてもらいます!



「――《疾風迅雷》!」



 私が《言霊》を使うと同時、アヴァリティアは口元を歪める。なにを企んでいるのでしょう。



「ふふっ、それもらうよ。――《鼠窃狗盗こせつくとう》!」



 急激なスピードダウン。彼女の《言霊》の影響でしょう。

 《鼠窃狗盗》、ネズミやイヌのように、人に隠れてものを盗むこと。

 この《言霊》の厄介なところが、『ものごとの状態を盗む』ことにあります。

 たとえば、今のような、《疾風迅雷》のスピードを奪う。他には、《一刀両断》の切れ味ですら盗み取り、自分のものにしてしまう能力。

 つまりは、私が自分にバフをかければかけるほど、相手に有利になるわけです。

 しかも、盗み取る数に限りがないのも厄介な点ですね。



「さあ、来なよ。学院最強、セリア・リーフ」

 


     ◇

 


「ねえ、アヴァリティアはどこに行ったの!?」



 円卓の間に怒りながら入室してきたイラ。

 彼女の問いに答えるのは、黒髪の女性、ルクスリア。



「ああ、あの子なら、『ウチが学院最強を討ち取ってくる! 「うち」だけに!』って出てったわよ」

「ちょっ、なんの命令も出してないのよ!? あー、もう! どうしてこうなるのよ!」



 怒りから、円卓を引っくり返そうと縁に手をかけるが、それほどの力はなく、すぐに手を離す。

 あまりの大声で怒鳴り散らしたせいか、はぁはぁと肩で息をしている始末。



「ちょっと、どこに、行くのよ……」



 息が切れているために、途切れ途切れに、力のない声をルクスリアへ向けてかける。

 ルクスリアは、チラと振り返りひと言。



「これからマッサージしてもらいに行くのよ。それじゃあね~」

「どこからそんなお金を……!」



 《七色の大罪》は、メンバーが常々愚痴を言い合っている、給料について。

 彼女たちの手取りは、かなり大きな仕事をこなしたとしても、そこから比べると、すずめの涙程度のもの。

 美容に余念のないルクスリアは、月々の出費がバカにならないわけだが、イラとしては、その収入源が気になっている。



「うーん、まあ、ワタシの魅力が成せる業というか?」

「なによ! それならアタシも、この魅力で――」

「おやめください、イラ様。そのロリボディ……失礼、いろいろと足りない身体では、魅力など出ませんよ」

「なんか言い直したほうがヒドくなってない!? うっさいわね! あるわよ、魅力!」



 眠っていたはずのピグリティア。

 《怠惰》である彼女が、わざわざ起きてまで伝えたかったことがそれかと、イラは、ふんすと怒りを露わにする。



「いいわよ、もう! こうなったら、アヴァリティアとなにかして――そうよ、アヴァリティア! あいつを回収しないといけないんだった!」



 いろいろと引っかき回され、記憶から消え去っていた、初めの目的。《強欲》:アヴァリティアの回収。

 本来ならば、独断専行とのことでクビは免れられないのだが、《七色の大罪(モルトリア)》は現在、極度の人材不足。

 元が七人だったことも原因なのだが、セリアの説得によって、スペルビアが抜け、ルクスリアは辞めるか辞めないかの相談をしている最中。

 そうなると、メンバーは五人となるわけだが、一人は基本的に食べ歩き。一人は部屋に引きこもっている。

 もう一人は一日中眠りこけ、目を覚ませば「ダルい」などの、意欲のなさを露呈する言葉のオンパレード。



「行くわよ、ピグリティア。あなたの《言霊》が必要なの」

「嫌です。わたくしには、寝るという仕事がありますから」

「帰ったら、好きなだけ寝ていいから、今だけはお願い」

「なにをしているのです、早く行きますよ」



 変わり身の速さに、口をあんぐりと開けるイラ。

 ピグリティアは、「好きなだけ寝ていい」との魔法の言葉を受け、それが楽しみでならないようだ。

 


     ◇

 


 ――どうしたものでしょうか。

 バフをかければ、彼女側が有利に。かといって、こちらがなにもしなければ、それまたあちら側が有利な、完全な詰みゲー状態。

 なにかしらで、相手の動きを止めないといけないのですが……

 ――っと、そういえば、いい方法がありますね。これなら、止められるはず。

 とはいえ、狙いに気づかれてはいけませんが、まあ、そんなことはないでしょう。



「ははっ、どうしたの? まさか、学院最強の敗北する瞬間が見られるかなぁ!?」

「そうは問屋が卸しませんよ。ここからは、私が逆転させていただきます。――《韋駄天走》!」

「それももらうよ! ――《鼠窃狗盗》!」



 やはり、これも盗みますか……

 ですが、それでいいのです。これから、しばしのご休憩を。



「それでは、私はしばらく消えますので」

「はあ? なに言って――」

「――《曖昧模糊あいまいもこ》」



 《曖昧模糊》、ものごとの本質や実態が、ぼんやりと不明瞭な様子。

 この能力は、別に姿が消えるわけではなく、ものへの認識を曖昧にさせるもの。

 今は自分に使いましたが、そうすると、私の存在を認識できなくなるのです。これは、センサーなどを利用しても同じ。感知することは不可能となるわけです。

 解除は『任意』、『三〇分経過』、『人に触れられる』ことで起こります。



「チッ……、どこに行った!? 出てきなよ!」



 隠れたのに、出てこいと言われて出るわけがないでしょう。

 なかなか効果が見られませんね……。そろそろだとは思うのですが。



「もう時間切れ……!?」



 三〇分が経過したようです。

 まだかと焦り始めると同時に、ようやく効果を発揮。



「よしっ、もらっ――身体が……動かない……!?」



 私の狙いはこれ。――《言霊》の使用による反動。

 彼女は、《疾風迅雷》と《韋駄天走》を同時使用していました。同じ効果の《言霊》を重ねがけすると起きる現象です。



「あなたから挑んできた勝負です。恨みっこなしですよ」



 騎士団ギルドに引き渡すため、拘束しておこうと近づいた瞬間、頭上から声が。



「――帰るわよ、アヴァリティア」

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