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語彙力最強少女の英雄譚  作者: 春夏冬 秋
第一章 《王女護衛》編
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13.傲慢

 不可能はない、ですか……



「あなたにも、できないことはあるはずですよ?」

「? なにを言っているのです?」

「スペルビア、あなたは、私の変装を見破ることができなかった」



 スペルビアは、未だに理解できていない顔をしている。

 そろそろいいですかね。



「あなたは――」

「ええ、私ですよ。厄介な護衛です」

「セリア・リーフ……!?」

「あなたが変装をしていたので、真似させてもらいました。――《変幻自在》、よくご存じでしょう?」



 傲慢な性格をしている彼女にとって、変装を見破れなかったのは相当悔しいことでしょう。

 その証拠に、唇を切れんばかりに噛んでいます。



「《言霊》を使っているとはいえ、まったくヒントがないはずは……!」

「いえ、ヒントならありましたよ?」

「なんですって? そんなはずはありません!」

「一人称、ですよ」



 これまで、ずっとヒントになるであろう一人称を使用していました。

 ここまで難しいですかね?



「一人称なら、二人とも『私』のはず!」

「違いますよ。私は漢字で『私』、アイリスはひらがなで『わたし』。ね? 違うでしょ?」

「わかるわけがないでしょう!? 口頭でひらがなか漢字かなんて判別できませんよ! 筆談している気でいたんですか!?」

「私はわかりましたよ。――愛の力で」

「セリア・リーフ、病院にでも行きますか?」

「えっ、敵に心配される日が来るとは……」



 これほどまでに屈辱なことはありません。

 とにかく、ここでの戦闘は崩落の危険性があるため、やめておきましょうか。

 となれば、することは一つ。



「それでは、さらばです!」

「あっ、待ちなさい!」



 追ってきてますね。このまま外まで誘い出せれば……

 このままでは追いつかれそうです。ある程度、距離を離しましょうか。



「待てと言われて、待つわけがないでしょう。――《疾風迅雷》!」

「逃がしませんよ。――《疾風迅雷》」



 彼女の《言霊》でしょうか。相手のほうが元の足の早さは上ですから、少々厄介ですね……

 ですが、もうすぐ玄関です。グラウンドで相手をしましょう。



「ふっ、広すぎてグラウンドに迷い込んだのですか? まさに袋のネズミ。これで逃げ場はありませんよ」

「おや、文学の教養が少ないようですね。今の状況は袋のネズミではなく、窮鼠きゅうそ猫を噛むと言うのです。ここが私の戦場フィールドとなるのです」

「ネズミはネコに勝てないことを教えてあげますよ」



 世の中には、下剋上、一発逆転という言葉がありまして、弱い者であっても、勝利を掴むことは可能なのです。

 私は弱い者ではなく、SAIKYOUなんですけどね!



