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9 気まずい

「コップ、おわん、お箸……あと何が必要なの?」


「盛り付けようのお皿がほしいです」


「おっけー」


 学校が終わると私はすぐに友達に別れを告げた。100均で西守さんと待ち合わせをしていたからだ。西守さんと一緒にいるところを人に見られてはまずい。だけどいつまでも隠しとおせる訳じゃないってわかってる。西守さんのことが好きな変態チックな人にいずれは私と西守さんが同棲していることがばれてしまうことだろう。


(ま、その時はその時だよね)


 ばんばんに敵意向けられることを考えたらやっぱり頭が痛くなる。でも、一緒に住むことを了承したのは私だ。あの紙のせいでもあるけど、一度でも同棲を許可したんだからやっぱなしはダメだと思う。人に信用してもらえるようになるのは大変だ。こつこつと積み上げていかないといけない。逆に人の信用は簡単に崩れてしまう脆いものだ。一つ不信な点があればもう信用してくれなくなってしまうことだってある。


 西守さんには聞きたいこともあるし、こんなところでつまずいてちゃダメだ。


「はい、こんなのでよかった?」


 飾り気のない、平たいお皿を手渡す。100均だし柄がないのは仕方ないけど西守さんてこういうのにこだわるタイプなのだろうか。


「はい、これで良いです。ありがとうございます」


 穏やかに笑っている。不満な顔はしていない。私は心の中で安堵の息をはいた。

 そもそもこだわるタイプなら最初から100均にはこないという事に気づくのは少し時間がたってからだった。


「田中さんは私といるところを同級生に見られるのが嫌なんですか?」


 帰り道、西守さんが突然そんなことを聞いてきた。私はなんて答えれば良いのかわからず、少し間が空いてから口を開いた。


「嫌……というかめんどくさいんだと思う」


「何がですか?」


「人気者の西守さんと私とじゃ全然釣り合ってないでしょ?その事を誰かに指摘されるのも嫌だし、西守さんを独り占めしてたらきっとファンの人たちが黙ってないから」


「……そんな人たちはほおっておいたら良いじゃないですか」


「え」


「私のことを好きになってくれる人がいるのは嬉しいことですけど、そのせいで本当に一緒にいたい人の側にいられないのは違うと思うんです。私のことは私が決めますし、それに何か言われる筋合いはありませんから」


「確かにそうだけど……」


「それにっ、もし田中さんが私と一緒にいて何かされるようなことがあれば私が全力で守ります」


「う、うん……」


 あれ、何か怒ってるのかな?

 さっきより息が荒々しい。何か変なことでも言っちゃったのか、私。


「絶対です。私は絶対田中さんを守ります。何があっても守ります。そこは信じてください」


「わ、わかった。分かったから歩こう?顔近いから……っ」


 絶世の美女を間近で見て顔を赤くするなと言うのは無理な話だ。血液が沸騰していき、耳まで赤くなるしまつ。

 西守さんは我に返ったのか恥ずかしそうに私から離れてうつ向いた。


「ご、ごめんなさい。少し取り乱しました」


「い、いや……大丈夫」


「は、早く帰りましょう」


「うん」


 なぜか朝の時のような気まずい空気になってしまった。

 私たちはそのまま一言もしゃべらず家に帰った。



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