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語彙力最強少女の英雄譚  作者: 春夏冬 秋
第一章 《王女護衛》編
18/98

17.会議

「これからどうするつもりです?」

「いやぁ……なにも効かないなら戦いようがないじゃない? 《言霊》だって、女性はワタシのこと羨ましがって、魅力を感じてくれないし……」

「えっ、いや、まあ……」



 羨ましくないと言ったら……嘘になります。

 悔しがることしかできません。私、不器用ですから……。特に胸とか胸とか。

 あっ、いや――ふん! ぜ、全然羨ましくなんかないんだからね!

 これ、このままいけば、また辞職させられるのでは?

 敵とはいえ、無駄に戦いたくはないですからね。平和的解決をしたいですから。



「どうします? スペルビアのようにあきらめるのなら、私はなにもしませんが。まだアイリスを狙うつもりであれば、容赦はしません」

「う~ん……。少し考えさせてもらえる? 決まったらまた来るわ」



 すごい告白の返事待ちみたいになってますけど。

 なにより、選択肢に『あきらめる』を入れられたのは大きいですよ。

 そちらを選んでくれれば、私としても楽なんですけどね。



「……いや、来ないでくださいよ」



 今回は戦闘にならずに済んだのは僥倖ですね。

 前は、グラウンドを崩壊させて、直している人に、すごい罪悪感を抱きましたから。

 


     ◇

 