「私からいきますよ! ――《迅雷風烈》!」

「くっ、――《迅雷風烈》!」



 雷鳴が轟き、雷撃と雷撃、烈風と烈風がぶつかり合う。

 強力な雷撃が、本来電気を流さないはずの地面を割る。



「また同じ《言霊》ですか。初めは《疾風迅雷》かとも思いましたが……。もしや、《異口同音》ではないですか?」



 《異口同音》、多くの人が口を揃えて同じことを言うこと。

 この能力は、相手が最後に使用した《言霊》をコピーすることが可能なもの。

 ただし、口に出さず自動で発動するもの。たとえば、《空前絶後》のようなものはコピーできません。



「二つの《言霊》をコピーしただけで見破るとは、さすが『最強』の称号を冠する少女ですね」

「ええ、《全知全能》は二人として存在しません。その他に複数の《言霊》を使用できるものは、《異口同音》くらいなものでしょう」

「なるほど……。ゲイル・マーシェルを打倒した際もそうですが、あなたの頭の回転には目を見張るものがありますね」



 おや、まさか褒められるとは思っていませんでした。

 敵とはいえ、もちろん称賛はうれしいですよ。

 ですが、この《異口同音》にも欠点はあります。




「それはどうも。それにしても、模倣能力である《異口同音》は、劣化したものを使用するはずですよね?」

「勉強熱心なことで、先生は感心していますよ」




 あなたは先生ではないでしょう。というのは、火に油どころか、薪にガソリンと、ありとあらゆる燃料を投下しかねませんからね。

 細かいところをツッコむのは野暮というものです。




「先生と言っても、変装はアマちゃんでしたけどね」

「なんですって……?」

「見たところ、表情や雰囲気を再現できても、口調や態度を真似ることまではできないようですね」

「チッ……。だから私は変装なんて向いてないって言ったんですよ。それなのにルクスリアは……」




 いや、戦闘はどうしたのですか? ルクスリア……はお仲間ですかね。愚痴聞かされてるんですけど。

 まあ……そうですね。



「スペルビアも、いろいろ大変なんですね」

「わかりますか? 《色欲》のルクスリアにですね、『あなたは天才なんだから、変装も完璧よ』、なんて言われたんです。それで、あとに退けずにやったらこれですよ。あいつ、今度潰す……」



 お酒で酔った女友だち同士の飲み会みたいになってますよ。

 まあ、お酒呑めない、友だちいない、飲み会なんてしたことないの三連コンボですよ。

 特に二つ目。二つ目のダメージがすごい。



「あの……大丈夫ですか?」

「大丈夫じゃないですよー! 今年で二三歳になるのに、結婚しないのかって実家でせっつかれたりするんですよ!」

「それは切実ですね……」



 私、なんだかこの人は悪い人ではないように思えてきたのですが。

 仕方なく、暗殺の仕事を受けているように見えます。

 なんとかしてあげられないものでしょうか……



「あの、本当に今の仕事で満足ですか?」

「満足なわけないでしょう! せっかく権力者の暗殺を成功させても、手取りは全然なんですから。一〇〇〇万は下らないはずなのに、手取り二〇万ですよ! アルバイトを毎日フルタイムで出たときほどしかないなんて!」



 うわっ、かなりのブラック企業じゃないですか……

 五〇分の一が手取りですか。もしかしたら、アルバイトのほうが、割りがいいかもしれません。

 これ……アドバイスしたほうがいいんですかね?



「そんな企業は辞めて、まっとうな仕事に就いてみては?」

「えぇー……。辞表受け取ってもらえるかな……」



 そこは、「裏切ったら消されるかも」ではないんですね。

 いいのか悪いのかわからない組織です。悪いんでしょうけど。



「スペルビアの年ならば、再就職も難しくないですし。あなたに合ったところで働きなさい」

「そうですよね! 私、なんだか吹っ切れました!」

「ええ。暗殺業を辞めるのであれば、今回の件は内密にしておきます。私以外は、あなたの顔を見ていませんので」



 騒ぎにならないよう、人気ひとけの少ない道を通ってきたのが幸いだったようですね。



「これでもう、ルクスリアとも会わなくて済むぞー!」



 スキップをして帰っていく様は、独り立ちする娘を見送っているよう。なんだかしみじみしますね。

 また一つ、親の気持ちを知りました。

 我が子との触れ合いではない形で知ってばかりですが、新しいことを知るというのは、いつでも素晴らしいものですね。

 


     ◇

 


「セリアさん、レイア先生を見つけました!」



 そうでした。アイリスに、本物のレイア先生を捜すように言っていたんでした。

 スペルビアとの対話ですっかり忘れてましたよ。

 インパクトは人の記憶に多大な影響を与えますからね。

 レイア先生が無事だったのはよかったですが、今ではスペルビアの今後が気になっている私がいることに驚きです。

 次こそは、まともな職に就いてほしいものです。それこそ、教師職とかですね。

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