 《七色の大罪(モルトリア)》本拠点に戻ったルクスリア。

 円卓に座する三人の少女を一瞥し、彼女も席に着き、頬杖をつく。

 先ほどセリアに言われたことを、仲間に相談する。



「ねえ、みんな。ワタシ、ここ辞めようかなって思ってるのよ」



 その言葉に真っ先に反応したのは、肩口より少し長い赤髪を揺らす少女。



「はぁ!? アタシらのグループを潰す気? スペルビアも抜けて、あんたも抜けたら、《傲慢》と《色欲》はどうすんのよ!?」

「まあまあ、そんなに怒らないでよ。《憤怒》だからってさぁ」



 赤髪の少女――持席《憤怒》:イラ。

 《七色の大罪(モルトリア)》を取りまとめているのは彼女なのだ。次々と人員に抜けられては、堪ったものではないだろう。

 小柄な彼女がリーダーとは、誰も納得をしていないが、イラの《言霊》が起因し、逆らえずにいる。

 もっとも、イラをリーダーとしたのは、彼女や《七色の大罪(モルトリア)》のメンバーではないのだが。



「だって、ここって結構ブラックじゃない? スペルビアも、そう言ってたじゃないの」

「そうだよ、こっちはボランティアじゃないんだよ?」



 ルクスリアの意見に賛同したのは、橙色のポニーテールをサラサラと手できイジる少女。

 彼女は、持席《強欲》:アヴァリティア。

 狙ったものは逃したことのない、プロの盗賊。

 最高セキュリティの邸宅から、一億はするであろう宝石や壺を盗み出した経験もある。



「なによ、アヴァリティア。あなた、文句でもあるの?」

「いやぁ、ウチはないけどさ、ルクスリアも言ってるし?」

「ちょっと、ワタシを売らないでちょうだい」



 ぎゃあぎゃあと騒いでいると、迷惑そうに顔をしかめながら、あくびを一つするメイド少女。

 持席《怠惰》:ピグリティア。



「もう、うるさいですね……。寝てるんですから、静かにしてくださいよ……」

「ピグリティア! あなたはなにを会議中に寝ているの! それに、メイドなんだから働きなさいよ!」



 怒りから、髪を掻きむしるイラ。

 頭を抱え、机に突っ伏すと、「ああぁぁ……」とうめき声をあげる。



「グーラとインヴィディアは出席すらしてないし……。こっちは大きい任務があるのに……!」



 持席《暴食》:グーラ。持席《嫉妬》:インヴィディア。

 数々の困難な任務をこなしてきた二人。

 ……なのだが、《暴食》のグーラは、少々の空腹で活動を停止させる。

 《嫉妬》のインヴィディアは、他の人物が自分より成果を挙げると、それに嫉妬し、部屋に引きこもる。

 会議中である現在は、食べ歩きと引きこもることに、それぞれ精を出している。

 ここまでクセの強い二人には、さすがのイラも手を焼いていた。



「あのー……ワタシの話は?」

「ちょっと待ってなさい! アヴァリティア、二人を連れてくるわよ」

「グーラとインヴィディア? やめとこうよー。グーラなんて、前に食べるのをやめさせたら、噛みつこうとしてきたんだよ?」

「そんなこともあったわね……」



 それに関しては、イラも目撃しているため、強くは言えない。



「それなら、ピグリティア、仕事よ。あなたの《言霊》を使って引っ張り出して来なさい」



 《怠惰》に席を置く彼女の《言霊》は、《意気沮喪いきそそう》。

 意気込みが挫け、やる気をなくすことを指す言葉。

 これは、相手からやる気を奪い、行動力をなくさせる能力。会議に出ない者は、ときどきこの手段で引きずり出される。



「面倒です。わたくしではなく、イラ様に譲ります」

「いらないわよ! アタシは仮にもリーダーよ?」

「成り行きで決まったリーダーではないですか。わたくしのメイド業も同じです。義務はありま――はぁ……話すのも面倒くさくなってきました」



 グループの中で、唯一の反発を見せるピグリティア。

 それが、さらに彼女の怒りに火をつける。



「こんのぉ……! ――《天変」

「――《意気沮喪》」

「うっ――。うあー……。なんかダルくなってきたから、今日は解散……」



 イラが《言霊》を発動するよりも一拍早く、ピグリティアが発動。

 怒りとやる気を一気に刈り取り、会議を終了させるまでに至った。



「うひゃぁ~、さすがはピグリティアの《言霊》。イラを一瞬で鎮めるんだからさ……」



 渋い顔をしながら、アヴァリティア。

 それに対しピグリティアは、さも当然とばかりにしれっとしている。

 解散の声がかかり、バラバラと立ち上がり散っていくのを見ながら一人。



「ワタシの話はどうなったの!?」



 ルクスリアの叫び声が、虚しくも部屋に響くのみとなった。

 


     ◇

 


「――それで、どうなったんですか?」

「ひとまずは追い返しました。辞職の選択肢を持たせたまま。あと、躊躇ちゅうちょなく撃たれました」

「さすがは学院最強……あのルクスリアを岐路に立たせるとは。それに、銃撃を受けたことを平気な顔で言うのですから」



 アイリスから問われ、そのときの様子を伝えると、先生が呆れたように首を振る。

 なんだか、バカにされているようにも聞こえるのですが……



「やはり、《七色の大罪(モルトリア)》がアイリス暗殺を企てているのですか?」

「いえ、私たちではなく上からの命令です。ルクスリアを抜いて、あと五人はいます。《怠惰》のピグリティアは、普段めったに動かないのですが、一番厄介でもあります」



 なるほど……。先生は、元《七色の大罪(モルトリア)》メンバー。貴重な情報源となり得るでしょう。

 とはいえ、彼女が裏切らないとも限りませんが。

 私としては、アイリスファンクラブのメンバー(勝手に入れた)のことは疑いたくありません。

 今回の逃走も手助けしてくれたわけですし、もう足を洗ったと言っていいでしょう。



「これからは、先生が頼りとなります」

「今現在では、私だけが情報を握っているわけですからね。もちろんです」

「それでは早速。《七色の大罪(モルトリア)》に、リーダーはいるのでしょう?」

「ええ、彼女は面倒ですよ」



 面倒ですか……。リーダーとなると、かなりの腕であることが見込めます。

 それこそ、私ですら、あっさり殺られてもおかしくないレベルで。



「もしや、腕が立つと思っていますか?」

「リーダーで面倒となれば、腕が立つのではないですか?」

「いえ、戦闘に関しては、メンバーで一番下と言ってもいいでしょう。厄介なのは、《言霊》のほうです」



 なるほど、そう来ましたか。

 確かに《言霊》であれば、身体能力の低さを補うことも可能です。

 私も、今までの戦闘では、《言霊》を多用してきましたからね。その気持ちはわかりますよ。



「リーダー――イラの《言霊》は、さすがのあなたでも対処できませんよ」

「そんなものが……!?」

「すべてを破壊し尽くす、《全知全能》に次ぐ、強力な能力――《天変地異》です」

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